バックホウショベルカー)のなかには、足回りがクローラーではなくタイヤになっているものがあります。ホイール式油圧ショベルと呼ばれるこの車両、どのような用途があるのでしょうか。

タイヤであることが重要

工事現場などで見るバックホウショベルカー)の多くは、足回りがクローラー(いわゆるキャタピラ)になっていますが、そうではなくタイヤがついているタイプを見かけることがあるかもしれません。

タイヤのついたショベルカーは、クローラー式のものとは別にホイール式油圧ショベルと呼びます。日本に登場したのは60年以上前の1962年で、油谷重工(現:コベルコ建機)がフランス・ポクレン社との技術提携により、国産第1号となるホイール式油圧ショベルTY450を製造しています。

ホイール式の一番のメリットは公道を単独で自走できるという点です。機種によって違いますが、例えば日立建機のZX125W-6の最高速度は38km/h、キャタピラーのM313Dは37km/hです。クルマとしては遅く感じるかもしれませんが。10km/h以下のクローラー式に比べれば断然速く、トラックに搭載しなくても現場へと行くことができます。そのため、輸送費用を大幅に削減することができます。

なお、公道を走る場合の免許は油圧ショベルの大きさによって違い、5t未満であれば普通自動車免許、3.5t以上7.5t未満であれば準中型自動車免許、7.5t以上11t未満であれば中型自動車免許、11t以上であれば大型自動車免許が必要となっています。

ただ、クローラー式に比べるとタイヤでは接地面が少ないゆえのデメリットもあります。地盤が悪いと重みで沈んだり、凹凸があると安定性が悪くなります。急斜面もクローラー式の方が有利です。そのため、ホイール式はアスファルトや整地された地面などの硬い地盤での作業や、現場間を頻繁に移動する必要があるときなどに使用されるようです。

公道を走るため、ハンドルやウインカーなど、クルマに必要なものは揃っています。現場到着後はハンドルを奥に押し込み、スティックで操作しやすくなる車両もあります。

ちなみに、似たタイプの車として、横長のバケットをもつホイールローダー、いわゆる「ブルドーザー」のホイール式があります。こちらは、油圧ショベルより多くのものを「すくって持ち上げる」ことに長けていて、バケットも大きいため土砂をダンプトラックなどへ一気に積み込むなど、適材適所油圧ショベルと使い分けられています。

日立建機のZaxis 130W(画像:Alf van Beem<CC0>)。