長らくテレビを見ていなかったライター・城戸さんが、TVerで見た番組を独特な視点で語る連載です。今回は『チャンハウス』(毎週土曜昼1:30-、フジテレビ)をチョイス

「ヤギと大悟」懐かしの勝沼ぶどう郷の思い出/テレビお久しぶり#77

■"撮られる才能"に私は恵まれていない『チャンハウス』

誰もが人生という物語の主役、というコンセプトのもと『チャンハウス』にて展開された新企画『マイメンタリー』。人生のある瞬間を撮ってほしいという希望を一般視聴者から受け取り、カメラが密着する。私は基本的に素人の登場する映像が好き(そういった番組を令和人間集と呼んでいる)なので、すかさず再生して鑑賞、画面に現れたのは筑波大学に通う34歳の医学生、穂戸田さんだ。特にテーマがあるわけでもなく、これから一体、何が始まり、この人の何が映し出されるのか、まったく見当もつかないのが素晴らしい。ワクワクする幕開けだ。

彼の経歴を辿ったあと、カメラは彼の家へと入っていく。すると彼は、部屋に貼られた花火の写真や、花火柄のネクタイ、花火柄のタオルなどを紹介しながら、花火について熱く語り始める。それまで花火のはの字も語られていなかった分、この急な展開には、まさにドキュメンタリーといった驚きが詰まっている。穂戸田さんは、筑波大学学園祭の一環として、病気で入院している子供たちのために、花火を打ち上げたいのだというが……。

まったくのいい話なので、彼の挑戦の行く末は是非本編をご覧になっていただきたい。私が気に入ったのは、気の弱い穂戸田さんが、この挑戦について少々ナーバスな心情を吐露しているとき、背後に貼られている花火のポスターがひとりでに剥がれ落ちるところ。とにかく不吉な出来事だが、その不吉さなどゆうに超えるほどの”撮られる才能”というか、たとえば私は、特にそういった才能に恵まれてはいないので、面白いハプニングなど起きないし、起きたとしてもカメラの外だ。穂戸田さんは、テレビカメラに撮られているという既に相当稀有な状況で、ナーバスな心情を吐露している最中に、たまたま自分の背後にある、画角に収まっているポスターが剥がれ落ちるのだから、出来事自体の不吉さなどメではない、これは奇跡である。

インターネットには、奇跡的な瞬間を捉えた動画が数多く出回っているが、それを見るたびに、どこか鬱屈が蓄積していく。自分には決して撮れないし、撮られないし、起こらないことの数々。出来事そのものは勿論の事、それが撮られているというのも重要な奇跡のひとつなのだ。ただ、何かが起きたときの為にと、ずっとカメラを回し続けておくのも美しくない。カメラを回したから起こった、とまで言ってしまえるほどの才能が欲しいものである。知っているでしょうか、ボウリングスローイングにミスってずっこけてしまった女性が尻もちをついて笑っていると、どこからか球が女性のもとへゆっくり転がって戻ってくる動画。もう一度見たいのだが、どう調べても出てこず途方に暮れている。ご存じの方がいたら是非教えていただきたい。皆さんの一番好きなGIF動画は何ですか?

また、これは、いつか改めて話してみたいと思うのだが、テロップに句読点(主に句点)が付くの、どう思いますか。昔からずっとありますけど、私、ちょっと苦手なんですよね。どうしてだろう。句点をつけることで、勝手にオチたことにされているような感覚があるのかもしれない。小さい頃からずっと苦手だった。目に見えて句点が存在しなくても、たとえば芸人の漫才やコントの台詞で、「あ、今の句点ついたな」と、勝手にその存在を感じ取ってしまうこともしばしば。どうも句点というのは、垢抜けない感じがしてしまうのだ。イチャモンでしかないのだが、どうしてこう思うのか、しっかり考えておきたい。

「テレビお久しぶり」/(C)犬のかがやき