2023年10月より放送中の『フリースタイル日本統一』(テレビ朝日/ABEMA)。全国16地区で活躍するラッパーが3名1組となって、それぞれの地元の威信を賭けてフリースタイルバトルに挑戦。勝利チームは敗退チームより好きなラッパーを1名だけ吸収していき、最終的に天下統一を果たすと、その暁として賞金100万円が贈呈される。

参考:【写真】『フリースタイル日本統一』#9のハイライト

 今回は、11月28日に公開された【#9】のハイライトを振り返っていく。細かなネタバレもあるためご注意いただきたい。

・『高校生RAP選手権』スターラッパーが勢揃い!

 【#9】では、1回戦(壱万石の戦い)にて、TEAM大阪(ミメイ×POWER WAVE×歩歩)とTEAM京都(REDWING×Fuma no KTR×TERU)が激突。それぞれTEAM大阪には、頭脳派のミメイ、今大会唯一のレゲエDeejayであるPOWER WAVE、そして彼らをまとめるようで最も暴れ散らかす奇想天外な歩歩と、三者三様な才能が集結。対するTEAM京都は世代こそ違えど、まだ10代であるREDWINGの第17回大会での優勝を筆頭に、全員がかつて『BAZOOKA!!! 高校生RAP選手権』で好成績を残している若手実力者たち。バトル前からすでに好勝負が期待されていた。

 実際に、REDWINGがミメイ、POWER WAVE2枚抜きする好発進を見せながら、勝負は最終第5戦目までもつれ込む展開に。そのなかより本稿では、REDWINGに焦点を絞り、第2戦のPOWER WAVE、第3戦の歩歩とのバトルについて振り返りたい。

REDWING、ラガフロウでPOWER WAVEに応戦

 POWER WAVEとのバトルで選ばれたビートは、ゆの「BPM92」。因縁の“赤髪対決”だが、すでに味方のミメイが一敗を喫したことから、闘志に火がついていたのだろう、先攻のPOWER WAVE。序盤からのバイブスの圧で相手を圧倒するかのように一時は思えたが、ここで先にフロウ勝負を仕掛けたのは、後攻を選んだREDWINGの方。

 ミメイとのバトル中、REDWINGがかつてPOWER WAVEに勝利しているとも明かされていたが、戦い方を熟知しているのか。POWER WAVEの1stバース以上に、リズムを細かに割ったフロウで、通常であればライムの落としどころになりそうな、ベースの音が抜かれる小節末の部分にも、気持ちよく、かつ所狭しと言葉をハメていく。現に、ここが勝敗を分ける大きなポイントとなったようだった。

POWER WAVE:コイツのヤバさ 分かりかねる へし折ってやるぜ 赤い羽根

REDWING:当たり前 その乗り方だけじゃくだらねぇから また俺が上に上がってるだけだね

POWER WAVE:勢い任せと言うなら 今からそんなスタイルを見せよう お前じゃ出来ないこんなフロウ 今から上げてくとこ乗っかれよ Con shotta ta ta Mi seh Gon shotta ta ta 今ブチ抜くユイツにラタタタタ

REDWINGはいはい タタタタタタ 頭の中 馬鹿だな Motherコンプラ】興味ねぇんだ 頭のな

 前述のベース音が抜かれたのは〈くだらねぇから また俺が上に上がってるだけだね〉の部分。その後、POWER WAVEも持ち前のハスキーボイスを活かしながら、自身で歌っていた通り、LowからHighにテンションを揺さぶるフロウで応戦するも、REDWINGが押し負けず、結果はREDWINGが5-0での勝利となった。

・歩歩が魅せる、得意のユーモアと細かなライムを織り交ぜたラップ

 続いてREDWINGの前に立ちはだかったのは、ベテランMC・歩歩。Lostface「Hustler's Lesson」の上で、歩歩のターンからバトル。総括すると、REDWINGは(気付かぬうちに?)よきヒール役のような立ち回りとなっている印象だった。

歩歩:俺はまっさら 頭は自紙 ヤバいバンチライン一発で吐くし 楽してないぜ タクシーじゃない 1本1本 俺なりのHIPHOP

REDWING:だからマイクでしてきた実証 全てこなして来たんだ ミッション/歩歩そこどけや 昔の乗せ方 パイセンに見せる男の背中

歩歩:お前が越えてきたミッションって どんなもんやねん 俺 何度もチキショー やられて来たぜ 俺の真面目なHIPHOP 俺はHIPHOPの街 はじめの一歩 デンプシーロール やりたいことは全部しろ お前のライム全部後ろ 俺は真っ直ぐ やるぜ お前のパンチライン

REDWING:お前はちょっと復帰してバトル出来ひんくなって 「HIPHOP HIP HOP」しか言ってないけど/もっとスタミナつけて先攻取るなら もっと客沸かさないと勢いづいた俺に勝たれへんぞ

歩歩:ごちゃごちゃ言わんとディスくれ お前のライムとフロウ ディスプレイ/懸けるマイクに 打つぜタイムリー 今日の俺に勝つのは絶対無理

 上記の引用を見れば伝わるだろう。歩歩のユーモア溢れるラップ。たしかにREDWINGの指摘通り、歩歩は言葉が詰まりかけたタイミングで“HIP HOP”を多用していた印象こそあれど(それを伝えるべく、あえて彼の2ndバース丸々を文字起こししたのだが)、〈楽してないぜ タクシーじゃない〉、相手の“ミッション”という言葉を拾って〈俺 何度もチキショー〉と返すなど、高い即興性と、文字起こしをしながらくすりと笑えてしまうライン、さらには物理的なダイナミックさはオリジナル以外の何物でもない。

 結果は、LiLyとGOCCIがREDWING、いとうせいこう、KダブシャインKEN THE 390が歩歩に投票し、3-2の僅差で歩歩が勝利。REDWINGも3rdバースでは自らのバックボーンを示そうとしたが、時すでに遅し。自身がヒールに回るぶん、歩歩が輝いてしまっていた。

 その後も歩歩は、Fuma no KTRとのバトルでも、“びよーん”という擬音とともにセンターステージから後ろの華道へと駆け出したり、相手の経絡秘孔を的確に突きながら、“北斗百裂拳”ならぬ“歩歩百裂拳”、そして〈お前はもう楽しんでいる〉というお決まりのパンチラインドロップするなど、とにかくターンを重ねるごとにやりたい放題に。

 次回の【#10】に登場する大将・TERUは、そんな歩歩の勢いに飲まれず勝負ができるか。来週のオンエアを楽しみにしていてほしい。

(文=一条皓太)

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