連続テレビ小説「半分、青い。」(2018年、NHK総合)で頭角を現した女優・奈緒。さらに「ファーストペンギン!」(2022年、日本テレビ系)「あなたがしてくれなくても」(2023年、フジテレビ系)など、多くの話題作でまさに“カメレオン”な演技力が注目を集めている。自然体でいて、かつ多才な表現力を併せ持つ奈緒の芯を深掘りする。

【写真】奈緒が見せる、多くの女性を共感させた“説得力ある”演技

ブレイク登竜門「ヒロインの親友役」にて注目を浴びる

ドラマ・舞台で活躍中の実力派女優、奈緒。高校生のときに地元・福岡でスカウトされたのをきっかけに、モデルとして活動を開始。2013年に「めんたいぴりり」で女優デビューしてからは、その類まれな演技力で「カメレオン女優」として人気を誇っている。

彼女が頭角を現したのは、NHK連続テレビ小説「半分、青い。」。同ドラマで奈緒はヒロインの親友役に抜てきされる。実は朝ドラオーディションへの挑戦は3回目で、「半分、青い。」は、諦めずに挑戦した結果つかめた役だという。

ヒロイン役は逃したものの、“ブレイク登竜門”として注目される重要な役。視聴者の注目を集める演技を見せた奈緒は、以後数々のドラマや映画に出演することに。実力派俳優と並んでも引けを取らない演技力の高さで、以降は人気女優として着実に知られていく。

翌年には連続ドラマ「あなたの番です」で狂気じみた行動をする尾野幹葉役を怪演。「半分、青い。」とは真逆の人物像を演じて、演技の振れ幅も話題を呼んだ。さらに映画「マイ・ブロークン・マリコ」では主人公・シイノトモヨの親友で、幼い頃から父親や恋人に暴力を振るわれ“壊れていく”イカガワマリコを見事に演じきり、実力派として名を広めていく。

その後、2022年10月にはゴールデン・プライム帯の民放連ドラ「ファーストペンギン!」にて初主演。同作では縁もゆかりもない“漁業の世界”に飛び込んだシングルマザーを演じた。実話をもとにした同作品は、主人公・岩崎和佳(のどか) の喜怒哀楽が作品の見どころのひとつ。奈緒は持ち前の豊かな表現力を存分に発揮し、漁業改革に奮闘するというストーリーのなか、さまざまな顔を見せた。視聴者からも「応援したい」「元気が出る」と好感の声が多く、奈緒の人気をさらに飛躍させる作品となった。

さらに2024年1月15日(月)スタートの新ドラマ「春になったら」(毎週月曜夜22:00-、フジテレビ系)でも、木梨憲武とダブル主演を務めることが決まっている。3カ月後に結婚する娘・瞳(奈緒)と3カ月後にこの世を去る父・雅彦(木梨)が、「結婚までにやりたいことリスト」と「死ぬまでにやりたいことリスト」をかなえていく、笑って泣けるハートフル・ホームドラマだ。「時をかけるな、恋人たち」なども手掛け、同作もプロデュースする岡光寛子に、「人間性も芝居力も全てにおいて信頼している」と言わしめた奈緒。業界内でも、着実に存在感を増しているようすがうかがえる。

■「あなたがしてくれなくても」ではナイーブなテーマを抜群の説得力で熱演

奈緒のカメレオン役者っぷりを挙げるなら、なんといっても欠かせないタイトルがある。奈緒の演技力が圧倒的に評価された、2023年4月期放送の連続ドラマ「あなたがしてくれなくても」だ。

同作は累計発行部数990万部(電子+紙)を超える、ハルノ晴原作の人気漫画を実写ドラマ化したタイトル。2014年7月期に同枠で放送された、不倫を赤裸々に描いて話題を呼んだ「昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜」のスタッフが9年ぶりに再集結し制作されたことでも話題となった。

なかなか話題にしづらい「セックスレス」という夫婦のタブーに直球で切り込んだ衝撃作として、配偶者との関係に悩む男女を描いている同作。主演の奈緒をはじめ、岩田剛典、田中みな実、永山瑛太といった豪華キャストが2組の“セックスレス夫婦”を演じる。

奈緒が演じたのは、結婚5年目の陽一(永山瑛太)の妻“みち”。夫婦仲は悪くないものの、2年前からセックスレスに陥っている。努力とすれ違いを何度も経験しながら、誰にも相談できず1人で悩んでいるしがないOL…という役を担った。

ナイーブなテーマを扱う同作の主人公として、奈緒は等身大の現代女性を繊細に演じている。夫に触れてもらえない・求めてもらえない寂しさや、自分に魅力が足りないかもと努力を重ねる姿、そして幾度となく繰り返される旦那の裏切りを受けて変化する感情。そして職場という家庭とは切り離されたスペースのなかで次第に“理解してくれる相手”に惹かれて変わってしまう心情をも、リアルに表現した。

奈緒の演技には“物語の主人公”としての特別感がなく、多くの視聴者から共感の声が相次いだ。主演ともなれば普通は肩肘を張ってしまうものだが、視聴者が思わず共感してしまう普通の女性像を丁寧に演じた奈緒の演技はまさに別格。あくまで自然体を演じる奈緒が“みち”を演じたからこそ、物語の没入感は何倍にも高まったのだ。

■誰よりも没入するからこそ生まれる説得力

奈緒が第116回ザテレビジョン・ドラマアカデミー賞で主演女優賞を受賞した際のコメントで、興味深い言葉がある。みちが陽一と離婚するシーンを挙げた奈緒は、「離婚をするシーンは、お芝居でああいう感情になったのは初めてで。それは“もうこれ以上やりたくないな”って思いでした」と述懐。

さらに「この字を、手を、耳を見るのは最後なんだ、全部が今日で終わりなんだっていうのが押し寄せてきて…今でもその感情は心にも体にも刻まれたように残っています」と役である“みち”の心情に深く深く入っていたことを明かした。

撮影期間中は“みちとして生きていた”と語る奈緒。陽一が「子どもを作りたくない」と明かした際のケンカ、そして楓(田中みな実)に浮気を問い詰められた際の反論シーンは、特に底ごもる静かな熱を感じさせる圧巻の演技だった。悩み、過ちを犯し、苦しみ迷い続ける“みち”の心情を表す場面は、どれをとっても奈緒ではなく“みち”そのもの。役が憑依していたといっても、納得のクオリティだ。

元々2組の夫婦が織りなす複雑な関係性が魅力の同ドラマ。繰り返し視聴することで奈緒をはじめとしたキャスト陣の演技の意味を新たに発見したり、“別の解釈”も見つかるほど奥が深い作品でもある。

同作は2023年11月22日にBlu-ray&DVD BOXを発売。Blu-ray&DVD BOXには法人別オリジナル特典としてL判ブロマイドセットやカレンダー、オリジナルフォトなどの豪華特典がつく。それぞれにメイキングやインタビューなどの特典映像も用意されているという。

いま、最も注目を集める大ブレイク女優・奈緒。ドラマや映画の役柄ごとに見せる表現豊かな演技力はまだまだ底を見せない。カメレオン女優が次はどんな色で現れるのか、いまから次回作が待ち遠しい。

実力派女優・奈緒が注目される理由 「あなたがしてくれなくても」で見せた共感を呼ぶ演技の説得力/※提供画像