人々、久々、時々、どれも「特に意識しなくても読める」漢字でしょう。

では、「々」は何と読むのでしょうか。答えに困ってしまう人が多いはず。

読み方を知るだけでなく、その意味やほかの使い方、さらに同様の使い方ができるほかの文字なども知れば、より表現は豊かになります。

「々」の基本的な読み方

「々」は日常的に見かける頻度も高く、特に意識しないまま使用している人も多いでしょう。

最近では名前に使用されることも多いですが、そもそも「々」は何と読むのか、その意味は何なのか、気になるという声も聞かれます。

ここでは「々」の基本的な読み方を解説します。

「々」とは何か

「々」は踊り字と呼ばれる記号・符号の1つ。

踊り字は1つの漢字を繰り返ししたい時に利用し、下の字を略していることを示すものです。踊り字以外にも「同ノ字点」「畳字」「おくり字」「くりかえし符号」「ノマ点」とも呼びます。

「々」についてよくある勘違いに「『々』は漢字である」というものがあります。しかし実際は、「々」には正式的な読み方もなければ、そもそも漢字でもないという謎の多い存在です。

そのため、変換する際に「久々」などと打ち込んで最初の単語だけを消して使用するなど、使いづらさを感じる場合もあるでしょう。

基本的に単体で使用する頻度はそうありませんが、パソコンやスマートフォンで「々」を使用したい時は「同じ」「くりかえし」などでも変換できますので、試してみましょう。

「々」の基本的な読み方のルール

「々」の基本的な読み方のルールは「1つの漢字を繰り返す時に使用する」です。これは「々」だけではなく、踊り字と呼ばれる「〻(二ノ字点)」にも該当します。

これは、同じ漢字を繰り返し使用する時や、連続する名詞や動詞などに使用するもので「ひさ々(久々)」や「とき々(時々)」のように、ひらがなの後に使用するのは正しい使用方法ではありません。

また「々」のような踊り字には似たような意味があっても使用するシーンが異なるものも多いため、シーンによって適切に使い分けることが大切です。

「々」の使用例

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次は「々」の使用例を解説します。

「々」は前接する漢字を繰り返すために使用される踊り字です。そのため「々」を漢字などの前に使用することはありません。

必ず何かしらの漢字や単語、踊り字の種類によっては数字などが前接している状態で使用します。

よく使われる「々」の単語例

「々」がよく使用される単語例は次のとおりです。

・久々:久々にしっかり休息が取れた

・度々:度々、申し訳ございません

・長々:長々とお時間を頂き、ありがとうございました

・共々:今後も夫婦共々、よろしくお願いいたします

・人々 :私は困っている人々を救いたい

紹介した中でも「久々」は会話や文章を書く時に利用する頻度が高い単語です。「久しぶりに」「久しぶりだから」よりも「久々」と表したほうがスマートなイメージを感じます。

また「度々」も、社内で何かを改めて質問する時や、取引先へ改めて連絡する時に「度々申し訳ございませんが」と言葉や文章を続ける場合もあるでしょう。

難読語における「々」の使用例

難読語とは、通常の音訓では読めない当て字や熟字訓と呼ばれる日本語のことです。例えば「紫陽花(アジサイ)」や「鹿尾菜(ひじき)」「強ち(あながち」)などが難読語に該当します。

本記事で解説している「々」を難読語で使用する時の例は次のとおりです。

・其々(それぞれ):其々に悩みがある

・偶々(たまたま):偶々、遭遇した

・区々(まちまち) :散歩時間は日によって区々だ

・態々(わざわざ):態々、ご足労いただきありがとうございました

・努々(ゆめゆめ):今回の出来事を、努々忘れてはならない

・遥々(はるばる) :今日は遥々、ありがとうございました

難読語は、基本的に平仮名で表されることが多く、漢字だけを見ても読めない場合もあります。しかし、単語そのものはある程度高い頻度で使用されている言葉です。「々」は日本語を使用する人々にとって身近な存在であることが分かります

「々」の読み方の例外と注意点

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次は「々」の読み方の例外と注意点について解説します。

例外的な々の読み方

「々」の例外的な読み方として分かりやすいものには、お菓子の「紗々」が挙げられるでしょう。

冒頭で解説したとおり「々」を使用するルールでは「1つの漢字を繰り返す時に使用する」ものであるにも関わらず「紗々」の場合、読み方が「さしゃ」と異なります。

「久々(ひさびさ)」や「時々(ときどき)」も、1つ目と2つ目で漢字の読み方が異なるため、例外的な読み方ということですね。ただし、単語が固有名詞など、正式的に認められている場合、使用しても問題はありません。

