広島地検に勤めていた当時29歳の男性検事が2019年に自殺したことについて、法務省が過重労働が原因だったとして、9月22日付で公務災害と認定したことが、遺族代理人への取材でわかった。

弁護士ドットコムニュースが12月5日法務省に事実関係や、他にも検事の自死に関する公務災害があるかどうかを問い合わせたところ、担当する同省大臣官房は同6日、公務災害認定は事実とした上で「パワハラの有無、他の同様事例についての回答は差し控える」とした。

遺族代理人の橋詰悠佑弁護士によると、遺族は長時間労働のほか、上司によるパワハラが原因だとも訴えていたが、法務省からは当時の次席検事の言動等に対する評価はなされなかったという。

遺族は「このような対応で、本当に再発防止が期待できるのか、疑問といわざるを得ない」とコメントしており、今後は国家賠償請求も含めて活動する予定だという。

●遺族側「再発防止策は不十分」

公務災害の申請は2021年11月で、認定まで約2年かかった形。死亡した男性の父親と、広島地検時代の同僚だった橋詰弁護士らが代理人として2022年8月に記者会見し、法務省に調査の進展などを求めて要望書を提出していた。

【会見当時の記事】若手検事の自殺、上司による「修習生以下」などのパワハラ発言を訴える父「事実知りたい」

遺族側は2023年11月9日法務省、広島地検、広島高検の担当者らから、男性が死亡したことについて「客観的な業務内容、時間外勤務の状況、その他の事情を踏まえると公務起因性が認められた」と説明されたという。

遺族側によると、男性は地検の入退館記録やPCのログイン記録などから計算すると、亡くなる直近6カ月では時間外労働が平均80時間以上あったほか、100時間を超える月もあったという。

この点について、検察庁内部で勤務時間のPCログとの突き合わせを行うなど、一定の改善がなされていると説明されたものの、橋詰弁護士は「PCを利用していない勤務時間の把握や、超過勤務過多となった際の対応については、必ずしも十分ではないとの印象をもたざるを得ない内容だった」としている。

●「パワハラについては言及なし」

また、遺族側が訴えてきたパワハラへの調査には言及されず、当事者とされている2人(当時の次席検事、公判部長)からコメントはなかった。

遺族側はLINE画像などをもとに、男性は亡くなる直前に知人に「上司から机をたたきながら『司法修習生以下だ』という趣旨のことを言われた」と明かしており、法務省は環境改善をおこなわなかったと訴えている。

遺族は会見で「広島高検には(机をたたいた叱責)行為自体はあったと認めたものの『死亡した原因はわからない』と口頭で説明され不信感が募った」と述べていた。

橋詰弁護士は「次席検事の言動等について、細かな経緯、理由、業務上の必要性等に関して、本人の話等も含めて調査、評価がなされることを期待していたが、回答が得られなかった」としている。

●遺族コメント全文

「事案から約4年が経過しているが、気持ちとしては何も変わっていない。子どもは、検察官という仕事について、起きたことについて向き合い、原因を深く掘り下げ、相手にしっかりと納得させて完結する仕事である、ということをよく言っていた。子どもが誇りを持って就いた職場で、二度と同じことを起こしてはならないという気持ちであるし、そのために、徹底的な原因究明とそれを前提とした再発防止策の策定は不可欠と考えている。今回、法務省からは、公務災害の認定に当たって必要な点のみを認定したとの理由から、叱責を受けたことに対する評価には立ち入っていない旨説明を受けたが、このような対応で、本当に再発防止が期待できるのか、疑問といわざるを得ない」

【編集部注】法務省からの回答を追記した(2023年12月6日午前11時45分)

29歳検事の自殺を公務災害と認定、パワハラには触れず 遺族「再発防止として疑問」