自分に似た人に対して嫌悪感を抱くことを指す「同族嫌悪」という言葉があります。似た者同士は「親しくなりやすい」というイメージを持つ人もいると思いますが、実際に「自分に似ている人と一緒にいると居心地が悪い」「何だかイライラする」といった経験に心当たりがある人も少なくないのではないでしょうか。

同族嫌悪」はどのような心理によるものなのでしょうか。心理カウンセラーの小日向るり子さんに聞きました。

「まるで自分自身を見ているよう」=「投影」

Q.そもそも「同族嫌悪」とは何ですか。

小日向さん「『同族嫌悪』とは、家族・親族や友人、あるいは性格や趣味、生活環境が似ている人など自分と共有点、共通点が多い人に嫌悪感を抱く感情のことをいいます。類義語として『親近憎悪』『同属嫌悪』があります」

Q.同族嫌悪は、どのような心理や状況から来るもの(感情)なのでしょうか。

小日向さん「共通点が多いということは、相手の言動から、まるで自分自身を見ているように感じることも多くあるということです。これを心理学用語で『投影』といいます。投影自体は嫌悪の感情と必ずしも直結しませんが、それが自分自身で認めたくない言動や感情だった場合、同族嫌悪につながります。

例えば、最近流行している『推し活』。同じ人やグループが好きだからこそ仲良くもなりますが、時に、仲間の言動に『そこまでする?』などの疑念を感じて嫌悪感が湧く場合もあるのではないでしょうか。

また、自分が育った地域の風習や文化に対しても起こりがちです。町の人の家族構成や仕事など、プライベートなことが周囲の住民に筒抜けの環境があったとします。自分もそれらの情報を聞いて興味を抱いているのに、近所のうわさ話をしている家族を見ると嫌悪感が湧く…といった具合です」

Q.一方で、人間関係においては、「お互いに似ていて仲良くなった」「似た者同士だと仲良くなりやすい」という例も存在するように思います。こうしたケースと、同族嫌悪になるケースの違いは何だと思われますか。

小日向さん「お互いに似ていることが好意感情であり続けるには、『価値観も同一であること』と『社会的地位や経済など、社会的カーストが対等であること』がポイントになってくると思います。

例えば、先述した推し活のケースですと、相手は“推し”に使えるお金がたくさんあるのに比べて、自分はそこまで金銭の余裕がない、といった状況の場合に、相手に対して『やり過ぎじゃない?』といった嫉妬に似た嫌悪が生まれやすいです。また、『家庭環境が恵まれていない』という点で親近感を覚えて仲良くなった友達の一方が、そうしたハンディを乗り越えて社会的に成功すると、『自分は不遇な環境でも努力したのに、相手は努力をせずに環境のせいにしている!』などマウントに近い嫌悪感情を抱くこともあります。

価値観や社会的カーストは個々に変化していくものなので、『似た者同士だから、いつまでも好意感情だけでつながっている』ということは一概にいえないと心得ておくべきでしょう」

Q.身近な場所、所属するコミュニティーなどで同族嫌悪を感じた場合、どうするのがよいのでしょうか。同族嫌悪の感情とうまく付き合っていくためのポイントを教えてください。

小日向さん「自分の社会的立場、経済状況などによって、価値観や人生観は変わってきます。また、自分は変わらなくても相手が変わる場合もあります。全く変化のない生活がない以上、“似た者同士”から来る好意感情よりも嫌悪感情が強くなるということは容易にあり得ます。従って、好意より嫌悪の感情が強くなったコミュニティーからは『距離を置く』ということを基本的なスタンスにしておくのがよいでしょう。

ただ、それを繰り返してばかりいると孤独になり、むなしさが募ってくることも確かです。先述したように、同族嫌悪は自分自身を映し出す鏡でもあります。嫌悪感情から目を背けるだけでなく、その感情は『自分が目を背けたい自分の課題』であると捉え、自己を分析して反省すべき点は反省する、という心持ちも忘れないようにしましょう」

オトナンサー編集部

「同族嫌悪」はどんな心理によるもの?