「パチンコには確実に儲かる必勝法がある」

 このような謳い文句で売られている「パチンコ攻略法」をご存知だろうか。こういった攻略法は基本的に詐欺であることが多い。情報社会となった現在は、あまり見かけなくなったが、パチンコ雑誌に広告が掲載されていた時代もあった。パチンコにどうしても勝ちたくて、騙されて購入してしまった人もいるだろう。

 今回は、そんなインチキ商材を購入してしまった過去を持つ、個人タクシーを営む村岡一郎さん(仮名・62歳)に話を聞いた。

◆パチンコには何かある……と思った

 村岡さんは自他共に認めるパチンコ好きだ。タクシーの運転手になったのも、趣味のパチンコが打てることにあったという。

「タクシーの運転手になったのは37歳だったかな。それまでは小っちゃい広告代理店で営業マンやってたんだけど、とにかく毎日夜中まで仕事して、土日も仕事で潰れることは珍しくなかった。ちょうど子供も生まれたばっかだったけど、子育てなんか嫁さんに任せっきりで夫婦揃ってノイローゼになっちゃった。それでいろいろ考えて、タクシーの運転手になろうって。個人タクシーになればずっと仕事ができるし、時間もある程度融通が利くからね」

 会社員時代は営業回りの途中にサボってパチンコ屋へ行ったり、会社帰りに閉店まで打っていたというが、「どっちも打つ時間が限られてて心ゆくまで楽しめなかった」と村岡さん。そんな村岡さんは常々「パチンコには何かある」と思っていたという。

「私が若い頃に打ってたセブン機には“リーチ目”なんてものがある台もあって、特定の出目が出るとその次の回転で大当りって。連チャン機時代もいろんな攻略法があったから、ずっと“パチンコには何かある”って思ってた。

そんなとき、パチンコ雑誌に出ていた谷村ひとしって人が、大工の源さんには大当りする前にリーチ目が出るって言い始めて、えらいことになってた。『3・源・源』が出ると大当りが近いって。本当かよって思って打ち込んだんだけど、『3・源・源』なんてなっかなか出ないわけだ。そこで気づいたんだけど、別に『3・源・源』が出なくても当たるし、爆発するし、仮に『3・源・源』が本当にリーチ目だったとしても、大当りが早くわかるだけど意味ねぇじゃんって」

 と、谷村ひとし氏を一蹴する村岡さんだが、「やっぱりパチンコには何かある」と改めて思ったという。

海物語の出目をひたすらメモした日々

 この出来事から数年後、村岡さんはある一台のパチンコと出合う。今なおヒットを続ける海物語シリーズだ。

海物語の前のヤツ、ギンギラパラダイスも好きだったけど、海物語はハマッたね。もう、朝から晩まで海物語。なんとか攻略してやろうと思ってさ、出目を全部取ったこともある。何かあるんじゃないかって。それでもわかんなかったなぁ」

 そんなある日、一通のダイレクトメールが郵便受けに入っていた。それは「海物語完全攻略」と打たれた攻略会社からのものであった。

「もう、万策尽きた。とにかく何でもいいから攻略のきっかけがほしかった。でも、冷静に考えるとそんな攻略法があったらみんなやってて、パチンコ屋は潰れちゃうでしょう。いや、それでも何かあるんじゃないかって」

 そんな葛藤の日々を過ごした後、村岡さんは「ちょっと買ってみる」ことにしたという。

◆3万円を振り込んで送られてきたA4の紙

 恐る恐る記載された電話番号に電話をすると、明るい女性が対応して拍子抜けしたと村岡さん。言われるままに住所、電話番号を伝えると、先方からは振込先の口座が書かれたパンフレットが届き、一番安い3万円の攻略コースのカネを振り込んだという。その数日後、一通の封筒が届いた。

「攻略会社から攻略法がいつ届くのか気が気じゃなかったけど、振り込んだ2日後に封筒で届いたんだよ。開けると、左上にでっかく『マル秘』って書かれてて、大当りを直撃する手順が書かれてた。それがもう長ったらしいんだ。デモ画面に戻してから保留をつけずに20回転、それからまたデモ画面に戻して今度は連続回転で奇数の単独リーチを3回出す。それからは保留玉をつけずに単発で回すと高確率で大当りみたいな。

で、間違えると全部最初からなんだけど、連続回転で奇数のリーチを3回かけるって、まぁまぁクギがよくないと無理でしょ。あと、単発で回すのも1発ずつの打ち出しだから時間がかかってしゃあない」

