自動車5台以上を保有する事業所で、運転の前後におけるアルコールチェックの義務化が始まりました。同日深夜の東京では一斉の飲酒検問も実施され、複数の酒気帯びが摘発されています。企業の対応がより問われるようになっています。

12月からアルコールチェック義務化 多くの企業が当事者に

自家用車両を5台以上保有する事業者へのアルコールチェック義務化が、2023年12月1日から完全義務化されました。当初は2022年10月からの実施予定でしたが、半導体不足の影響でアルコール検知器の供給が十分でなかったために延期され、2023年12月からの実施になりました。

企業が所有する車両は、有償で輸送を行うか否かで、緑ナンバーと白ナンバーに分かれます。例えば、同じように物流を支えていても、自社の製品を無償で納品するような場合は白ナンバー、宅配便の委託のように物を運ぶことを仕事とする場合は緑ナンバー(軽四輪は黒字に黄文字)です。

有償事業を行う場合以外はすべて白ナンバーですが、今回の義務化は、その中でも乗車定員が11人以上の自動車を1台以上所有している、または、そのほかの自動車を5台以上使う事業者、排気量126cc以上のバイクを10台以上使う事業者が対象です。業種は限定されておらず、当事者となる事業者は約39万事業者、対象となる運転者も約870万人とされます。膨大な数に上ります。

今回の義務化は、そうした企業の対応が問われる内容です。対象となる企業では安全運転管理者を必ず選任し、警察署への届出が必要です。企業は常に正常に作動する検知器を備えて、従業員の出退勤時など運転の前後にアルコールチェックを行い、さらに、所定の内容を盛り込んだ記録を残さなければなりません。このチェックは、車両を使って出張している場合にも必要です。

緑ナンバーの有償運送事業者には、すでに義務化された内容ですが、過去には、身代わりでチェックを受けたり、ごまかしたりする不正が行われて、企業が処分を受けたこともありました。単にアルコールチェックを実施するだけでなく、基準値以上の数値が出た場合の再チェック方法なども事前に定めないとチェックがあいまいになるため、選任された安全運転管理者の仕事は、かなり重要です。

義務化のその日に一斉飲酒検問!

検知器による義務化がはじまった12月1日深夜から2日未明かけては、東京都下一斉の飲酒検問も実施されました。伊豆七島などの島部を含む警察著と交通機動隊高速道路警察隊の109所属、警察官835人を動員した検問でした。

こんなところで飲酒検問やるのか」

散歩中の歩行者がつぶやいたのは、上野署が台東区池之端で実施した検問でした。上野公園の中にある不忍池を臨む都道457号線を車線規制して停車させ、1台ずつアルコールチェックを行いました。貨物車やバイクだけでなく、電動キックボードも対象になりました。

「湯島、御徒町、上野という繁華街から流れてくる車両もあり、過去には飲酒事故も起きている」(上野署交通課)

都内各か所2時間の検問で、道路交通法違反は93件。そのうち酒気帯び運転は7件でしたが、無免許運転、整備不良、速度超過などそのほかの違反が86件ありました。

東京都内の2023年の飲酒運転による交通事故は、6月にバイク死亡事故が発生するなど、過去5年間平均と比較して高水準でした。交通事故死亡数は11月末日現在で117人。前年とほぼ同水準で推移しています。12月は1年で最も死亡事故が増える傾向があります。

「飲酒の機会も増えるので、気を引き締めて運転をしてほしい」(警視庁交通部)は、呼び掛けています。

死亡事故は全国的には、11月末日現在で2378人。昨年を48人上回るペースで増えています。

貨物トラックへの飲酒検問の様子。12月から白ナンバーであっても多くが事業所でのアルコールチェックの対象に(中島みなみ撮影)。