小池栄子主演の水曜ドラマ「コタツがない家」(毎週水曜夜10:00-11:00、日本テレビ系Huluにて配信)が現在放送中。同作は、小池演じる会社社長兼カリスマウエディングプランナーの深堀万里江が、夫・息子・父という3人のダメ男を養う“笑って泣けるネオ・ホームコメディー”。小池は、同作で民放ゴールデン・プライム帯連続ドラマ初主演を果たしている。

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■令和の“笑って泣けるネオ・ホームコメディー”が誕生

脚本は、「俺の話は長い」(2019年)で向田邦子賞を受賞した金子茂樹。「俺の話は長い」のスタッフチームが再びタッグを組み、新しい家族の形を見出していく。

廃業寸前の売れない漫画家の夫・深堀悠作を演じるのは吉岡秀隆。また、アイドルを夢見るもオーディションに脱落し進路に迷う息子・深堀順基役に作間龍斗(HiHi Jets)が配役。そして、熟年離婚で一人になり万里江に引き取られる父親・山神達男を小林薫が演じている。

WEBザテレビジョンでは、同作のプロデューサーを務める櫨山裕子氏にインタビューを実施。台本の作り方やキャスト陣の魅力、撮影裏話などについて話を聞いた。

■“みんなが仲良くなれるものがない”=“コタツがない”

――「コタツがない家」というタイトルはどういった経緯で決まりましたか?

脚本家の金子くんと、毎回楽しい家族げんかを描こうというのが第一にあり、それと並行してそれぞれの人物設定を考えていく中で、男性陣が3人ともクズだということになりました。そのクズ3人と主人公が家の中でしょっちゅうトークバトルをしているドラマにするとなったときに、「俺の長い話」もそうだったのですが、ホームドラマには必ずコタツがあるなと思ったんです。今回はそういう“みんなが仲良くなれるものがない”ということを何かで表現できないかと考え、このタイトルになりました。

――台本の作り方やこだわりを教えてください。

今のご家庭ならではの問題や家族間のトラブルといったものを描こうとしています。毎話大きなけんかをしていますが、あれがどういうけんかなのかということをまず先に考えています。例えば、第4話でいうと、「子育てをしていると思っている母親と、全然構われていないと思っている子供のけんか」みたいな。そこが面白くなるかどうかを一度検証して、それでいこうとなれば、そこに向かってどうアプローチしていくかという作り方をしていますね。

とにかく「この回のテーマとはなんぞや」といったところで、主人公と、夫、息子、父親の関係値ならではの仲にどういう問題があるのかを探す感じです。見てくれた人たちに「こういうことってあるよな」と思ってもらえるかどうか、いろいろ考えております。

――家族のバトルが始まる合図でゴングの音がとても効果的に使われていますが、どういった経緯でこの音を鳴らすことになったのでしょうか?

企画の最初の時点では、30分2本立てという説もありました。その回ごとにけんかがあって、それぞれ勝ち負けを決めよう、プロレスみたいな作りはどうだろうという案があり、そのときにゴングという発想が出ました。結局、30分2本立てというのはやめてしまったのですが、けんかが始まるということをどれだけエンターテインメントとして見せていけるかという議論の中で、ゴングの音は残すことになりました。

小池栄子に元来備わる“座長感”

――撮影が始まって改めて感じた小池栄子さんの魅力について教えてください。

お付き合いが長いのですが、姉御肌でみんなを盛り上げてくださり、元々そういった座長感を持っている方なので、主役だからといって何かが変わるということは全くないように思います。ご本人の心の中ではもっとドキドキしているかもしれないですが、全然そんなそぶりはなく平常心でやっているように私には見えています。脚本家の金子くんは小池さんに叱られたいと言ってました。

――吉岡秀隆さん、作間龍斗さん、小林薫さん含む、撮影現場の雰囲気はいかがですか?