◆攻略法を実践した結果は…

 では、気になる結果はどうだったんだろうか。

「わかんないんだ、これが。途中で当たったりすることもあったり、手順通りにやったけど当たらなくて文句言ったこともある。そしたら担当者ってのが出て『それはひょっとしたらここを間違えたかもしれませんね』とか『それは初期ロットじゃないので、対策されてる可能性がありますね』って、すっごく丁寧に教えてくれるんだ」

 普通の人ならここで「騙された!」と思うところだが、村岡さんは違った。日に日に「ちゃんとした攻略法があるはずだ」と考えるようになってしまったのだ。

◆5万円、10万円と攻略法を買い続ける

「攻略会社のヤツに『5万円とか高い攻略法は何が違うんだ?』って聞いたら、『海物語はお店ごとに連チャンの基盤が違っているから、最新板の基盤に対応しているものです』って。それで最新板の5万円の攻略法買ったんだけど、それも当たらないの。さすがに頭来て文句言ったら、10万円の攻略法を特別に3万円で販売するから許してくれって」

 こうして村岡さんはまんまと総額11万円を騙し取られたのであった。その後も何度か電話で営業されたが、さすがに懲りて無視していると、ある日、見知らぬ番号から電話があった。

「電話に出たら、攻略会社の担当者だったヤツだった。そいつは『あの会社は詐欺会社で、村岡さんを騙して申し訳なかった。私とその仲間で本当の攻略法を売る会社を立ち上げたから、ぜひ紹介させてほしい』って」

 この電話に“男気”を感じた村岡さんは、まんまと3万円を振り込んでしまうことになる。

◆完全にカモにされるも攻略法の存在を信じて……

 もちろん3万円を振り込んで届いた攻略法もウソの攻略法で、当たりは一向に来ない。そればかりか男の口車に乗せられ、追加で5万円を振り込み新しい攻略法を追加で購入してしまうことに……。

「それで、当たらなかったら返金するからって言われてカネ払ったけど、やっぱりダメ。いい加減にしろって電話したら、すぐに5万円返金されたんだよ」

 返金されたことで村岡さんは「けっこうちゃんとしたヤツらだな」と思い、戻って来たカネでパチンコを打っていると、またも攻略会社から電話が掛かってきたという。

「先日は申し訳ありませんでしたって言ってきて、それで最新板の攻略法が今日完成したからどうかと。事務所で打ち方のレクチャーまでするって言うから、じゃあ、行ってやるよ! みたいなね」

 買い言葉に売り言葉とばかりに事務所に乗り込んだ村岡さんだが、攻略会社からすれば鴨が葱をしょって来たようなものだった。もちろん、攻略法は嘘っぱちだ。手順通り打つと大当りするプログラムを組んだロムを搭載した台を業者は用意し、実際に大当りさせて納得させる手口が当時は横行しており、村岡さんもまんまと騙され、30万円を支払ったという。

「本当に当たるもんだからさ、そりゃ信じちゃうよなぁ〜(苦笑)」
 
 どこか嬉しそうに騙された過去を話す村岡さんだった。

◆4年間で400万円を支払ってわかったこと

 一度インチキ攻略会社と縁を持つと、その後は食い物とばかりに村岡さんには電話や手紙での攻略法の売り込みが来るようになった。そして、村岡さんはその都度、攻略会社とコンタクトを取り、気になった攻略法を購入していった。

「初めて攻略法を購入してから1年で150万円くらい使ったかな。今考えたらそのカネで海物語打ってりゃ、もっと勝ってたかもね(苦笑)。4年くらいかけて400万円くらい払ったと思う。200万円越えた辺りから『いつか本物の攻略法に出会えるはず』って、なんか妙な確信を持つようになった。まぁ、引くに引けないからだよね」

 だが、ついぞ村岡さんは本物の攻略法に出会うことはなかった。後悔はないのだろうか。

「高い勉強代だったと思うよ(苦笑)。結局、攻略法はあるかないかなんて、わかんない。わかったことは『オレは攻略法みたいなことを追い求めることが好きだった』ってこと。宝探しっていうか……。『怪しいな? だったら、それをオレが暴いてやる!』みたいなね」

 攻略法というお宝を求めてカネを使い続けたことを、トレジャーハンターになぞって話す村岡さん。今も「パチンコには何かある」と思い続けているという。信じる者は救われるという言葉の意味を、改めて考えさせられた取材であった。

取材・文/谷本ススム

【谷本ススム】
グルメ、カルチャー、ギャンブルまで、面白いと思ったらとことん突っ走って取材するフットワークの軽さが売り。業界紙、週刊誌を経て、気がつけば今に至る40代酔っ払いライター

写真はイメージ