韓国でよく聞く「ファイティン!」とは、「頑張れ!」という意味を持つ和製ならぬ韓製英語(コングリッシュ)だ。意味は異なっていたが、1930年代から使われるようになった。

北朝鮮でも最近になって使われるようになっていたが、当局は使用を禁止する措置を取った。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋は、先月29日に新義州(シニジュ)の駅前広場で安全員(警察官)に携帯メール(SMS)の抜き打ち検査をされたという。検査の理由は、若者たちがメールで「ファイティン!」という言葉を使っていないか調べるというものだった。

反動思想文化排撃法が2020年12月に制定されて以降、韓流ドラマや映画に対する取り締まりが強化されており、取締官が路上で若者を捕まえ、携帯電話にそれらのファイルがないかの検査を行うことはあったが、メールの検査までされたのは初めてとのことだ。

検査の列に並ばされていた紡績工場の若い女性労働者が、同僚宛に「ファイティン!」というメールを送ったことがバレて、安全部(警察署)に連行されるのを目撃したという。

情報筋は、労働鍛錬刑(懲役刑)6カ月の処罰を受ける可能性があると見ているが、運悪く見せしめに選ばれれば、処刑される可能性すらある。

平安南道(ピョンアンナムド)の殷山(ウンサン)でも、地方代議員選挙が終わった翌日の先月27日から、大学生などの若者を対象に携帯メールの取り締まりが始まったと、現地の情報筋が伝えている。

対象となるのは「ファイティン!」だけではなく、「ㅋㅋㅋ」という日本で言う「笑笑笑」や「www」「草生える」という意味の言葉、「タランへ〜」という「ちゅき」(好き)のような言葉など、韓流コンテンツによく登場するネット用語だ。

以前使われていた、年上の男性を呼ぶ時に使う「オッパ」や、ボーイフレンドを指す「ナムチン」など、韓国由来の言葉を使う風潮は、取締りを警戒してほとんどなくなったとのことだが、ネットの世界ではしぶとく生き残っていた。

情報筋は「いくら取り締まってもまずなくせないだろう」と見ている。愛情や友情を軽いノリで伝えるのにちょうどいい言葉が北朝鮮にはないからだ。

例えば、「ファイティン!」を朝鮮語に訳すと「ヒムネジャ!」になるが、これでは「党と首領(金正恩総書記)のために革命的に生きて闘争しよう」というプロパガンダが連想されてしまう。

日本語で「ブルーな気持ち」を「青い気持ち」と言い換えられないように、本来は同じ意味を持っていた言葉でも、ニュアンスが違ってしまうのだ。

金正恩氏(朝鮮中央テレビ)