2023年も残すところ、残り1ヶ月になりました。2023年も日本経済はロシアによるウクライナ侵攻の影響による物価高や、日銀の金融緩和による円安など、さまざまな課題に直面しています。

「経済」「経済」「経済」

10月23日に行われた臨時国会の所信表明演説で、岸田首相は「経済」という言葉を繰り返し、2024年に向けて、改めて経済対策への取り組みを表明しました。

11月30日は年金の日です。厚生労働省が“国民お一人お一人、「ねんきんネット」等を活用しながら、高齢期の生活設計に思いを巡らしていただく日”として、平成26年度から毎年11月30日(いいみらい)を「年金の日」と制定しました。

少子高齢化が進む日本では、2036年には3人に1人が65歳以上の高齢者になると予想されています。年金は働く現役世代の国民年金厚生年金から捻出されています。少子高齢化が進むと、現役世代の人口が減り、年金の支給開始年齢は今後、引き上げられる可能性もあるのではないでしょうか。

また年金の受給金額は、現役時代の収入に応じて決まります。年収が高い人は現役時代に納める年金額が高くなりますが、将来受け取れる年金額は増えます。逆に、年収が低い人は現役時代に納める年金額が少ないですが、将来受け取れる年金額も少なくなります。

それでは日本人の平均年収はいくらなのでしょうか。

令和4年度に厚生労働省が行った賃金構造基本統計調査によると、日本人の平均年収は328万円でした。雇用形態、性別で比較をすると、男性の正社員、正職員の平均年収は353.6万円、アルバイトやパート等、非正規雇用で働く人の平均値は247.5万円でした。女性の正社員、正職員の平均年収は276.4万円、非正規雇用で働く人の平均年収は198.9万円でした。もちろん年収は地域差や職種でも変わりますが、日本人の平均年収はこの20年近く、変わっていません。それではこの年収で将来、どれほど年金を受け取ることが出来るのでしょうか。

厚生労働省の公的年金シュミレーターを使用して、将来の年金額を試算してみましょう。

大学卒業後に就職し、60歳まで会社員として働いた場合、現役時代の平均年収が400万円であれば、65歳から受け取れる年金額は152万円になります。月額に換算すると、約12万円です。

今では浸透してきた「老後2,000万円」という言葉は、このような背景で作られた言葉です。現在の生活水準で考えると、この年金額では生活費は足りないのではないでしょうか。実際、厚生労働省が行った賃金構造基本統計調査によると、60歳以上でも多くの人が生活をするために働いています。

しかし、本来は、定年後は仕事を引退したいと考える人が多いと思います。だからこそ、早いうちから資産形成をしていくことが重要です。

資産形成は貯蓄に限ったことではありません。これまで日本人の多くは将来に対する備えとして貯蓄をしてきました。しかし、昨今の経済状況はいかがでしょうか。日本人の年収はここ十数年、上がっていません。物価高でもあります。政府も賃上げを促したり、社会保障制度で経済対策を行おうとしていますが、賃上げされても、物価が上がっているため、日本人の資産は増えていません。

このような背景もあり、岸田首相は政策の1つに「新しい資本主義」というものを掲げました。「貯蓄」から「投資」へ抜本的にシフトしていくという施策、「資産所得倍増プラン」です。日本人の多くの金融行動は銀行への預貯金です。年収も横ばいで、かつ物価高騰により資産は目減りしていく一方です。「貯蓄」から「投資」にシフトしていくことで将来的な資産を増やしていくことを目的に掲げました。その1つがNISA制度の改正です。

NISAとは

NISA制度は、少額投資非課税制度のことでNISA口座内で、株式や投資信託などの金融商品を購入すると、売却益や配当金にかかる税金が非課税になります。現在は、一般NISAとつみたてNISAの2種類があり、一般NISAは年間120万円、つみたてNISAは年間40万円の非課税投資枠が設定されています。一般NISAは、投資対象の幅が広く、投資の自由度が高いのが特徴です。一方、つみたてNISAは、長期・積立・分散投資に適した金融庁によって選ばれた投資信託(一部上場投資信託(ETF)を含む)に限定されており、初心者でも始めやすいのが特徴です。そして2022年12月の法改正により、2024年1月から新しいNISA制度が始まります。

