2023年11月24日に産声を上げた、東京の新たなディスティネーション(旅行目的地)『麻布台ヒルズ』。本記事では、その中核を担う文化施設である『森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボボーダレス(以下、チームラボボーダレス)』の最新情報をお届けする。

同施設はお台場から麻布台ヒルズへ移転し、このあと2024年2月上旬にオープンを予定している。多数の新作をラインナップし、さらに魅力的になった新チームラボボーダレスの見どころの一部を、オープンに先駆けて少しだけ紹介しよう。

いざ、トキメキの麻布台ヒルズへ……

「神谷町」駅を出て、ガーデンプラザA・B間にのびる桜麻通りを望む

「神谷町」駅を出て、ガーデンプラザA・B間にのびる桜麻通りを望む

チームラボボーダレスは、麻布台ヒルズのガーデンプラザB B1に所在している。写真左手の建物の地下1階だ。

Entrance Azabudai エントランス「森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボボーダレス」東京 (C) チームラボ(オフィシャル提供)

Entrance Azabudai エントランス「森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボボーダレス」東京 (C) チームラボ(オフィシャル提供)

エントランスには、錯視効果を用いた堂々たる施設ロゴが。写真に撮るとまるで後から文字入れをしたようだが……実際には「止まれ」の路面標示のように、ニューンと引き伸ばされた大きな文字が壁・天井にペイントされている。目に入っているものと認識しているもののズレを意識させる、導入にぴったりのお出迎えである。

連続してゆくアート

チームラボ《花と人 - Megalith Crystal Formation (work in progress)》

チームラボ《花と人 - Megalith Crystal Formation (work in progress)》

今回公開されたインスタレーションは2作品。どちらも世界初公開となる新作だ。まずは《Megalith Crystal Formation》と名付けられた空間へ。暗闇の中、誕生と死滅を繰り返す花々のデジタル映像が、上下左右に反射しては広がっていく。まるで万華鏡の中に入ったような感覚だ。

チームラボ《花と人 - Megalith Crystal Formation (work in progress)》(部分)

チームラボ《花と人 - Megalith Crystal Formation (work in progress)》(部分)

映像はあらかじめ出来上がったものではなく、プログラムによってリアルタイムに生成されるものだという。人々が近くで動きまわると花々は散っていき、じっとしていると花々は普段より多く生まれる。鑑賞者の動きに影響を受けて変化し続ける作品なので、全く同じ瞬間は二度と来ない。

チームラボ《Black Waves - Megalith Crystal Formation (work in progress)》

チームラボ《Black Waves - Megalith Crystal Formation (work in progress)》

真っ赤な花々をしばらく見つめていると、やがて花を呑み込むように波が押し寄せてくる。《花と人》から《Black Waves》へ、作品が移り変わる瞬間だ。

この《Megalith Crystal Formation》の空間には、様々な「境界のないアート」群が、部屋から部屋へと、館内を移動しながら入ってくるのだという。「境界のないアート」とは、終わりも始まりもない、と言い換えることができるだろう。チームラボボーダレスの“境界のないひとつの世界の中で、さまよい、探索し、発見する”というコンセプトを体現した、思索的な展示である。

ぷるんぷるんの光?

チームラボ《Bubble Universe: 実体光、光のシャボン玉、ぷるんぷるんの光、環境によって生み出される光》

チームラボ《Bubble Universe: 実体光、光のシャボン玉、ぷるんぷるんの光、環境によって生み出される光》

ふたつめの新作インスタレーションは《Bubble Universe:実体光、光のシャボン玉、ぷるんぷるんの光、環境によって生み出される光》。チームラボ代表の猪子寿之氏から、作品について聞くことができた。

「これは《Bubble Universe》という作品です。中に入るとですね、自分が何を見ているのか、そして何を見たらいいのか、フォーカスがどこに当たっているのか、どこに当てていいのかもわからないような、新しい体験のできる空間となっています。」

《Bubble Universe:実体光、光のシャボン玉、ぷるんぷるんの光、環境によって生み出される光》のタイトルの通り、ひとつひとつの球体の中には物理的な実体のある光だけでなく、さまざまな光が入り混じっているのだという。中でも、気になる響きの“ぷるんぷるんの光”について、猪子氏はこう続ける。

「上空の方だと分かりやすいんですが、球体の真ん中に白いぼんやりしたゼリー状のような光があります。今我々はいったん“ぷるんぷるんの光”って呼んでいますが……違う名前に変えた方がいいのもしれないですけど(笑)。そのゼリー状の光は、触るとぷるんぷるんするんです、上の方にあるので触れないんですけど。また別の作品で、もっと近くにぷるんぷるんの光を感じられる作品があるので、そちらも楽しみにしていただければと思います。」

チームラボ《Bubble Universe: 実体光、光のシャボン玉、ぷるんぷるんの光、環境によって生み出される光》

チームラボ《Bubble Universe: 実体光、光のシャボン玉、ぷるんぷるんの光、環境によって生み出される光》

鑑賞者が球体のそばでじっと立ち止まると、球体は強く輝きだし、その光が隣へ隣へと伝播していく。やがて一筆書きのように、すべての球体を巡っていく光の軌跡になるのだという。自分から生まれた光と誰かから生まれた光が交差し、空間を満たしていく幻想的な空間だ。

チームラボ《Bubble Universe: 実体光、光のシャボン玉、ぷるんぷるんの光、環境によって生み出される光》

チームラボ《Bubble Universe: 実体光、光のシャボン玉、ぷるんぷるんの光、環境によって生み出される光》

「光のシャボン玉と言いますが、光が球体になることは絶対にないので。物理空間にはそういうものは存在しなくてですね、ではどこに存在するかというと、我々の認知上の世界なんです。だからこれは、物理世界ではなく、我々の認知世界に出現している光の彫刻とも言えるかもしれないですね。」(猪子氏)

ちなみに最近のスマートフォンのカメラには、AIによって空間に最適なモードで撮影できる機能が搭載されているが、猪子氏曰く「ここはAIも未知の空間らしく、なかなかいい写真が撮れない」そう。アートとの対話とともに、いかにしてベストショットを生み出すかにも気合が入りそうだ。

2月が待ちきれない

チームラボ《Bubble Universe: 実体光、光のシャボン玉、ぷるんぷるんの光、環境によって生み出される光》

チームラボ《Bubble Universe: 実体光、光のシャボン玉、ぷるんぷるんの光、環境によって生み出される光》

『森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボボーダレス』は、2024年2月上旬にオープン予定。今回は2点の美しい新作がお披露目されたが、これはまだまだ見どころのほんの一部分に過ぎない。大いに期待しつつ、生まれ変わったチームラボボーダレスがヴェールを脱ぐ日を待ちたい。


​​文・写真=小杉美香 写真(一部)=オフィシャル提供

チームラボ《Bubble Universe: 実体光、光のシャボン玉、ぷるんぷるんの光、環境によって生み出される光》