へずまりゅう氏が、新幹線で座席を2席占有しているとも取れる写真を投稿。これに対しては様々な意見が寄せられましたが、そもそも2席分の料金を払えば、この行為は認められるのでしょうか。

根拠は運送約款に

元・迷惑系ユーチューバーへずまりゅう氏が2023年11月末、自身のX(旧Twitter)へ新幹線でのトラブルについて投稿。添えられた写真と内容からは、座席を2席占有しているようにも見て取れ、乗客が車掌へ申告したことで喧嘩になったとしています。

これにはSNSも賛否両論。「場所を取りすぎ」「迷惑だ」という意見のほか、「体が大きければ仕方ない」「2席分のチケットがあれば問題ないのでは」というコメントもいくつか見られました。実際、荷物を置きたいからといった理由で隣席分の指定席券を購入し座席を確保することは、可能なのでしょうか。

結論をいうと、この行為は基本的に認められていません。「しっかり2席分のお金を払うのだからOKなのでは」と思うかもしれませんが、きっぷの使い方などを定めた旅客営業規則(運送約款)を見ると、例えばJRでは以下のような記述があります。

【第147条第5項】
同一旅客は、同一区間に対して有効な2枚以上の同種の乗車券類を所持する場合は、当該乗車については、その1枚のみを使用することができる。同一旅客が、同一区間に対し有効な2枚以上の指定券を所持する場合についてまた同じ。

例えば、東京から大阪方面へ向かう東海道新幹線に乗車するとします。2人掛け席のE席(窓側)と、その隣のD席(通路側)あわせて2席を予約し、2枚の新幹線指定席特急券を持って乗り込んだとしても、E席に座ればD席の指定席特急券が、同じくD席に座ればE席の指定席特急券が、それぞれ無効になるのです。

2席占有OKの列車あったよね…?

近畿日本鉄道東武鉄道小田急電鉄など、有料特急列車を運行する各私鉄も、旅客営業規則(運送約款)にはJRと同様のことが記載されています。なお例外として東武鉄道が2021年、ソーシャルディスタンス確保を目的に期間限定で、特急「りょうもう」などで隣席を小児特急料金で同時購入可能としたほか、他社でもツアーによる団体列車で、2席以上の占有プランを設定したケースがあります。

いずれにせよ指定席券を2枚購入しても、原則ひとりで同時に使える指定席は1席だけ。残り1席は空いた状態とみなされ、ほかの乗客が座る可能性は十分にあるのです。そもそも、ひとりで指定席を複数占有するということは、本来ならばほかの乗客が座れるところをそうはさせないわけですから、社会通念上も問題があるでしょう。

ただし、「1席」ではなく「1室」単位で販売される個室は異なります。例えば、寝台特急サンライズ出雲・瀬戸」に設けられている2人用のB寝台個室(サンライズツイン)は、ひとりでも利用できます。その場合ひとり分の乗車券のほか、ふたり分の特急券・B寝台券が必要です。

また前出の団体列車のように、車両をまるごと貸し切る場合も、個室のケースと同様です。例えば力士たちが新幹線で集団移動する「相撲列車」では、力士の体格の観点からも隣り合う2席を占有すべく、座席間のひじ掛けを収納して座ることもあるようです。

特急列車のイメージ(乗りものニュース編集部撮影)。