次に「々」を使用する時の注意点には「民主主義」や「会社社長」など、1つの単語が繰り返される場合でも、双方の単語の意味が途切れる場合に「々」は使用しないことが挙げられます。

例えば、上で挙げた「民主主義」を区切ると「民主」「主義」で双方ともに意味が異なるからです。

ただし「結婚式式場」「告別式式場」などの場合は例外的な扱いを受けています。

理由として、同じ漢字を繰り返すことが不幸の繰り返しを連想させると考えられていることから「結婚式々場」「告別式々場」と表記してもよいということになっています。

そのため、結婚式場などの案内看板に「結婚式々場」「告別式々場」と略されていることも多いです。

また、先ほども触れたように「々」は前接する単語や漢字の補助をする役割として使用します。そのため、単体で使ったり、「々子」のように「々」を冒頭に使用することはありません。

「々」の由来とその歴史

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次は「々」の由来とその歴史について解説します。

「々」の成り立ちと歴史

「々」は元々「同」という漢字の古字「仝(どう)」が元になっていると考えられています。現在でも「同じ」「繰り返し」という意味合いで使用されている点を見れば納得です。

ほかにも「漢籍」と呼ばれる中国の書籍で使用された二ノ字点「〻」が日本に入って変化したという説もあります。

二ノ字点とは、「々」と同じく1つの漢字を繰り返す時に使用するもので、漢字を訓読みする時に漢字の右下へ付け、記号が付いた字を繰り返し読むという指示をする役割を担っています。

日本でいつから「々」が使用されていたのかに関する有力な説はないものの「々」が広く使用されるようになったのは、1952年頃だったと推測されるでしょう。

この頃、内閣総理大臣官房総務課が発した「公用文作成の要領」というものの中で「同じ漢字を繰り返す時は『々』を用いる」と記載されています。

公用文作成の要領とは、公用文を感じよく、意味の通りやすいものにするため、または執務能率の増進を図るために「用語用字」や「文体・書き方」に改善を加え、基準を示したものです。

更に元をたどれば古典文学が盛んになりだした平安時代鎌倉時代にかけて作成された和歌で使用されている記録があることから、その時代には中国から日本へ入ってきており、1952年頃に一気に広まり出したのではないかと考えられます。

「々」の役割と意味

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次は「々」の役割と意味について解説します。

「々」が果たす役割

「々」が果たす役割は「1つの漢字を繰り返し読ませること」「省略表現」が挙げられます。後者に関して「々」で省略することにより、表現を強調させられる効果が期待できるでしょう。

例えば「山々」であれば「多くの山」とイメージでき、「花々」も同様です。また文章の中に「々」を入れると、読む側は「単語を繰り返し読むのだ」と一目でわかります。

加えて「結婚式式場」のように、同じ漢字が続くと見づらく感じるような場合も「々」で綺麗にまとめることで読みやすくしてくれる役割も果たしてくれているのです。

「々」は前接している単語や漢字を繰り返し読ませるために存在していることから、補助的な役割も果たしていると考えられます。

「々」の意味とは

「々」の意味はここまでで解説したとおり「同じ」「繰り返し」という意味です。独自の読み方があるわけでもなく、音があるわけでもありません。

「々」は高い頻度で使用するものの、正式な読み方があるわけではないため「漢字辞典」や「国語辞典」などにも記載されていない場合も多くあります。そもそも一体何と読むもので、どんな意味があるかのかを知る術が少ないため、悩む人も多いでしょう。