新NISAでは、以下の5つのポイントが大きな変更点になります。

非課税保有期間が無期限化

これまではつみたてNISAでは20年間、一般NISAでは5年間という非課税保有期間を設けていました。新NISAではそれぞれつみたて投資枠と成長投資枠と名称が変わり、投資限度額内であれば、無期限で非課税になります。

口座開設期間の恒久化

従来のNISA制度では、利用可能期間がつみたてNISAは2042年まで、一般NISAは2023年までと定められていました。しかし、新NISA制度では利用可能期間が恒久化され、18歳以上の人であれば、いつでも口座開設が可能となります。

つみたて投資枠と成長投資枠の併用が可能

これまではつみたてNISAか一般NISAのどちらか片方しか、利用できない制度でした。しかし、新NISAでは1つのNISA口座でつみたて投資枠と成長投資枠の両方が併用できるようになります。

年間投資枠が拡大

新制度では年間の投資枠の上限も変わります。現行のつみたてNISA 40万円→新NISAつみたて投資枠 120万円、現行の一般NISA 120万円→ 新NISA の成長投資枠240万円です。

非課税保有限度額が拡大

現行制度では生涯、投資できる金額は、一般NISA:600万円、つみたてNISA:800万円でした。新NISAでは、新たに生涯にわたる非課税限度額が設けられます。これを生涯投資枠と言いますが、その上限は1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円)です。

(参考:金融庁 資産運用シュミレーション

それでは将来に備えて、2,000万円の資産を作ることを想定してシュミレーションをしてみたいと思います。目標金額は2,000万円、毎月15,000円の積立投資をすると、どのくらいの期間が掛かるのでしょうか。

※ 運用利回りは10%※で計算

※ 年利10%は、米国の株式指数の1つで人気のあるS&P500や全米株式の10年-20年の平均利回りから計算したもので、将来を確約するものではありません。

シュミレーションでは月々15,000円の積立投資を25年1ヶ月間続けることで将来、2,000万円の資産形成が出来るという結果になりました。

同じ金額を貯蓄で行う場合、毎月約70,000円程貯める必要がありますので今後のライフプランを考えていく上でもNISAを活用するのは選択肢の1つになると思います。

ただ一方でこんな声も…

このような声をよく耳にします。

しかし、その家計には本当に無駄はないでしょうか。

家計の支出は、固定費と変動費に分けられます。固定費とは、毎月一定の金額で発生する支出です。主な固定費としては、家賃、光熱費、通信費、保険料などがあります。変動費とは、毎月の支出額が変動する支出です。食費、教育費、交通費、娯楽費などです。毎月決まってかかる固定費の無駄を省くと、毎月一定の金額を浮かすことができます。固定費を減らす方が、食費や交際費といった変動費を毎月工夫して減らすよりもストレスが少なくてすみます。

上記の固定費のうち、通信費や保険料の見直しをしてみることがオススメです。

通信費や生命保険は毎月掛かる固定費の中でも、節約が出来る家計のポイントではないでしょうか。キャリアによっては2,000円から3,000円程の節約に繋がることもあります。

また生命保険はライフステージの変化で経済状況が変わると、保険料を節約できることがあります。結婚、出産、転職、住宅購入など、ライフステージが変わったタイミングで保険を見直しましょう。

また生命保険の内容も日々進化しています。10年前に入っていた保険では、今の医療技術に対応していない可能性もあります。保険料だけでなく、保証内容も見直すことをおすすめします。

ただ保険の解約や切り替えは、誤って行うと取り返しがつかないこともありますので、必ず保険会社に内容を確認してから行いましょう。

【グローバルファイナンシャルスクール(GFS)について】

資産形成教育の浸透を目指す、オンライン金融スクールです。講義数、講師数、講義時間数、生徒数は業界最多となり、2023年11月26日現在の生徒数は31453人。

【校長のご紹介】

11月30日は【年金の日】物価高でも老後資金を準備したい!家計の見直しと新NISAの活用術