誰にでも理想のチームがあるはずだ。「あの時代のあの選手と、この時代のこの選手」を組ませて自分が思い描く最高のチームを作る。誰しもが一度は頭の中で思い描いたことのある空想上のチームを、プレミアリーグの監督ならばどうやって選ぶのだろうか?

 先日、そんな問いにアーセナルを率いるミケル・アルテタ監督(41歳)が答えていた。スペインバスク地方、サン・セバスティアンで生まれ育ったアルテタは、地元のユースクラブで現在レヴァークーゼンを率いてブンデスリーガで首位を走るシャビ・アロンソと出会い、チームメイトとして子供時代を過ごした。

 15歳にして名門バルセロナの下部組織、ラ・マシアの門を叩いてエリート集団に加わったアルテタは、バルセロナのBチームまで駆け上がり、何度かトップチームの練習に参加するも、当時のバルサにはジョゼップ・グアルディオラなどがいたためチャンスは回ってこず、パリ・サンジェルマンへローン移籍。その後、スコットランドレンジャーズを経てプレミアリーグに。エヴァートンで結果を残し、2011年にアーセナルに引き抜かれて5年間プレーした。引退後は、グアルディオラの右腕として3年半ほど修業したのち、2019年12月から古巣アーセナルを率いている。

 昨シーズンは、アーセナルの監督として長いこと首位を走りながら最終的にマンチェスター・シティに抜かれて2位でフィニッシュ。そして迎えた今季は、プレミアリーグで首位に着けているほか、7シーズンぶりの出場となったチャンピオンズリーグでもグループステージ1試合を残して無事に決勝トーナメント進出を決めている。

 果たして、これまで多くの偉大な選手を見てきたアルテタは、どんな理想のメンバーを選ぶのだろうか? 先日、サッカー専門メディアの『Planet Football』がそんな疑問を本人にぶつけていたので紹介しよう。アルテタ監督が5人制サッカーで選ぶ「理想のチーム」がこちらだ。

[写真]=Getty Images

◆■FWリオネル・メッシインテル・マイアミ/アルゼンチン代表)

 アルテタが真っ先に選んだのはサッカーというスポーツにおいて史上最高の選手と呼ばれるアルゼンチン代表FWリオネル・メッシ(36歳)だ。「一緒にプレーしたことも、指導したこともないが」と前置きをしたうえで「一番目は、レオ・メッシしかいない」と言い切った。「サッカーの歴史上、最も影響力のある選手だと思う。彼のようなプレーを、それもこれほど長い期間、発揮し続ける選手を我々は見たことがない」

 この人選に関しては議論の余地がないだろう。好きにメンバーを選べる場合、とりわけそれが5人制サッカーならばメッシを選ばなければそれは理想のチームとは呼べない。というわけではアルテタの「理想の5人」の1人目は、バルセロナの後輩にして昨年のワールドカップアルゼンチンを頂点に導いたメッシとなった。

◆■FWクリスティアーノ・ロナウド(アル・ナスル/ポルトガル代表)

 これがアルテタ監督の成功の秘訣かもしれない。しがらみや人情に流されることなく「いいものはいい」と断言できる強い信念が彼にはあるのだ。だから2人目にはFWクリスティアーノ・ロナウド(38歳)を選んだ。アルテタはパリ・サンジェルマン時代に元ブラジル代表FWロナウジーニョとも一緒にプレーしたし、元アルゼンチン代表DFマウリシオ・ポチェッティーノ(現在チェルシーの監督)には公私ともにお世話になった。

 それでもアルテタはそういった名前を出さず、メッシと並び歴代最高プレーヤーに挙げられるC・ロナウドを選んだ。今季、アルテタ監督の選手起用は物議を呼んだ。彼はさらなるレベルアップを図り、昨季まで守護神を務めていたGKアーロンラムズデールをレギュラーから外し、ブレントフォードから連れてきたスペイン代表GKダビド・ラヤを守護神に据えたのだ。「他のどのポジションと同じでGKにもポジション争いがある」と、冷徹にも思える決断を下したのだ。

◆■FWロナウド(元ブラジル代表)

 3人目は「もう一人のロナウド」となった。41歳のアルテタは、世代的にも1998年と2002年のワールドカップで活躍したロナウドに強く惹かれたようだ。もちろん、わずか1年(1996-97シーズン)ではあるが、ロナウドアルテタの古巣バルセロナでも活躍しており「小さい頃から彼が大好きだった」とアルテタは明かしている。

 子供の頃、アルテタはバルセロナが次々と獲得する大物選手にワクワクしたそうだ。「まずはロマーリオだね。(1993年に)バルセロナPSVからロマーリオを獲得したね。私は彼のビデオを見て感激していたんだ。その後、ロナウドやリヴァウドだね。その3名の補強が一番覚えているよ」

◆■FWヨハン・クライフ(元オランダ代表)

 ラ・マシア出身者が、この偉人を選ばないわけがない。バルセロナを、そしてサッカーというスポーツを変えたと言われるヨハン・クライフについて、アルテタは「私がバルセロナに入団した時から、彼はとてつもなく大きな存在だった。私たちみんなが憧れ、インスパイアされたのが彼だった」と説明する。

◆■MFディエゴ・マラドーナ(元アルゼンチン代表)

 最後の一人は、こちらも伝説の選手として今後も語り継がれるサッカー界のレジェンドディエゴ・マラドーナだ。1980年代バルセロナでも活躍した元アルゼンチン代表について「彼はバルセロナ時代に、チームとサッカーそのものを変える活躍だった」と説明するアルテタ。だが、マラドーナを選んだ理由はバルセロナの繋がりだけではない。

 どうやらアルテタの家系はアルゼンチンにもルーツがあるようで「私はアルゼンチンにもルーツがある」と明かしたあとで「私の妻もそうだしね」と、アルゼンチン出身の女優であり、最愛の妻であるロレーナ・ベルナルさんについても触れた!

◆■おまけ

 こうして歴代最高とも呼べるメンバーを選んだアルテタだが、全員が攻撃的なプレーヤーで、一人も守備をする選手がいない。それどころかGKもいないのだ!

「ディフェンダーはなし。そして5人制だから、ゴールキーパーも要らないよ」と、アルテタ監督は強気なメンバー選考。ただし、6人制になるなら「16歳の頃からバルセロナで一緒にプレーしてきた、友人でもあるペペ・レイナを選ぶ」と最後は縁故採用を示唆した!

(記事/Footmedia)

理想のチームを選出したアルテタ監督 [写真]=Getty Images