ロアルド・ダールの名作児童文学を原作に、めくるめくファンタジーの世界を映像化した映画『チャーリーとチョコレート工場』。ジョニー・デップ演じた工場長ウィリーウォンカの若き日を描く『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』の公開を記念して、同作に出演した大人キャストたちの今をご紹介しよう。

【写真】『チャーリーとチョコレート工場』とのギャップがすごい! 年齢を重ねた大人キャストたち

■すでに亡くなっているキャストも

 世界中の大人と子どもに大人気のウィリーウォンカ製チョコレート。ゴールデンチケットを手にした5人の子どもが、これまで閉ざされてきた秘密のチョコレート工場に招待されるが、そこには、想像を超えるファンタジーな世界と、思いもよらぬ大冒険が! 選ばれし5人の子どもたちもさることながら、大人のキャラクターたちも皆キャラの立った個性派ぞろいだ。

デヴィッド・ケリー(没)/ジョーおじいちゃん

 むかしウォンカの店で働いていたというジョーおじいちゃんチャーリー一家のストーリーテラーで、チョコレート代をへそくりからこっそり出してくれた夢追い人。寝たきりだったはずなのに、チケット当選と聞いて華麗なステップで踊り出し、工場見学の保護者にも名乗り出る、実は一番のクセモノかもしれない人物。演じたデヴィッド・ケリーは、アイルランド出身で、コメディーやエキセントリックな演技で知られる。本作に出演後もマシューヴォーン監督作『スターダスト』などに出演したが、2009年に俳優業から引退。2012年に82歳でこの世を去った。

★ジェームズ・フォックス/ベルーカの父親

 金に物を言わせてチョコレートを買い占め、愛娘のためにゴールデンチケットを手に入れたベルーカの父親ソルト氏。イギリスナッツ工場を経営し、チョコレート工場では経営者らしい一面もみせる。すべてを金で解決しようとするが、ただでさえ現実離れしたウォンカに通じるべくもなく…。ソルト氏を演じたのは、両親はエージェントと女優、きょうだいや子どもたちも業界人というイギリスの芸能一家出身のジェームズ・フォックス。本作出演後も映画やドラマで活躍し、ガイ・リッチー監督の『シャーロック・ホームズ』やドラマ『ダウントン・アビー』『ロンドンスパイ』などに出演。今年5月で84歳となり、最近は仕事を控えている様子。

★ミッシー・パイル/バイオレットの母親

 マーシャルアーツチャンピオンで競争心の塊、ガムかみレース(?)でも常にトップを狙っているバイオレット。娘とおそろいのジャージに身を包む母親も娘に負けず劣らず自己顕示欲高めで、娘の取材中に自分の功績を入れ込んでくる押しの強さの持ち主。演じたミッシーは米テキサス出身で、『チャリチョコ』公開当時は33歳。その後も映画やドラマで活躍し、その数なんと160本以上! 『ゴーン・ガール』や『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』、ドラマ『メンタリスト』など、日本で人気の作品にも出演しているので、どこかで見かけたことがあるかもしれない。また、カントリー・ロックバンドSmith & Pyleを結成し、2008年には『It's OK to Be Happy(幸せになってもいいんだよ)』でアルバムデビュー。あのステージママからは想像できない控えめなタイトルだった。

★アダム・ゴドリー/マイクの父親

 ゲーマーでデータ至上主義、何かと一言多いマイクの父親で、好戦的な息子に比べて割と常識的、実は高校の地理教師だというティービー氏を演じたのは、一癖キャラでおなじみの演技派俳優アダム・ゴドリー。『ブレイキング・バッド』では、主人公ウォルターの元親友で、会社と恋人を奪ったエリオット・シュワルツを演じてクセモノ感を発揮。『THE GREAT ~エカチェリーナの時々真実の物語~』では、皇帝ピョートルに莫大な影響力を持つサムサ大主教を怪演。他にも『SUITS/スーツ』や『アンブレラアカデミー』『メディア王 〜華麗なる一族(原題:サクセッション)』など話題のドラマに出演。本作と同じロアルド・ダール原作の『BFG:ビッグフレンドリージャイアント』や『博士と彼女のセオリー』など映画にも出演。また、舞台でも活躍し、英米演劇賞の最高峰、ローレンスオリヴィエ賞とトニー賞の候補にもなっている。

オーガスタスの母&チャーリーの両親は?

フランツィスカ・トローグナー/オーガスタスの母

 ドイツの肉屋の息子で、いつも口をチョコレートまみれにして頬張っているぽっちゃり男子オーガスタ。どこまでも過保護な母を演じたのは、同じくドイツ出身のフランツィスカ・トローグナー。その後もドイツの映画やドラマで活躍していたもが、今年69歳を迎え、この数年は活発に活動を行っていない様子。

★ノア・テイラー/バケット氏

 チャーリーの父親で、歯磨き工場をクビになったのに、息子に心配をかけまいとオブラートに包んで話す優しいバケット氏。演じたノア・テイラーは主にイギリスで活躍する俳優で、『ゲーム・オブ・スローンズ』では、ジェイミー・ラニスターの手を切り落としたボルトン家の家臣ロックを演じ、『ピーキー・ブラインダーズ』では、主人公トーマス・シェルビーらと敵対するギャング王サビーニを演じたのが記憶に新しい。どちらも、バケット氏をイメージしていると見逃してしまうのでご用心を。なお、『パディントン2』でも囚人を演じているが、こちらはひょうきんな役どころ。

ヘレナ・ボナム・カーター/バケット夫人

 野菜ばかりのスープで家族のお腹を満たそうと奮闘する、チャーリーの優しい母バケット夫人を演じたのは、ティム・バートン監督とプライベートでもパートナーだったヘレナ・ボナム・カーターバートン作品ほか『ハリー・ポッター』シリーズなどに出演し、『英国王のスピーチ』ではアカデミー賞助演女優賞にノミネート、『ザ・クラウン』ではエミー賞にノミネートされるなど、本作OB/OGの中でも輝かしい活躍を見せている。この後も待機作が4本控えるほか、プライベートでも21歳年下の学者と交際中と、忙しくしているようだ。

 最後におまけでウンパ・ルンパを演じたディープ・ロイをば。ケニア出身のディープは俳優ほか、パペット使いやスタントマンとしても活躍し、本作出演後は、クリスパイン主演の映画『スター・トレック』シリーズなどに出演している。俳優としては、2019年を最後に活動を休止しているようだが、現在TikTokで活躍中。フォロワーは執筆現在約75万人もいて、チョコレート工場(ウォンカのではない)を訪ねた動画は180万ものいいね!を獲得している。唯一無二のシュールな世界観を作り出し、大ヒットを記録した『チャーリーとチョコレート工場』が、今なお世界中で愛されているのは、こんなところにも表れているのかもしれない。(文:寺井多恵)

映画『チャーリーとチョコレート工場』(2005)に登場した大人たちは今…?  写真提供:AFLO