ヤマハ YZ250F 価格:94万500円 ※予約受付は12月3日まで フルモデルチェンジした新型を速攻試乗! ヤマハの手で磨きに磨かれたボディは軽量化に成功。このように大ジャンプもブチカマせる
ヤマハ YZ250F 価格:94万500円 ※予約受付は12月3日まで フルモデルチェンジした新型を速攻試乗! ヤマハの手で磨きに磨かれたボディは軽量化に成功。このように大ジャンプもブチカマせる

今、オフロードバイクに注目が集まっているという。いったいなぜ? 魅力や実力は? そこで今回、現場を取材したモーターサイクルジャーナリストの青木タカオ氏に特濃解説してもらった!

【写真】ヤマハ「YZ250F」、ホンダ「CRエレクトリック・プロト」ほか

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■出力特性はスマホのアプリで調整できる

青木 ヤマハ10月20日から競技用YZシリーズの2024年モデルを発売。YZ誕生50周年の節目とあって、新型の完成度の高さがマジでハンパないと話題です。

――競技用ということは、一般公道を走れないし、マニアックな世界なのでは?

青木 そうとも言えません。 レースで勝利するため、各二輪メーカーは威信をかけて開発しており、最新技術は全盛り状態! しかも、乗っても面白いんです。

――競技用YZシリーズはどの市場で売れている?

青木 ヤマハの開発担当者によると、最大の市場はレースが盛んな北米とのこと。最近は競技志向のライダーだけでなく、休日に趣味としてオフロードライディングを楽しむ、いわゆる〝ホビーユース層〟にウケていると。

――日本市場はどうです?

青木 基本的には北米と同様の層に訴求できており、ユーザーに関して言うと、ビギナーから上級者まで幅広く、販売は堅調のようです。

フルチェンによりマシンとの一体感も向上。その結果、ある程度の速度を保ったままでも、安心してカーブへ進入できるように
フルチェンによりマシンとの一体感も向上。その結果、ある程度の速度を保ったままでも、安心してカーブへ進入できるように

――そんな24年モデルの注目は〝ニーハン〟?

青木 はい。フルモデルチェンジした「YZ250F」です。ジャンプや凸凹のセクションなどを人工的に造ったモトクロスコース用のマシンで、エンジンのパワーがすさまじい。サスペンションの衝撃吸収力もピカイチで、オフロードにおける〝最強スプリンター〟。

ちなみにオフロード競技モデルに対するヤマハの情熱はマジでチョー激熱! 毎年メディアと一般向けに試乗会を開き、アオキも昔からずっと参加しているんですよ。

――試乗した率直な感想は?

青木 24年モデルはまたがった瞬間にフィット性の良さも手伝い、マシンとの一体感が得られる。まさに自在に操れます。着座時に両膝で挟む部分をシュラウドと呼びますが、従来型と比較すると、50㎜幅を狭めています。

オフロードでは走りながら前後左右に体を動かしてバランスを保つ必要があるので、シートがさらにフラットになったことで体が動かしやすくなりました。ジャンプも鬼パワーで余裕ですし、着地で車体がよれる不安もない。

――へぇー。

青木 始動はセルスターターなので、転倒してもすぐに再スタートできます。出力特性はスマホのアプリで調整でき、走行中はハンドル左のスイッチでも即座に切り替えられるんです。

ホンダ CRエレクトリック・プロト ホンダ初となる公式レースに挑んだEVレーシングマシン。ご覧のようにエンジン車同様の見事な大ジャンプを披露し、観客を魅了
ホンダ CRエレクトリック・プロト ホンダ初となる公式レースに挑んだEVレーシングマシン。ご覧のようにエンジン車同様の見事な大ジャンプを披露し、観客を魅了

――今どきのオフロードマシンって超絶進化してんスね?

青木 驚くのはまだ早い! 10月28、29日にオフロードヴィレッジ(埼玉県川越市)で開催された全日本モトクロス選手権にホンダがブチ込んだEVマシン「CRエレクトリック・プロト」もスゴい!

――具体的に何がスゴい?

青木 ガソリンエンジン車に交ざり、なんと最高峰クラス「ⅠA1」に特攻出場。ライダーはアメリカの元250クラスチャンピオンであるトレイ・カナード選手(33歳)。15分×3ヒート制で、最初のレースからいきなり2位! 会場にはファンたちのどよめきが響きました。

電動モデルらしく、猛烈にも程があるスタートダッシュで、会場を沸かせた。クラッチレバーとトランスミッションがないのが新鮮
電動モデルらしく、猛烈にも程があるスタートダッシュで、会場を沸かせた。クラッチレバーとトランスミッションがないのが新鮮

――EVが強いワケは?

青木 スタートが得意ですよね。トランスミッションがなく、クラッチレバーやシフトペダルの操作がいらず、電動モーターの特性上、停止時からの加速が鋭い。

ヒート2と3は今シーズン17連勝で負け知らずのジェイウィルソン選手(ヤマハ)を抑えて1周目からトップ! これには隣の席で視察していたホンダモーターサイクルジャパンの室岡克博社長も、「歴史的瞬間ではないか!」と熱狂コメント。

ただし、両レースともあえなく転倒、再スタートができませんでした......。

視察に訪れていたホンダモーターサイクルジャパンの室岡社長を直撃。ホンダの歴史的チャレンジの舞台裏を聞いた
視察に訪れていたホンダモーターサイクルジャパンの室岡社長を直撃。ホンダの歴史的チャレンジの舞台裏を聞いた

――再スタートできなかったワケは?

青木 理由を聞きにホンダのピットへ走ると、ヒート2は転倒時にモーターを停止させる機能を持つパーツが見つからず、ヒート3はブレーキの故障と関係者が耳打ちしてくれました。

実際の走りを目にして思ったのは、バッテリー容量を少しでも増やしたいため重量的には不利かなと。また、音や振動がまったくないことで観客を沸かせていましたが、逆にライダーからすると、モーターの回転数や車体の挙動が把握しにくい面もあるだろうなと。

――ホンダがEVを投入した理由って?

青木 全日本モトクロスは市販車ベースでなくても参戦でき、いうなればメーカーにとっては〝走る実験室〟。真剣勝負のレースでしか得られない情報や知見を獲得するのも目的のひとつ。

加えてホンダは、EVとガソリン車がモトクロスでガチンコ勝負するという世界初の挑戦を行なった。その精神は創業者・本田宗一郎から受け継がれるものであり、まさに歴史的な瞬間を目の当たりにしたなと。引き続き取材を続けます!

撮影/井上 演 写真提供/ホンダモーターサイクルジャパン

フルモデルチェンジした新型を速攻試乗! ヤマハの手で磨きに磨かれたボディは軽量化に成功。このように大ジャンプもブチカマせる