MY FIRST STORY(マイファス)とONE OK ROCKワンオク)が、11月14日に対バンライブ【VS】を東京ドームで開催した。

 周知されているが、ONE OK ROCKのTaka(Vo.)とMY FIRST STORYのHiro(Vo.)は血の繋がった兄弟だ。それぞれ長い間活動をしていているが、今まで共演する機会はなかった。そんな中、今回の公演が決まった経緯としては、2022年2月にMY FIRST STORYが開催した【We promise, 4 you once again Tour Final at BUDOKAN】まで遡る。当日、観覧していたTakaにHiroが直談判をし、快諾を得たことがきっかけだ。

 MY FIRST STORY にとってこの1年9か月は、ベストアルバム『X』のリリースや全22公演のツアー【MY FIRST STORY TOUR 2022】の開催、12か月連続リリース、7年振りとなる47都道府県ツアー【MY FIRST STORY -THE TWO-】を開催してきた。そんな中、「I'm a mess」がBillboard JAPANチャートにおいてストリーミング累計再生回数1億回を突破。MY FIRST STORYは公演に向けて着実に力をつけてきた。

 対してONE OK ROCKも10枚目となるアルバム『Luxury Disease』のリリースや、アルバムを引っ提げたツアー【ONE OK ROCK 2023 LUXURY DISEASE JAPAN TOUR】を開催してきた。さらに国内だけでなく、ミューズのツアーにゲスト参加、ヨーロッパツアーを開催するなど、常に世界を舞台に活躍している。

 それぞれのファンが待ち望んでいた対バン当日、東京ドームに到着すると、STORY TELLER(MY FIRST STORYファンの名称)、OORer(ONE OK ROCKファンの名称)が公演限定のライブTシャツを着て完売した席を埋め尽くしている。開演時間19時を回ると暗転し、凄まじい音量の拍手が会場全体に響き始めた。そして、壮大なSEでMY FIRST STORYONE OK ROCKのライブ映像が流れ始める。映像が終わり、「The Beginning」のイントロが聞こえてきた瞬間、オーディエンス全員の感情が興奮に包まれた。序盤から魅せてくるONE OK ROCKの力に度肝を抜かれる。Takaの「史上最大の兄弟喧嘩、覚悟しろよ!」という言葉で公演がスタートした。

Taka「兄として、弟にあいつらに伝えたいことをセットリストに詰め込んだつもりです」

 セリフ通り、今回は特別な楽曲たちが用意されていた。「C.h.a.o.s.m.y.t.h.」で友情の大切や、「Wherever you are」で愛を歌い、自分たちの葛藤を吐き出すような歌詞の「Nothing Helps」で苦労を伝えていく。

 「Renegades」の後は、Toru(Gt.)の荒々しいギターソロに、Tomoya(Dr.)とRyota(Ba.)が息の合ったビートを刻みだす。そのまま徐々に勢いをつけて「Deeper Deeper」に流れ込んでいった。会場が熱くなってきたところで「あいつに向けて書いた曲があります」と「Right by your side」を披露。2017年にライブ会場限定CDとして販売された『Skyfall』に収録されており、今まで一度も披露されたことがない楽曲だ。<越えるべきは そう いつだって 自分自身以外にいない>という歌詞通り、Hiroの心情に対するアンサーソングとも捉えることができる。最後に<You gonna realize>と歌詞を変えてHiroにそっと訴えるTakaも見どころだった。そのまま「未完成交響曲」に続き、カメラ目線で自分自身の大切さを唱えていく姿に始終オーディエンスも目を輝かせていた。

Taka「ワンオクとして、兄として背中を見せたいと思います」

 ワンオクの立場で見たマイファスは「まだまだ」、兄の立場で見た弟は「よくここまで来たな」と飴と鞭の言葉をかける。「あいつら飛び級東京ドーム来てるんだよ。でも皆さん、もう一回あいつらがこのステージに立ったら応援してあげてください」と、両方の立場で優しい言葉をかけるTaka。そしていよいよラストスパート、4人が向かい合って「完全感覚Dreamer」に突入。激しく火花を散らしたが、完全燃焼しきれていないTakaは「ラスト1曲だけやっていい?」と「キミシダイ列車」を投下する。会場が沸いたところで「人生はこれっぽっちしかないけどな、悔いなく生きろよ!」と最後に言い残してステージを去った。

