ハロウィン』の新三部作を手掛けたデヴィッドゴードン・グリーンが「エクソシスト」に新たな魂を吹き込んだ『エクソシスト 信じる者』が、12月1日に公開を迎えた。2人の少女に憑依した悪魔との戦いを描く本作は、ウィリアムフリードキン監督による1作目『エクソシスト』(73)の直接的な続編。エレン・バースティン演じるクリス・マクニールの再登場も話題を集めている。

【写真を見る】個性豊かな作品が並ぶ!『エクソシスト』と直接的なつながりを持った作品たち(『エクソシスト 信じる者』)

これまでに多くの作品を生みだしてきた「エクソシスト」シリーズでユニークなのが、すべての作品が1作目の直接的な続編、あるいは前日譚として作られているという点。最新作の公開に向け『エクソシスト』を観直す人も多いであろういま、合わせてチェックしたい過去作をここでは紹介していく。

すべてはここから始まったホラー映画の金字塔『エクソシスト

まずは『エクソシスト』を簡単におさらいしておきたい。ワシントンD.C.近郊のジョージタウンを舞台にした本作は、少女リーガン(リンダ・ブレア)に憑依した悪魔パズズを倒すべく、メリン(マックス・フォン・シドー)とカラス(ジェイソン・ミラー)の2人の神父が悪魔祓いを行っていく姿を描く。

メリンとカラスの両神父が命を削り悪魔を退治する壮絶なラスト、悪魔に憑かれたリーガンの暴れっぷりは圧巻。撮影中の事故の噂も絶えず、“呪われた”作品としてセンセーションを巻き起こした。

リーガンに悪魔が再び取り憑く!怪作『エクソシスト2』

その4年後の1977年に公開された『エクソシスト2』は、少女リーガンが再登場するストレートな続編。パズズとの激闘から4年、メリンの死の謎を追うかつての弟子ラモント神父(リチャード・バートン)は、調査の一環で接触した少女リーガン(リンダ・ブレア)に、再び悪魔パズズが巣食っていることを確信。その最中、かつてメリンアフリカで悪魔祓いを行った少年コクモ(ジェームズ・アール・ジョーンズ)が、パズズを凌駕しうる力の持ち主であることを知ったラモントは、アフリカへと足を運ぶ。

リーガンとラモントを軸に不完全に終わった前作でのメリンの悪魔祓いを完遂させる本作は、現実と精神世界を行き来する装置によってビジョンを視るというSFファンタジー的なエッセンスやイナゴの襲来、偽リーガンの出現など、なにかとケレン味たっぷり。

そもそも前作の立役者であるカラス神父やリーガンの母クリスがまったく出てこなかったりと不自然な点も多い1作ではあるが、前作とはまったく違うベクトルの物語が展開するなんとも趣深い怪作だ。

■原作者自らが監督し、キンダーマン警部を主役とした『エクソシスト3』

そんなジョン・ブアマン監督による『エクソシスト2』の出来に納得していなかった原作者ウィリアムピーター・ブラッティがメガホンを握り、1作目の“正当な”続編として製作したのが1990年の『エクソシスト3』だ。

1990年ジョージタウンの川で手に双子座のマークが彫られた死体が発見される。解決したはずの15年前の事件と酷似するこの猟奇的殺人を追うキンダーマン警部(ジョージ・C・スコット)だったが、その後も親友のダイアー神父(エド・フランダース)らが立て続けに殺害されてしまう。

すべての殺人がカラス神父の悪魔祓い事件とつながっていることを突き止めたキンダーマンは、ある日、犯人を名乗る精神病患者のもとを訪問。そこで悪魔との戦いの末に命を落としたはずのカラス神父の姿を目にする。

ブラッティお気に入りのキンダーマンにスポットを当てた『3』は、新たな事件を通じて、世の中に絶望しつつも深い愛を持つキンダーマンの人物像を掘り下げていく。狡猾な悪魔に対するキンダーマンは、人間のあるべき姿を描いていると言えるだろう。

また、サイコサスペンスのような不穏な雰囲気や意外性抜群の恐怖描写、カラス神父の死を活かした驚きの展開など、見どころも豊富でファンが多い傑作だ。

■若きメリン神父を描いた『エクソシスト ビギニング』&『ドミニオン

そして2004年の『エクソシスト ビギニング』は、1作目の25年前、若きメリン神父が初めて悪魔と出会い、エクソシズムに傾倒していくきっかけを描いた前日譚だ。

第2次世界大戦末期、ナチスの残虐な行為を目の当たりにし、信仰心を失い世界中を放浪していたメリン(ステラン・スカルスガルド)は、流れ着いたアフリカで遺跡の発掘に加わることに。発掘隊や村の人々と親交を深め心の傷を癒していた矢先、村で自殺や殺人が相次いで発生。発掘によって解き放たれた邪悪な魂を封じ込めるべく、メリンは信仰を取り戻し、悪魔と戦っていく。

1作目の悪魔祓い中に心臓発作で亡くなったメリンを軸に、彼の信仰の揺らぎから復活までを描く本作。もともとポール・シュレイダーが監督していたが、地味な仕上がりをスタジオが気に入らず、同じ脚本で急遽レニー・ハーリン監督で作り直したいわくつきの1作だ。しかし興行的にパッとしなかったため、結局ポール・シュレイダー版も『ドミニオン』として2005年に公開。これを機に観比べてみてもおもしろいかもしれない。

■50年ぶりにクリスがカムバック !『エクソシスト 信じる者』

そして最新作『エクソシスト 信じる者』では、1作目で抜群の存在感を放ったリーガンの母クリス・マクニール(エレン・バースティン)が、キャストもそのまま50年ぶりに再登場。悪魔パズズとの望まない再会を果たし、命懸けの悪魔祓いへと挑んでいく。

12年前に妻を亡くし、一人で娘のアンジェラ(リディア・ジュエット)を育てるヴィクター(レスリー・オドム・Jr)。ある日、アンジェラと親友のキャサリン(オリヴィア・オニール)が森へ出かけたきり行方不明となってしまう。3日後に無事保護された2人だったが、その日を境に突然暴れだし、叫び、自傷行為をしたりと常軌を逸した行動を繰り返していく。

娘の異変にヴィクターはかつて悪魔憑きを目の当たりにしたクリスに助けを求め、悪魔祓いの儀式を開始。そんななか、悪魔パズズは「1人は生き残り、1人は死ぬ。どちらかを選べと…」と親たちを嘲笑っていく。

憑依された子どもを持つ経験者として物語に登場するクリス。「久しぶりね」とパズズとの再会を果たすと子どもを救うために危険に身を投じたり、親たちを励ましたりと、主役ではないものの重要なキャラクターとして物語に深みを与えていく。ちなみに今作は3部作構成ということで、今後の作品にも過去作とのつながりが出てくるのか、気になるところだ。

公開から50年経ったいまもなお最恐のホラーとして名が挙がる名作ゆえに、繰り返し続編が作られてきた「エクソシスト」シリーズ。最新作を機に、傑作から珍作まで多彩な作品が並んでいるので、ぜひチェックしてみてほしい。

文/サンクレイオ翼

「エクソシスト」シリーズの過去作をチェック!/[c] Warner Bros./ Courtesy: Everett Collection.