吉岡さんは、本当に少年のようです。もちろんお芝居もそうなのですが、映っていないところでも物静かな少年のような人で、すごく不思議な“希少生物”みたいな感じですかね。お芝居していないときは、悠作の静かなバージョンという感じで、そんなに役柄と変わらないかもしれないです。ニコニコして、じっと静かに人の話を聞いています。

作間くんもちょっと似た感じかな。いつも、薫さんと小池さんがバーっと喋って、作間くんと吉岡さんがニコニコ参加しているみたいな、そんな感じです。

■こだわりは「4人のグループショットをどう面白く撮れるか」

――会話劇のシーンで気を付けていることやこだわりがあれば教えてください。

まずドライリハーサルと言ってカメラがないところで動きを決めていきます。動きをつけながらせりふを言うと、また少しずつ変わってくるんですよ。それを4,5回やって固めたら、そこからはなるべく一発撮りできるようにカメラのアングルなどを決めていきます。

お芝居ができていれば、実はそんなにカット割りをする必要はなくて、とにかく4人が画面に入っていればいい。やっぱり今作は面白いリアクションが大事なドラマじゃないですか。喋っている人だけ撮っているとそれが全然伝わらないので、とにかく4人のグループショットをどう面白く撮れるかということに尽きると思います。

視聴者に見てもらうという意味では、喋っている人ではなくてそれを聞いている人たちの顔が実は一番面白いわけで、そこをどういうふうに作っていくのかということが他のドラマと違うところかもしれないですね。

――撮影中のハプニングや大変だったシーンなど、裏話があればお聞かせください。

家族げんかのシーンは時には15ページを超えるすごく長いシーンなのですが、いけるところまで一発撮りを目指します。そのためには、せりふを覚えてこないと話にならないので、出番を待っているときでもみんなずっとせりふ合わせをしています。スタジオに入るまでにせりふをとにかく完璧に入れるというのが、家族みんなの命題ということですかね。

あとは、前室に白板があるのですが、そこで絵文字しりとりをしています。気付いた人が絵を描いていくのですが、この間ついにそれが完成しました。コタツの絵から始まってコタツの絵に戻るというのを何列でできるかやっていて、みんなで通りすがりに描いて楽しんでいました。

■「母親冥利に尽きるのがすごくよく分かる」

――放送開始後の視聴者からの反響についてはどのように感じていらっしゃいますか?

思ったより、「クズ男3人に腹が立つ」という感想があって、クズ男を笑うドラマなんだけどなと思いながら、そこはちょっと意外でした。旦那が働かないとか、息子が生意気で失礼な口を利くとか、そういうところをネガティブに反応される方もいて。実際にそういう環境が身の回りにあったりすると、笑うより先に腹が立つのかなと思ったりもしました。

――これまでの放送回(第7話)で、特に印象的だったシーンを教えてください。

第4話で、万里江が順基と大げんかして、翌朝バスの中で謝られ、降りていった順基が通り過ぎるバスに向かって小さく手を振るシーンが、私はすごく好きでした。その後の万里江の顔もすごく好きだったし、自分の息子だけどちょっとドキッとするみたいなことも含めて、大人になったなと思えるシーンでした。

私も息子がいるので、“昨日の晩散々けんかした息子がちょっと優しい”みたいなあの感じが、母親冥利に尽きるのがすごくよく分かるんですよね。それってやっぱり母親にしか体感できないことで、母親と息子の関係値がすごくビビッドに出ていてよかったなと思いました。

――最後に、最終回に向けた見どころと視聴者へのメッセージをお願いします。

第7話の終わりで達男に「娘と離婚してくれないか」と言われた悠作が、どんな選択をするのか。そして、離婚を考えている悠作に対して、万里江自身が悠作と結婚している意味をちゃんと考え、どういう答えを出すかが見どころだと思います。

結婚は恋愛感情だけじゃ続ける理由にならない。愛しているから全てが許されるみたいなことではなく、それでも一緒にい続ける「家族って何だろう」というところになんとかいけないかなと思っています。

万里江の結論が、このドラマとしてどう成就していくのかというところが最後の話になるのではないかと思います。どう考えても離婚した方がいいという状況の中で、万里江がなぜ離婚しないのかということを皆さまに見ていただきたいです。

「コタツがない家」より/(C)日テレ