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欧米系大手、水素エンジンを選択肢に

欧米系の自動車メーカーであるステランティスは、排気ガスを出さないゼロ・エミッション車実現に向けたアプローチの1つとして、水素燃焼エンジンの開発に取り組んでいるという。同社CEOのカルロス・タバレス氏が明らかにした。

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アルファ・ロメオシトロエンプジョージープオペルなど14の自動車メーカーを傘下に持つステランティスは、EU(欧州連合)の脱炭素化ルールの下でパワートレインを多様化しようとしている。

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ステランティスはEV充電が難しい消費者向けに選択肢を多様化させているという。

タバレスCEOは、ステランティスらが出資するシンビオ社の新たな水素燃料電池工場(フランスリヨン)のオープンに立ち会い、「水素噴射は、わたし達が取り組んでいる4つの技術のうちの1つです」と語った。

また、自動車メーカーを化石燃料から遠ざけ、EVに向かわせようとする政府機関の「荒々しい」なやり方を批判した。

「今、独断的な考え方は現実を前にして傷ついています。手頃な価格でなければ、人々はそれにお金を払えないからです」

ステランティスは、EV充電が難しい消費者に対応するためにパワートレインの選択肢を増やしている。

「本当の競争は、燃料電池、EV、水素内燃機関、さらには合成燃料の間で始まっています。今後数年で、何が市民にとって最良の解決策になるかがわかるでしょう」

水素燃焼エンジンは、BEVやFCEVに比べてサプライチェーンに混乱をきたさないことから、特に商用車メーカーの間ではゼロ・エミッションに向けた最も簡単なソリューションと考えられてきた。

ガソリンエンジンを水素に対応できるように改良する必要があるが、メカニズムの多くはそのまま利用できる。ハードルとなるのは、燃料補給ネットワークの確立と、グリーン水素の大規模製造だ。

タバレスCEOは、どの車両に水素燃焼エンジンを搭載するかは明言しなかったが、ステランティスはすでに中型商用バンのK0シリーズ(オペル・ヴィヴァーロなど)に水素燃料電池を導入している。

ステランティスはまた、2026年後半か2027年前半に、米国でピックアップトラックのラム・ヘビーデューティの水素燃料電池バージョンを導入する予定だという。水素タンクは商用車に搭載しやすく、バッテリーEVに比べて重量が軽いため、積載量を増やすことができる。

モータースポーツや大型商用車で活路

トヨタは、ヤリスカローラのレーシングカーで水素燃焼エンジンを実証しており、ルノー・グループもアルペングローというコンセプトカーで水素燃焼エンジンを採用した。

水素や合成燃料の燃焼エンジンは、現在のレーシングカーのサウンドを維持できるため、ゼロ・カーボン化を目指すモータースポーツ関係団体にも好まれている。

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トヨタヤマハが開発した5.0L V8水素エンジン    ヤマハ

また、欧州の大型車メーカーやサプライヤーも積極的に推進している。ダイムラー・トラック、クラース、いすゞJCB、MAN、そしてボッシュ、ボルグワーナー、デーナなど大手が名を連ねる水素エンジン連合(Hydrogen Engine Alliance)というコンソーシアムが設立され、水素の可能性を模索している。

水素燃焼エンジンは燃焼時にNOx(窒素酸化物)が発生するため、完全なゼロ・エミッションとは言えないが、ディーゼルエンジンで使用されるのと同じAdBlue(尿素SCR)処理によってこれを低減することができる。

燃料電池よりも水素消費量は多いが、製造コストははるかに低い。ステランティスの燃料電池商用車は現在、補助金なしで10万ユーロ(約1580万円)以上すると、商用車部門の責任者であるザビエルプジョー氏は最近の取材で語っている。

タバレスCEOは、政府は今後「3~5年間」、燃料電池商用車の購入に1台あたり3~4万ユーロの補助金を出し、価格をバッテリーEV並みに下げて市場を活性化させる必要があると指摘する。

「価格はコスト次第であり、我々はコストに取り組まなければいけません。今のところ、そこまでは至っていません」

しかし、コストは下がりつつある。トヨタは、2026年に実用化される予定の次世代燃料電池技術が「大幅なコスト削減」をもたらすと述べている。


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