ゲームセンターWILL

人類の歴史とは、それ即ち「争いの歴史」である。暴力が唾棄される存在となった昨今においては「話し合い」こそが平和的な解決法の代表格とされているが、果たしてそれは正しいのだろうか…。

現在ゲーマーの間では、東京立川市のとあるゲームセンターが打ち出した「最高の解決法」に注目が集まっている。

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■新規イベント、何かがおかしい…

今回注目したいのは、立川市ゲームセンターWILLが投稿した1件のポスト。「毎週火曜日に店内10先イベント、TWB(立川わからせバトル)を開催します」と、新規イベントを開始する旨が記載されている。

そして、その詳細については「勝利者はプレイ料金免除となります。対戦できるものであればタイトル不問です」「当日店長までお声かけ下さい。空きがあれば録画、配信も可能です。是非ご利用下さい」と、続いていたのだった。

 

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■そもそも「10先」とは?

あらゆる勝負事には「実力」などの基礎性能は勿論のこと、当日のコンディションや「時の運」が大きく関わってくるもの。そのため、格下である挑戦者がジャイアントキリングを成し遂げる…といった事態も往々にして見られる。

そうしたケースを排除して「ハッキリ白黒をつけたい」という格ゲーマーが好んで開催するのが、こちらの「⚪︎先」なのだ。同フレーズは「⚪︎本先取」の略で、前出の「10先」であれば先に10本先取した側が勝者となる。「5先」や「7先」もメジャーだが、やはり最も人気が高いのは「10先」だろう。

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また格ゲーマーの間には「分からせる」という概念が存在し、こちらは「(自分の強さを相手に)分からせる」という意味で用いられる。そのため、格ゲー界隈では「10先」というワードはラッパーの「YO」的なノリで日常的に使用されており、大会で負けた際に「10先なら負けねぇから」という捨て台詞を吐いたり、意見の合わない相手に「お? 10先で決めるか?」などの提案をするのは日常茶飯事

漫画『HUNTER×HUNTER』に登場する幻影旅団が揉め事をコイントスでおさめるように、「格ゲーマーの揉め事は10先で」という暗黙のルールが存在するのだ。

しかも、今回WILLが提案する10先イベントは「勝者は無料」というオマケ付き。全国のゲーマーからは「ワンチャンあるな」「これを使って分からせてやるか」など、血気盛んな声が相次いでいる。

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さらにはこちらのTWB、変則的なルールも認めているという。そこで今回は、WILLの店長ならびに、実際にTWBを利用した若き格ゲーマーに詳しい話を聞いてみることに。その結果、様々な舞台裏が明らかになったのだ…。

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■このゲーセン、それにしてもノリノリである

10月18日より、WILLは現在の店舗にて営業再開。

以前は、立川駅より離れた位置にあったため敬遠していたゲーマーも見られたが、現在は胸を張って「最寄駅:立川駅」と言えるほど距離が近くなり、改めて注目を集めている。また「古き良きゲーセン」を感じさせる店内の空気感も魅力のひとつだろう。

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なお店長・しぶたにさんは、今回開始したTWBは「決してWILLのオリジナルではない」ともコメントしている。かねてより都内にて、同様のルールを掲げたゲーセンが点在していたようだ。

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しぶたにさん自身も「バリバリの現役ゲーマー」であり、『中毒パズル レベルス』や『上海IV 竜門飛躍』などのゲームで、全国ランキング上位に名を連ねている。そのため、今回のTWBを「店長との一騎打ちイベント」と誤解した人も少なくない模様。

またイベント開催初日には、いきなりの「番外編」が…。

 

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■まさかの変則ルール開始

なんと14日には『ストリートファイターZERO3』にて、Z-ISMのリュウ(Zリュウ)同キャラ戦にて「中足大足戦」の5先勝負が勃発。

リュウといえばご存知、大人気タイトル『ストリートファイター』シリーズを代表する顔的存在。飛び道具波動拳、対空技の昇竜拳を筆頭に、バランスの良い必殺技や性能を備えたキャラクターである。

しかし件の「中足大足戦」では、それら必殺技の一切を封印。しゃがみ中キック(中足)、しゃがみ大キック(大足)のみで、対戦を繰り広げていくのだ。

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こちらは格ゲーの「地上戦」と呼ばれる展開の一例で、相手の中足や大足の空振りを見てから中足(+キャンセル波動)で押し返したり、大足でダウンを奪うのは『ストリートファイター』シリーズにおける様式美のひとつ。

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加えて『ZERO3』には「ガードクラッシュ」というシステムが存在し、相手の技をガードしているだけでは不利に追い込まれてしまう。そのため、同タイトルでの「中足大足戦」は後ろに下がって相手の攻撃を避ける動きと、いかに自分の攻撃をガードさせるか、という意識配分が重要となってくる。

また話を聞いたところ、こちらの5先を繰り広げたのは、20代同士であるというから驚きである。『ストリートファイター6』もリリースされた令和の世に、なぜ若者らが25年以上前のゲームで激闘を繰り広げていたのだろうか…。

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こちらの疑問に対し、5先の勝者・ヒカゲさんからは「いま立川の若手格ゲーマーの間で、地上戦・足払い戦に対する意識が高まっています」「そんな折、WILLでTWBの開催が告知され、知人に『足払い戦しない?』と提案したところ『おれも思ってたわ』と返事が来て、今回の実現に至りました」と、あまりに意識の高すぎる回答が。

ちなみにヒカゲさんはZ世代にも関わらず、日頃は1994年稼働のタイトル『スーパーストリートファイターIIX』(エックス)をメインにプレイする、良い意味で「時代に逆行した」格ゲーマーである。

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eスポーツ」という言葉が世に浸透し、オンライン対戦が主流となり、ビデオゲームという存在が「趣味」の枠を超えて世の中に認知されていった昨今。それ自体は喜ばしいことかもしれないが「ゲーセン」という文化を愛好する人々の中に、拭えない違和感が存在するのも事実だろう。

ゲームセンターWILL

そんな古のゲーマーたちは、ぜひWILLにてライバルを「わからせて」みてほしい。

 

【店舗詳細】

ゲームセンターWILL

ゲームセンターWILL」

東京都立川市曙町2-23-1 フタバソシアルビル7階

 

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■執筆者プロフィール

秋山はじめ:1989年生まれ。『Sirabee』編集部取材担当サブデスク

新卒入社した三菱電機グループのIT企業で営業職を経験の後、ブラックすぎる編集プロダクションに入社。生と死の狭間で唯一無二のライティングスキルを会得し、退職後は未払い残業代に利息を乗せて回収に成功。以降はSirabee編集部にて、その企画力・機動力を活かして邁進中。

X(旧・ツイッター)を中心にSNSでバズった投稿に関する深掘り取材記事を、年間400件以上担当。ドン・キホーテハードオフに対する造詣が深く、地元・埼玉(浦和)や、蒲田などのローカルネタにも精通。

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