12月8日に開催される『The Game Awards 2023』では、対象期間中に発売されたゲームのなかから、とくに優れたタイトルやその開発者などが表彰される。そんな本祭典の開催に先駆けて、大賞である“Game of the Year”にノミネートされた作品が公式より6つ発表された。

参考:【画像】Game of the Yearにノミネートされた6作品

■2023年Game of the Yearノミネート作品

Alan Wake 2
バルダーズ・ゲート3
Marvel's Spider-Man 2
バイオハザード RE:4
スーパーマリオブラザーズ ワンダー
ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム

 本稿では、2023年のノミネート6作品を取り上げ、それぞれの特徴の解説、選出された理由などについて考察していく。

Alan Wake 2

 2010年に発売されたサバイバルホラーAlan Wake』の続編。ブライトフォールズという町で起こった殺人事件を追いかける捜査官サーガアンダーソンと、悪夢のような世界に囚われてしまった作家アラン・ウェイクというふたりの主人公によって、それぞれの視点の物語が描かれる。

 ふたりの物語が交錯しているのが本作のポイント。同じ場所でも、アンダーソンとウェイクでは見える光景が違ったり、あるいは互いの世界の一端が垣間見えることもある。アンダーソンのパートでは捜査官として殺人事件を追うが、いっぽうのウェイク編では、自身が持つ“原稿で世界を改変する力”などを使って、ウェイクは精神世界とも言えるような不気味な領域を探索していく。ふたりの主人公による物語にふたつの世界、現実とフィクションが入り混じる演出と、鏡のように存在する両者の存在がプレイヤーを引き込んでいくような作風だ。

 ストーリーはもちろん、闇を光で祓うという要素を始めとする前作さながらの対比、アイテムなどのやりくりをしながら戦うサバイバル要素はいずれもクオリティが高い。さまざまな面でプレイヤーに最高の体験を用意してくれるところが、選考を勝ち抜いたゆえんなのかもしれない。

バルダーズ・ゲート3

 テーブルトークRPGダンジョンズ&ドラゴンズ』をベースにしたRPGシリーズの最新作。邪悪な種族“イリシッド”によって脳内に幼生を植え付けられてしまった主人公たちは、幼生が持つ強大な力を振るうのか、あるいは元の人間に戻るのか、その選択を迫られながら広大な世界を旅していく。

 人々との会話でプレイヤーが取れる選択肢の広さや、その行動の成否をダイスロールで決めるシステム、多種多様なキャラクターたちから主人公を好きに選んで遊べるロールプレイなど、さまざまな要素が『ダンジョンズ&ドラゴンズ』を再現している。先述のとおり会話のバリエーションは膨大で、平和的な話し合いで終わることもあれば、実力行使に打ってでることも。そうした大小さまざまな選択が細かく分岐していき、やがてエンディングに至る。そのバリエーションは1万7000通りとされ、自分だけの結末を見られる、まさにロールプレイングのゲームと言える。

 それらに加えて、複数の主人公によって変化する物語や、ターン制のもとでくり広げられる戦略性の高いバトルといった部分の評価も高い。海外ではとくに人気の高いテーブルトークRPGである『ダンジョンズ&ドラゴンズ』をビデオゲームに落とし込んでいる点、それにあたって構成された各種要素の完成度の高さが、ノミネートの決定打になったのだろう。

Marvel's Spider-Man 2

 アメコミでおなじみのヒーロー、スパイダーマンを主人公にしたPS5用アクションアドベンチャー。ピーター・パーカーとマイルズ・モラレスというふたりのスパイダーマンを操作し、ニューヨークではびこるさまざま事件に挑む。同じスパイダーマンでもピーターとマイルズではプレイスタイルは異なり、ピータースパイダー・アームを始めとするガジェットを使った技、マイルズは“ヴェノム・パワー”を使った力強い攻撃などが特徴だ。

 前作でも十分広かったニューヨークがさらに広くなり、糸を使って振り子のように移動する“ウェブスイング”にくわえ、滑空をするための装備である“ウェブウィング”によって移動がより楽しめるようになったのが印象的。PS5の強みであるロード時間の速さによって、行きたい場所へ瞬時に移動するファストトラベルも快適になってはいるが、そもそも移動自体が楽しいので機能を使うか迷いがちだ。ロード時間をほとんど挟まないことが没入感を醸し、シームレスに展開するアクションなども相まって、よく言われる“やめどきに困る”という事態が実際に起こる。

 PS5の性能を生かした没入感とテンポの良さ、のめり込むプレイヤーを受け入れるニューヨークの街並みや、スパイダーマンを操作してくり広げるバトルの数々。現行機とスパイダーマンの組み合わせだからこそ生まれた傑作と言える。