結論からいえば「々」自体に何か意味があるわけではなく、単語や漢字と一緒に使用することで、上に記載した意味を生むことになります。

単体で使用しても「々」が持つ役割を果たせるわけではないため、常に何か単語や漢字が存在していない限りはあらわれません。

「々」の使い方とポイント

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次は「々」の使用方法とポイントについて解説します。

「々」を正しく使うためのポイント

「々」を正しく使用するためには、ルールをしっかり理解することが大切です。

繰り返しになりますが、「々」は、同じ漢字や語句を連続して繰り返す際に使用します。そのため、異なる漢字や語句に用いることのないよう注意が必要です。

また無理に「々」で単語や文章を省略しないように意識する必要もあります。わざわざ「々」を使用しなくてもいいシーンでは使用せず、そのまま表現を使用してください。

ほかにも「々」を使用する時は文章を読む相手や、送る相手に対する配慮も必要です。

「々」を含む踊り字は機種依存文字と呼ばれるものであるため、パソコンやスマホの機種によって文字化けして読めなくなる場合があります。

近年のパソコンやスマホで文字化けすることはそうありませんが、知識として覚えておきましょう。

「々」の使い方をマスターするコツ

「々」の使用方法をマスターするコツは次のとおりです。

・辞書など、単語や文章が適切に使用されているものを参考にする

・知人や家族とのメールやSNSで使用してみる

・本や雑誌、音楽など、さまざまなメディアでの使用方法を活用する

辞書は、単語や文章を適切に使用しています。使用例が掲載されている辞書もあるため、マスターするには便利なツールでしょう。

次に「々」を使用して知人や家族とメールをしてみたり、SNSへ文章を投稿してみたりすることもマスターするためには有効です。実際に使用してみることで身につきやすくなります。

最後に「々」は本や雑誌、音楽など、さまざまなメディアでも使われており、そのなかでは独特な使用をしている場合もあります。

例えば日常会話程度では見かけない「々」を入れた単語や文章もあるため、一般的な使用方法以外にマイナーな使用方法も覚えることで、実際に「々」を取り入れる時の参考になるでしょう。

特に書籍などを参考にすると「々」に関する新たな発見や使用方法が見つかるかもしれません。昔の人々が残した作品には「々」の様々な活用例を多く見つけることができるでしょう。

ただ、注意点として「々」はどこにでも使用すればいいわけではありません。

使用する場所や頻度など、適切な使用を心がけないと、文章が読みづらくなる場合があるからです。「々」をマスターするためには、実際に「自分で考える」「書く」を繰り返すことが最善でしょう。

「々」とほかの表記の比較

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次は「々」とほかの表記を比較していきます。

「々」には同じような働きをするものとして「〃」や「ヽ」「ヾ」「ゝ」「ゞ」など、さまざまな仲間が存在しています。それぞれ読み方や意味が異なるため、知識として覚えておくといいでしょう。

「々」とほかの反復記号の比較

「々」とほかの反復記号を比較してみます。

反復記号と聞くと「音楽に関連している言葉」と思う人も多いかもしれません。

反復記号の意味は「曲の一部あるいは全体を反復(繰り返す)演奏するよう指示する記号」のことで、本記事で紹介している「々」と同じ役割を持っています。

そのため、ここでいう反復記号とは「々」のように、使用することで単語や漢字などを繰り返す指示を行う記号と覚えておきましょう。

そして「々」以外に存在している反復記号は次の4つです。

・々(同ノ字点)…同じ単語を繰り返して使用する

・〃(ノノ字点)…数字や語句を繰り返して使用する

・「ヽ」「ヾ」「ゝ」「ゞ」(一ツ点)…かなを繰り返して使用する

・〻(二ノ字点)…同じの単語を繰り返して使用する

・「〳〵」「〴〵」(くの字点)…かなが含まれた2文字以上の単語に使用する

どの反復記号も、同じ単語や数字、語句、かなを「繰り返す」という点は同じです。

さらに詳しく、それぞれの反復記号を見ていきます。

1.々(同ノ字点)

「々」は、冒頭から解説しているとおり、同じ単語や漢字を繰り返したい時に使用します。

(例)

度々 / 久々 など

2.〃(ノノ字点)

「〃」は、数字や語句を繰り返したい時に使用する反復記号です。基本的に文章よりも、何か表形式にまとめる時によく見かけます。

ただ一般的には「ノノ字点」よりも「テンテン」や「チョンチョン」と呼ばれることも多く、ノノ字点といっても相手に伝わらない場合もあるでしょう。

(例) 

〇月〇日 〇〇アンケートに回答した人々 100名

〇月〇日 〃              150名

〇月〇日 〃              50名   など

またノノ字点は海外でも「ditto mark」という呼び名で知られており、「同上」という意味で、日本と同じように使用されています。

3.「ヽ」「ヾ」「ゝ」「ゞ」(一ツ点)

