2021年に本屋大賞を受賞した町田そのこの同名ベストセラー小説を、杉咲花主演で映画化する『52ヘルツのクジラたち』の公開日が、2024年3月1日(金)に決定。このたび本作に、志尊淳が出演することが発表された。

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『八日目の蝉』(11)や『いのちの停車場』(21)などの成島出監督がメガホンをとった本作。自分の人生を家族に搾取されてきた三島貴瑚は、ある傷を抱えて東京から海辺の街へと移り住む。そこで出会ったのは、母親から虐待を受け「ムシ」と呼ばれる、声を発することのできない少年。その出会いによって、貴瑚のなかで自分を救いだしてくれたアンさんとの日々が呼び起こされていく。

志尊が演じるのは、杉咲演じる貴瑚の声なきSOSを聴いて救いだそうとする“アンさん”こと岡田安吾役。精神的にも肉体的にもギリギリの状態だった貴瑚と出会い、自身も孤独な魂を抱えながら貴瑚の幸せを心から願い行動する、塾講師のトランスジェンダー男性という役どころだ。

「自分がアンさんを演じることで、トランスジェンダーの方々を傷つけるようなことにならないかと最初は不安でしたが、監督の覚悟を聞いて成島組の船に乗りたいと思いました」と語る志尊は、脚本の段階からトランスジェンダーをめぐる表現を監修する若林佑真と共に役柄を作りあげ、真摯に役づくりに向き合ったことを明かしている。

NHKの連続テレビ小説らんまん」での好演が大きな反響を集め、現在もTBS系ドラマ「フェルマーの料理」で高橋文哉とダブル主演を務めるなど話題作への出演が相次ぐ志尊が、本作ではどんな演技を見せてくれるのか。さらなる続報にも期待しながら、本作の公開を待ちたい。

<コメント>

志尊淳(岡田安吾役)

「お話をいただいて初めて原作を手に取りましたが、一読者として夢中になって一気に読みました。この本を映画化する社会的な意義を強く感じた一方、自分がアンさん(安吾)を演じることで、トランスジェンダーの方々を傷つけるようなことにならないかと最初は不安でしたが、監督の覚悟を聞いて成島組の船に乗りたいと思いました。

現場では、本作に俳優としても出演していて、脚本の段階からトランスジェンダーをめぐる表現を監修いただいている若林佑真さんと、二人三脚でアンさんを作り上げていきました。全シーン、全セリフ、すべてに一緒に向き合ってくれ、背中を押してくれたことで、安心して役に臨むことができましたし、僕も悔いがないようにこれ以上ないというところまで考え抜いて演じ切ることができたと思っています。

アンさんを演じるなかで、杉咲さん演じる貴瑚のすべてを受け止めたいと臨み、クランクアップに際して、そうした関係を築けたことを実感しました。僕の撮影最終日、貴瑚を大分に置いて帰れるか心配でしたが、たくましくなった貴瑚の姿を見て、全スタッフさんに『花ちゃんをよろしくお願いします』と伝えアップすることができました」

●成島出監督

「志尊さんが瑯壬生(ろうみお)役を演じた野田マップ『Q:A Night at the Kabuki』の初演と再演を二本とも拝見し、初演から再演にかけてのすばらしい成長にとても驚き、バックステージでどれだけ努力を積んでいる人なのかと注目してきました。実際お会いしてみると、選ぶ言葉がとても的確でクレバーで信用できる俳優だと感じ、ぜひ彼にこそ、アンさんを演じてほしいと今回お願いするに至りました。原作におけるアンさんは『アンパンマン』みたいな存在として表現されていますが、志尊さんの持つ温かな人柄も、まさにアンさんだと、撮影を通じ確信しました」

文/久保田 和馬

杉咲演じる主人公を救う“アンさん”こと岡田安吾役を演じる志尊淳/[c]2024「52ヘルツのクジラたち」製作委員会