株式会社帝国データバンクは、消費税固定資産税などの各種「税金(公租・租税)」、厚生年金保険や健康保険などの「社会保険料(公課)」について納付ができない、または滞納状態が続いたことで自社の資産等を差し押さえられ経営に行き詰まった企業の倒産=公租公課滞納倒産の発生状況について調査を行った。

<調査結果(要旨)>

  1. 社会保険料・税金などの「公租公課滞納」倒産が急増 2023年は111件、年間最多に

[注] 「公租公課滞納」倒産 [定義]

消費税固定資産税などの各種「税金(公租・租税)」、厚生年金保険や健康保険などの「社会保険料(公課)」について納付ができない、または滞納状態が続いたことで自社の資産等を差し押さえられ経営に行き詰まった企業の倒産

※調査期間:2020年~2023年11月末時点

※調査機関:株式会社帝国データバンク

社会保険料・税金などの「公租公課滞納」倒産が急増 2023年は111件、年間最多に

社会保険料や税金など「公租公課」の滞納が要因となった企業の倒産が増加している。多額に上る公租公課の滞納や延滞金の未納により、自社の預金口座や土地など資産を差し押さえられ、経営に行き詰まった「公租公課滞納」倒産は、2020年から23年の4年間で272件判明した。このうち、23年1-11月における発生は111件となり、全体の約4割を占めた。22年通年の74件から1.5倍に増加したほか、支払いが猶予されていたコロナ禍の20年(35件)からは3倍超に増えた。滞納した公租公課の区分では、特に企業業績が赤字であっても毎月支払う義務が生じる、厚生年金保険などの社会保険料の滞納が原因となったケースが目立った。

公租公課のうち、特に企業にとって負担の重い社会保険料は最長3年にわたる納付猶予措置が設けられ、企業の資金繰りを支えてきた。ただ、ポストコロナに向けて企業活動が正常化するなかで特例措置も順次縮小、年金事務所による厚生年金保険料などの差し押さえ件数は22年度に2万7784事業所と、前年度の4倍に達し、社会保険料などの滞納者に対する差し押さえ処分が本格化している。そのため、コロナ禍で猶予された社会保険料の納付ができず、法的整理直前に差し押さえ処分を受けたパチンコホール大手「ガイア」や、業績不振のなかで消費税社会保険料の支払いに窮した、韓国食材スーパーや免税店運営の「永山」など、猶予期間中に業績を立て直すことができなかった企業の倒産が相次いだ。

2020~23年間に発生した「公租公課滞納」倒産272件を業種別にみると、最も多いのは「サービス業」の68件で、特にソフトウェア開発などの業種で多く発生した。トラック運送などの「運輸・通信業」や「建設業」(47件)、「製造業」(42件)なども40件を上回る水準だった。

態様別では、ほとんどのケースで破産など「清算型」の倒産が多かった。累計272件のうち、清算型の倒産が263件・96.7%を占め、再生型の倒産では民事再生法など9件にとどまった。

公正に果たすべき納付の義務、「果たせない」中小企業の破綻増が予想

日本年金機構によると、厚生年金保険を含む社会保険料を滞納している事業所は、22年度末時点で14万811事業所に上り、適用事業所全体に占める割合は5.2%を占めた。前年度に比べて滞納事業所数は減少したものの、依然として多くの企業が納付に苦慮する状態が続いている。

社会保険料や各種税金の納付は、社会保障制度を維持・継続するために企業が公平に負う義務であり、差し押さえ等で事業継続に行き詰まる企業の増加を年金事務所等の責めに帰すことはできない。ただ、足元の円安や資源高による物価高などの影響も重なり、社会保険料の支払い催促に対して弁済可能な資金を有する中小企業は決して多くない。社保や税金滞納分の支払い見込みが立たず、事業継続を断念するケースは今後さらに増えていくことが予想される。

配信元企業:株式会社帝国データバンク

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