バイオハザード RE:4

 2004年発売のサバイバルホラーバイオハザード4』を元にしたリメイク作品。ロス・イルミナドス教団に誘拐された大統領令嬢を救うため、エージェントのレオン・S・ケネディがヨーロッパの村を訪れるという内容だ。

 19年越しのリメイクにあたって、画質が向上しているのはもちろんのこと、明暗や影などの表現が強化されたことにより、ホラー要素がオリジナルより濃くなっている。ストーリーの展開は一部にアレンジこそあるが、基本的には原作版を踏襲しており、村や湖、古城や孤島といった各種マップの地形も、ほぼ当時のものを再現していた。現代の技術で昔の作品を再構築するリメイクのお手本のような作品と言える。

 それだけでも十分だが、ナイフの調整も大きい。原作ではこれ1本あればクリアできると言われたナイフが、リメイク版では攻撃に加えて防御にも使えるようになった反面、耐久値が設けられている。これだけでアイテムのリソース管理の負担が増え、サバイバル要素も強くなった。弾薬の精製も追加されたが、精製するための素材をアタッシュケースに収納しなくてはならないため、そのスペースを巡って試行錯誤しなくてはならないというのもよくできた仕組みだ。

 『RE:4』は原作を尊重しながらも、物語やアクション、難易度調整などにより磨きをかけ、サバイバルホラーとアクションのバランスが取られている。ファンも新しい層も魅了した作品であり、そこが今回のノミネートにつながったのかもしれない。

スーパーマリオブラザーズ ワンダー

 「スーパーマリオブラザーズ」シリーズ約11年ぶりとなる完全新作。クッパに乗っ取られたフラワー王国を救うため、マリオたちはさまざまな敵や仕掛けが待ち受けるコースを突破していく。マリオルイージピーチ姫ヨッシーなど、操作可能なキャラクターはシリーズ最多の12人に増えた。

 本作で重要なのが“ワンダーフラワー”と呼ばれるアイテム。これを取ると“ワンダー”という現象が起こり、コースの状態が大きく変わる。土管やステージ自体が動き出したり、どこからともなく敵の大群がやってきたりと、そのバリエーションは豊富。ゴール地点にあるポールを吹き飛ばして進むことすらあり、そのワンダーを取ったらなにが起こるのか、想像もつかない。コースを遊ぶたびに大小さまざまな驚きが待っている。

 これまでに多くの作品を出している「スーパーマリオブラザーズ」シリーズだが、それでもまだまだネタの底知れなさを感じられたのが本作でもある。破天荒とも言えるギミックがありながら、コインを使った誘導を始めとする遊びやすさもあり、ワンダーという要素に振り回されるのではなく、しっかり使いこなしているという印象だ。

 ネタは出尽くしたと思われていた“2Dマリオ”の新しい可能性、任天堂の十八番である創意工夫、プレイヤーの予想を超えるギミックなど、『スーパーマリオブラザーズ ワンダー』には目を見張るところが多い。選考から外すほうが難しかっただろう。

ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム

 2017年の「The Game Awards」でGame of the Yearを受賞した『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』の続編。地下の遺跡を探索中に行方不明になったゼルダ姫を探すかたわら、リンクは各地で起こる異変などの調査のため、広大なハイラルを巡ることになる。

 本作には多彩な能力があるが、なかでも持ち上げた物をほかの物にくっつける“ウルトラハンド”と、ふたつの物体を組み合わせて武器などを作る“スクラビルド”は可能性の塊だ。船や荷車、ロボットも作れるし、2本の棒でリンクの倍以上の長さの槍を拵えたり、矢に魔物の目玉を組み込んで追尾性能を持たせたりと、例を挙げたらきりがない。能力の使いかた次第でさまざまな攻略法が生まれる。

 ハイラルの大地に加えて、今回は上空にある“空島”や地下に広がる“地底”もあって、探索の自由度は前作以上と言える。またその自由な世界にも、自由を楽しんでもらうためか細かな計らいがあって、相方とはぐれコログ族を運ぶ方法を探したり、各地の祠にある謎を解いたりしているうちに能力もなじんできて、気づくと使いこなせるようになっている。ひたすら広い世界のように見えて、実際はプレイヤーが能力を使っていろいろな要素に挑めるよう整えられており、要素に無駄がない。

 そうした作りのためか、広大なハイラルを冒険するオープンワールドとしてのおもしろさと、ギミックを使ってさまざまな仕掛けを解いていく伝統的なRPGらしい特色が見事に噛み合っていた。人によって変わる遊びの幅の広さと、それを実現してくれる緻密で自由な世界を鑑みれば、大賞の候補にもなるだろう。

 今回選出された6作品のなかから、2023年のGOTYに選ばれるのはひとつだけだ。結果は、2023年12月8日に開催される『The Game Awards 2023』で明らかになる。

(文=夏無内好)

GOTYノミネートの6作品を考察