阿部寛主演のドラマ25「すべて忘れてしまうから」(毎週金曜深夜0:52-1:23、テレ東系/ディズニープラスで配信中)の第8話「その嘘には値打ちがあるよ」が、12月1日に放送された。ハロウィーンの夜を最後に“M”(阿部)の前から姿を消した恋人“F”(尾野真千子)と、およそ半年の月日が流れ、意外な場所で再会を果たす。(以下、ネタバレを含みます)

【写真】”F”(尾野真千子)も姉(酒井美紀)も、時間を置いたことで少し冷静に話せるようになった

■ミステリアスでビタースイートなラブストーリー

本作は、作家・燃え殻の同名エッセーを原作に、国内トップクリエーターの岨手由貴子、沖田修一、大江崇允が監督・脚本を手掛けた話題作。ハロウィーンの夜、5年間付き合ってきた恋人が失踪した。ミステリー作家“M”は、姿を消した恋人を探し始めるが、人々が語る恋人は“M”の知らない顔を持っており、やがて驚きの秘密が明らかになっていく。

阿部寛尾野真千子Chara、渡辺大知、宮藤官九郎らが集結

流されるままに生きる、そこそこ売れっ子の主人公・ミステリー作家“M”を演じるのは阿部。物語の大きな鍵を握る“M”の恋人・“F”役を尾野、“M”の行きつけのBar「灯台」のオーナーカオル役をChara、“M”の担当編集者・澤田役を渡辺大知、Bar「灯台」で働く料理人・フクオ役を宮藤官九郎が演じる。

また、同じくバーで働くアルバイト・ミト役に鳴海唯、目的を抱えながらBar「灯台」に通う青年・泉役に青木柚、Bar「灯台」の常連客役に岩谷健司、嶺豪一、ぼくもとさきこ、ニクまろ、“M”の行きつけの喫茶「マーメイド」のオーナー・マンバ役に見栄晴、血眼で“F”を探す“F”の姉役に酒井美紀、“F”の失踪後“M”の前に現れる謎の美女役に大島優子、“F”の祖母役に草笛光子ら、個性に満ちた豪華キャストが集結。

■いろんな“嘘”について考える

タイトルが「その嘘には値打ちがあるよ」というだけあって、今回はいろんな“嘘”が登場する。

まずはオープニング。“M”が演芸場で“猫消失”マジックを見ながら、小学生の頃に子猫をドラム缶に閉じ込めてしまったことを思い返していた。自宅では飼えないので、友人と餌を持ち寄って空き地のドラム缶の中で飼うつもりだった。

ドラム缶から逃げないようにベニヤ板の蓋をかぶせたところまでは記憶にあるが、それ以降の記憶がなかった。「子猫を殺してしまった」と長年思い続けていた“M”。数十年後、その友人と再会した時に子猫の話をすると、「かわいそうになって、その夜、逃してやった」と聞かされた。

罪悪感から解放された“M”だったが、実のところ、子猫を逃してあげたのは“M”の家族だったことを知る。“M”が罪悪感に耐えきれず、親に泣きついたらしい。妹はそのことをよく覚えていた。

この友人の“嘘”は、妹の夫が言っていたように“M”の罪悪感を軽くしようと思ってついた嘘なのだろう。しかし、その友人は“M”と同じように「子猫を殺してしまった」という罪悪感を抱いたことはなかったのだろうか?

