客に「秘伝のタレを教えろ」と迫られ、困っているーー。弁護士ドットコムに、このような相談が寄せられている。

悩んでいるのは、飲食店の店主だ。苦労して作り出した「秘伝のタレ」がヒットし、店は盛況しているという。ところが、「タレの材料と作り方を教えろ」「仕入れ先はどこだ」などと根掘り葉掘り聞き出そうとする客への対応に困り果てているようだ。

店主が「秘伝」を理由に教えられないと答えると、客は「アレルギーの関係もあるし、表示すべき。客には知る権利がある」と主張したという。

飲食店は、どこまで原材料の説明をしなければならないのだろうか。佐藤光子弁護士に聞いた。

 ●「知る権利」はレシピを知るためのものではない

ーー店には、アレルギー対策のために食材を表示する義務があるのでしょうか。

対面販売や店頭での量り売り、飲食店等で提供される食品には食品表示法上の食物アレルギーの原因となる食品の表示の義務や推奨はありません。そのため、アレルギー表示は法的には求められていません。

しかし、健康被害防止のために、食物アレルギーのある客に対する情報提供の充実が求められています。つい最近でもイベントやキッチンカーでの販売で食中毒が起きたことで、食の安全への市民の関心は高まっています。食品を提供する側に対し、安全への高い意識が一層求められているといえるでしょう。

ーー情報提供の充実のためには、何をすればよいのでしょうか。

たとえば、メニューへの記載や問い合わせへの説明などが考えられます。客からの問い合わせがあった場合は、正確に使用食材について説明したり、飲食店での食物アレルギー対応をどのようにしているかを伝えたりすることが求められます。

アレルギーに関して伝える場合には、調理器具が同一など、アレルギー原因食材の混入(コンタミネーション)の可能性がある場合は、そのことも必ず客に伝えましょう。曖昧で、不正確な対応は重大な事故につながるので、食材の情報が不正確、アレルギー対応ができないなどの場合はそのことをはっきり伝えましょう。

アレルギーについて質問があった場合は、わかっていることは正確に答え、わからないことはわからない、と曖昧な回答をしないことが大切です。

ーー客は「知る権利がある」と主張し、レシピを聞き出そうとしているようです。

レシピまで聞き出そうとする質問は、アレルギーに関する判断の基礎となる情報を求めることを超えたものです。「営業秘密でレシピは答えられない」との回答でよいかと思います。

知る権利」は、一般的には、公権力に情報公開を求めたり、情報を受け取るのを公権力に妨げられない権利です。飲食店にレシピを聞き出すための客の権利ではありません。

【取材協力弁護士】
佐藤 光子(さとうみつこ)弁護士
民事の交渉・訴訟、企業法務を注力分野とし、食品関連法務(食品表示、食品衛生、トラブル対応)、学校法務、ペット関連法務、エネルギー関連法務、病院経営など特色のある分野にも対応している。法的解決のみならず、企業の社会的価値を損なわない解決を常に目指す。

事務所名:虎ノ門法律経済事務所
事務所URL:http://www.t-leo.com/

「秘伝のタレの作り方教えろ!」食物アレルギー主張の客に困惑、店に表示義務はあるの?