 そして、MY FIRST STORYのターンへ。モニターに巨大な積乱雲とそこに射す光がモノクロに映しだされ「最終回STORY」が放たれた。楽器隊はベストアルバム『X』に収録された(re:rec)バージョンを奏でているが、Hiroの歌い方はどこかオリジナルバージョンを感じさせる。まさに過去と現在が交差していた。そしてミクスチャーロックの「メリーゴーランド」では、Hiroのフローに、Teru(Gt.)のギターソロ、Nob (Ba.)のリズミカルに刻むべース、Kid'z(Dr.)のツーバスも炸裂。バンドを始めた頃の夢が叶えられたことにメンバー全員が喜んでいるようだった。

Hiro「12年、兄のことを妬んでリスペクトしてきた。自分に負けるつもりはありません」

 宣戦布告をしたところで「PARADOX」「虚言NEUROSE」が次々と展開されていく。「1秒たりとも無駄にするなよ!」という言葉と共に「ACCIDENT」から幕開けた後半戦の盛り上がりも凄まじいものだった。「REVIVER」「不可逆リプレイス」といったアッパーチューンでエンジンを切ることなく、寧ろステージのギアを上げていく実力は流石だ。また演奏だけでなく、巧みなモニター演出やLED照明の融合もより楽曲を引き立たせている。

 そして、ラストの一曲に選ばれたのは「Home」だ。3回目の演奏となった本楽曲では、Hiroが真っ直ぐ前を見て歌っている姿が印象的だった。最後に清々しい顔で「次は俺たちの力でまた戻ってきます」と誓うHiro。MY FIRST STORYは自分自身の強さを再確認してステージを去った。

 ファンの声が響く中、モニターにToru とTeruRyotaとNob、TomoyaとKid'z 、そしてTakaとHiroがお互いに話し合っているリハーサルの様子が映しだされる。アンコールにはONE OK ROCKMY FIRST STORYが共演するという夢のステージが待っていた。この奇跡のコラボレーションに選ばれた楽曲は「Nobody's Home」だ。最後の歌詞<心から愛しているよありがとう>では、HiroがTakaの目を見て歌い、それを受け入れたTaka はHiroの肩を抱き寄せていた。

 一生忘れられない一夜を見せてくれたONE OK ROCKMY FIRST STORY。2組が今日にかけた想いは、歌詞や演出、表情全てから読み取れた。そのため、ファンの感じ方はそれぞれ違かったであろう。そういったことを共有し合い、2組のアーティスト像を深く理解していくことは、この兄弟喧嘩の良さだったと思う。今後もお互いがそれぞれの道で力をつけ、また肩を並べる日を楽しみにしたい。

Text by Tatsuya Tanami

MY FIRST STORY
Photo by Taka"nekoze photo"
Photo by Daiki Miura
Photo by SHOTARO

ONE OK ROCK
Photo by JulenPhoto
Photo by Kazushi Hamano
Photo by Rui Hashimoto[SOUND SHOOTER]


◎公演情報
【VS】
2023年11月14日(火)
東京・東京ドーム
セットリスト
ONE OK ROCK
M01. The Beginning
M02. Never Let This Go
M03. Nothing Helps
M04. Make It Out Alive
M05. C.h.a.o.s.m.y.t.h.
M06. Wherever you are
M07. Renegades
M08. Deeper Deeper
M09. Right by your side
M10. 未完成交響曲
M11. We are
M12. 完全感覚Dreamer
M13. キミシダイ列車

MY FIRST STORY
M01. 最終回STORY
M02. ALONE
M03. メリーゴーランド
M04. 君のいない夜を越えて
M05. アンダーグラウンド
M06. 東京ミッドナイト
M07. PARADOX
M08. 虚言NEUROSE
M09. ACCIDENT
M10. I'm a mess
M11. MONSTER
M12. モノクロエフェクター
M13. REVIVER
M14. 不可逆リプレイ
M15. Home

ONE OK ROCK×MY FIRST STORY
M01. Nobody's Home

<ライブレポート>MY FIRST STORY VS ONE OK ROCK、対バンライブ【VS】で見せた魂と魂のぶつかりあい「俺たちの力でまた戻ってきます」