「ヽ」「ヾ」「ゝ」「ゞ」は、平仮名を繰り返したい時に使用する反復記号です。通常の仮名には「ヽ」または「ゝ」で濁点が付く仮名の場合は「ヾ」か「ゞ」を使用します。

ただ現代で一ツ点を使用する頻度は少なく、一般的な文章での使用はおすすめできません。

(例)

みすゞ / こゝろ

4.「〻」(二ノ字点)

「〻」は、同ノ字点(々)と同じ用法で使用する反復記号です。

パソコンやスマートフォンの場合「々」のほうを使用することがほとんどです。

(例)

只〻 / 諸〻 など

5.「(〳〵」「〴〵」(くの字点)

「(〳〵」「〴〵」は、仮名が含まれた2文字以上の言葉に使用される反復記号です。

縦に書かれることもあれば、横に書かれることもあります。「〳〵」は通常の言葉「〴〵」は1字目に濁点が付く言葉に使用されます。

(例)

しば〳〵 / 代わる〴〵

同ノ字点の「々」やノノ字点の「〃」は現代でもよく見かけますが、ほかの反復記号は目にする機会も少なく、くの字点に関しては滅多に使用しないでしょう。

中には「学校で習ったっけ?」と感じる人もいるかもしれませんね。

昔の人々が書いた詩集や学問書ではよく見かけるものですが、わざわざ使用する機会も少ないため、1つの知識として覚えておきましょう。

「々」の使い分け

「々」を使い分ける時には以下のポイントを意識しましょう。

・同じ漢字を繰り返したい時に使用すること

・2つの漢字や単語が連なる場合は使用しないこと

・パソコンやスマートフォンで使用する時は文字化けしやすいので使用しないこと

・文章を強調したい場合など、文脈のニュアンスで使い分けること

・過度な使用は冗長的なイメージを与えるため、注意が必要

文章を書く時には「々」を使用したほうがいいケースと、そのまま書くほうがいいケースがあります。省略する必要がない場合は「々」を入れようとせず、自然なニュアンスを保つことが望ましいです。

文章を書く時、どこにでも入れてしまうと読み手が「どう読むのだろう」と困惑してしまいます。例えば、先ほど解説した難読語の「まちまち」に関して「区々」と書いたものをスラリと読める人も少ないでしょう。

また「々」を含む踊り字は、それぞれ適した使用方法があります。

仮名を繰り返す時には「ゞ」、数字などを繰り返す時には「〃」など、適切な使い分けが大切です。

「々」を使った日本語の面白さ

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次は「々」を使用した日本語の面白さについて触れていきます。

「々」を用いた遊び心あふれる表現

日本語表現の中には「々」を使用することによって、単語のイメージを強調したり、リズムや響きを楽しんだりできるものが豊富にあります。

例えば「山々」や「木々」など、文章から情景をイメージしたり、スマートに言葉をまとめることによってリズムよく読み進めることができるなど、「々」ならではの面白さを感じられるでしょう。

昔の人々が「々」を使用し始めた頃から現代まで、さまざまな文集や俳句などが発見されていますが、どれも読み進めるとリズムがよく、そして遊び心を感じさせる雰囲気があります。

ただ、日常的な文章では、過度な使用が冗長表現と捉えられやすくなります。使用する頻度やシーンで「々」を使い分けることが大切です。

「々」を使うことで生まれる言葉の美しさ

「々」を使用することによって生まれる言葉の美しさはいくつかの要素によって成り立っています。

「々」を使用している文章は、同じ音が繰り返されることによるリズム感や響きが生まれます。また「々」によって強調された語句は、読み手へ情景をイメージさせるきっかけになるでしょう。

ほかにも「々」は読み手へ詩的な効果を感じさせることもできます。事実、「々」を使用する文学は短い中に繊細な感情表現を描写しているものが多いです。

ただつらつらと文字を書くよりも、適度に「々」を入れて見やすくする、情報を整理する、そして読み手へイメージさせるという点に関しても「々」の利用はとてもスマートな選択でしょう。

意外と知らない言葉の意味

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本記事では「々」の読み方や使用方法について解説しました。日常的に見かける「々」ですが、どういう意味なのかを知らずに使用している人も多いでしょう。

例外的な読み方や使用方法もあるため、難しいと感じる半面、適切に使用できればとてもリズム感がよく、読みやすさを与えてくれる存在です。

本記事を参考に、ぜひ「々」への理解を深めてみましょう。


[文・構成/grape編集部]

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