■澤田「正直ホッとしました。これで彼女の嘘に付き合わなくて済むので」

続いての“嘘”は、担当編集者の澤田。澤田には既婚者の彼女がいる。つまり不倫。Bar「灯台」で呑んでいた“M”のところにやってきて、「彼女の夫に知られてしまって…」と事情を話し、飼い猫を預かってほしいと“M”にお願いした。

澤田から相談を受けていた“M”は、「お互い面倒がなくていいんじゃない」と軽い気持ちで答えてしまっているので、多少なりとも責任は感じているのかも知れない。

結局、澤田は彼女ともう二度と会わないという一筆を書かされ、慰謝料を支払った。「なんか正直ホッとしました。これで彼女の嘘に付き合わなくて済むので」と、嘘から解放されてホッとした様子。

■フクオ「もうちょっと誰かの嘘に付き合ってあげたら?」

そしてフクオ。泉から“息子”だと告白され、フクオはそれを受け入れていたが、実はフクオは実の父親ではなく、それは分かっていた。

「本当の父親、俺の友達なんだけど、どうしようもないヤツなんだわ。だけど、アイツの母親がそういう嘘をついたなら、俺が父親になっちゃおうかなって思って」と、喫茶店で“M”に明かすと、驚いた“M”は「そんな嘘ついて大丈夫なの?」と心配するが、「誰かが代わりになれるならいいじゃん。その嘘には値打ちがあるよ。その嘘にずっと付き合うからさ」と返すフクオ。嘘を嘘だと分かっていながら、その嘘を受け入れる。それはフクオらしい嘘に対する対応のような気がする。そんなフクオに「もうちょっと誰かの嘘に付き合ってあげたら? それはそれでうれしいじゃない」と言われた“M”は何か気付きがあったのではないだろうか。

■“F”「たくさんお金使って時間潰したけど、なんか苦しかった」

“F“は姉から「元気? お金のことはもう良いから。心配なので連絡ください。」というメッセージを受け取り、会うことに。

「半年も何してたの?」と姉に聞かれると「パッーっと散財して、怖くなって請求額確認して、また高級ホテル泊まって、求人情報検索して、みたいな。何やってたんだろうね。たくさんお金使って時間潰したけど、なんか苦しかった」と“F”は告白。

「ごめんね」と姉に謝る“F”。姉の方も時間がたって冷静になったような印象を受ける。“F”は家のリフォーム代を手渡そうとするが拒否した。

“F”は「後悔しない? あの時受け取っておけばって」と祖母に言われた言葉をそのまま姉に投げかけたが、姉は「後悔しないと思う。もし受け取ったらあんたが私を裏切ったことを忘れちゃいそうだから」と。

一見すると冷たい言葉に聞こえるかも知れないが、妹とのつながりをこういう形でも持っておきたいという姉の思いなのかも知れないと思った。それに、姉も一つ嘘をついている。リフォーム代全額ではないと思うが、“M”からカツアゲするように数十万円受け取っていることを“F”には言っていないはず。

そのタイミングで街頭ビジョンに“M”の姿が映し出され、それを見て姉妹で爆笑している姿を見たら、もうわだかまりがないように感じる。

■浅草の演芸場で、思いもよらないシチュエーションで再会を果たす

浅草の演芸場でマジックショーを見ている“M”。見ている客は3人。そんな中、「誰かお客さんに次の演目のお手伝いをしてもらいましょう」とマジシャン(嶋田久作)が呼びかけると、一人はお手洗いに行くためなのか立ち上がり出ていった。もう一人は眠ったまま。必然的に“M”が手伝うことになった。

手伝ったマジックは箱を使ったもの。身動きできない状態の中、演芸場のドアが開き、一人の客が入ってきた。それが“F”だった。久しぶりの再会なのにシュールなシチュエーション。“F”は笑いを抑えることができなかった。

この後、“F”は姿を消した理由を正直に話すのかも知れないし、嘘をつくかも知れない。しかし、フクオの言葉「誰かの嘘に付き合ってあげたら」「その嘘には値打ちがあるよ」を聞いた後なので、“M”も“F”の言葉を本当でも嘘でも受け入れてあげるのではないだろうか。

“F”との再会を果たし、物語もいよいよ終盤へ。以前とは違う関係性になっていると思うので、2人がどういう決断をするのか気になるところだ。

◆文=ザテレビジョンドラマ部

いろいろな嘘を聞き、いろいろな受け取り方を知った”M”(阿部寛)はついに”F”と再会/(C)テレビ東京/(C)2022 Disney and related entities