2024年1月から「新NISA」が始まります。「つみたて投資枠」と「成長投資枠」が併用できることや、株式や投資信託等の資産を非課税で保有できる期間が無期限になることなど、大変魅力的な内容といえます。新NISA制度の概要について、CFPの藤川太氏が監修した『60歳からの得する! NISA大改正』(株式会社ART NEXT)から一部抜粋してお伝えします。

現行NISAよりも使いやすく、税制メリットも増大する「新NISA」のしくみ

2024年からスタートする新NISAは、現行制度よりも使いやすく、お得な制度となっています([図表1]参照)。運用中の利益と売却益が非課税であることはもちろんのこと、最も大きなメリットは、資産の非課税保有期間が無期限になることです。期限がなくなったことで、たとえば、60歳から投資を始める人にも長期運用ができるチャンスが広がりました。

また、これまで併用が不可となっていた「つみたてNISA」と「一般NISA」が、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」に生まれ変わり、併用ができるようになります。両方の枠を併用できることによって、年間の最大投資限度額も360万円となり、生涯を通して1,800万円までの投資が可能となります。

この生涯非課税保有限度額は、取得価額(簿価)で管理され、運用によって出た損益はカウントされません。さらに、枠を使い切っても、売却することで投資枠が復活するしくみも導入されます。これで資産を増やすだけでなく「資産を運用しながら取り崩す」ことがしやすくなるため、多くの世代にとって、資産運用に使わない手はない制度です。

「つみたてNISA」がよりパワーアップ…新NISAの「つみたて投資枠」

新NISAの「つみたて投資枠」は、現行の「つみたてNISA」を引き継ぐ枠です。購入できる商品は、現在のつみたてNISA対象商品と同じ、「長期・積立・分散投資」に適した投資信託とETF(上場投資信託)に限定されています([図表2]参照)。

つみたて投資枠で購入できる商品は、以下の要件をすべて満たす必要があります。

【積立投資枠で購入できる商品の要件】

・対象商品:投資信託、ETF

・販売手数料:0円(ノーロード)

・信託報酬:一定水準以下(国内株のインデックス投資信託は0.5%以下に限る)

・信託契約期間:無期限または20年以上

・分配金:分配頻度が毎月でない

1年当たりに投資できる金額は120万円までですが、1回で120万円分買い付けることはできません。「つみたて」という性質上、最低年2回以上定期的に継続して買い付けを行わなければなりません。積み立てる金額は、必ずしも毎月定額にする必要はなく、臨時収入があったときは次回の積立額を増額するといったこともできます。

また、必ず年間120万円を投資しなければならないわけではありません。自分で無理のない金額を設定し、長く積み立てて生涯非課税保有限度額の1,800万円まで投資することが可能です。この場合「成長投資枠」を利用しなくても、つみたて投資枠だけで1,800万円を使い切ってもかまいません。

もし、年間120万円以上投資したいという人は、「成長投資枠」を併用すれば、年間360万円まで投資できます。

年間投資枠が一般NISAの2倍に! 新NISAの「成長投資枠」

「成長投資枠」は、「一般NISA」を引き継ぐ枠です。国内外の上場株式、投資信託、国内外のETF、国内外のREIT(上場不動産投資信託)など、「つみたて投資枠」では購入できないタイプの金融商品にも投資が可能です。

ただし、整理銘柄・管理銘柄に指定された株式や上場廃止が予定されている会社の株式は購入できません。また、投資信託やETFのうち、信託期間20年未満、毎月分配型、デリバティブ取引を用いた一定の投資信託(連動する指数の2倍、3倍の成果を目指すようなハイリスクな投信)は除外されています([図表3]参照)。

なお、株式の配当金、ETFやREITの分配金は、受領方法を「株式数比例配分方式」に設定しておかないと非課税にはならないので、注意が必要です。

成長投資枠は、年間投資枠が240万円で、現行の一般NISAの2倍になります。毎年240万円まで、前述の株式や投資信託等が購入できるということです。

まとまった資金を投資したい人には朗報ですが、成長投資枠のみで取引をする場合は、非課税保有限度額が1,200万円までです。1,800万円まで投資するには、つみたて投資枠を併用する必要があります。

藤川 太

ファイナンシャルプランナー

CFP認定者

生活デザイン株式会社 代表取締役