『令和4事務年度 所得税及び消費税調査等の状況』より、過去最高となった追徴税額・申告漏れ所得金額をみていきましょう。

所得額の申告漏れが深刻…追徴税額は脅威の「1,368億円」

令和4年7月から令和5年6月までの間、国税庁がおこなった所得税の実地調査(特別調査・一般調査・着眼調査)の件数は4万6,000件。簡易な接触を含めると63万8,000件で、このうち申告漏れ等が発見されたのは33万8,000件でした。

調査全体での申告漏れ所得金額は9,041億円、追徴税額は1,368億円にものぼり、過去最高となりました。1件当たりの申告漏れ所得金額は1,456万円です。

「事業所得を有する個人の1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な業種」には、1位「経営コンサルタント」(1件当たりの申告漏れ所得金額3,367万円)、2位「くず金卸売業」(同2,483万円)、3位「ブリーダー」(同2,075万円)と少々意外にも思える業種がならんでいます。

さらに国税庁は、“有価証券・不動産等の大口所有者、経常的な所得が特に高額な個人、海外投資等を積極的に行っている個人など、「富裕層」に対して、資産運用の多様化・国際化が進んでいることを念頭に積極的に調査を実施しています。”(『令和4事務年度 所得税及び消費税調査等の状況』より)

富裕層に対しおこなった実地調査の数は2,943件。1件当たりの申告漏れ所得金額は3,331万円で、所得税の実地調査全体と比較して2.3倍となりました。申告漏れ所得金額の総額は980億円で過去最高を記録しています。

1件当たりの追徴税額は623万円、総額は183億円。特に海外投資等をおこなう富裕層に対しては、1件当たりの追徴税額は1,068万円。所得税の実地調査全体の274万円に比べ3.9倍となっています。

国税庁は経済のグローバル化に対応するため、海外投資の情報収集に努めています。海外投資をおこなう個人投資家や海外資産を保有している個人などに対し、国外送金等調書、国外財産調書、租税条約等に基づく情報交換制度のほか、CRS情報(共通報告基準に基づく非居住者金融口座情報)などを活用し、積極的に調査を実施。資産の申告漏れについて発見体制を強化しているようです。

「申告しなくたってどうせ…」が命取り

富裕層のほか、インフルエンサーやインターネット上のプラットフォームを介して行うシェアリングエコノミー等新分野の経済活動(ネット広告・アフィリエイト等、ネット通販、ネットオークション等)に対する調査も積極的におこなわれています。

先月には、2021年までの5年間で約9,500万円の申告漏れがあったインフルエンサーに対し、4,000万円の追徴課税がおこなわれたことも明らかになりました。

無申告や申告漏れがあると、適切に納税している納税者に強い不公平感をもたらします。今後も国税庁は厳格な対応を続けていくでしょう。

「申告しなくてもどうせバレないでしょ」…ということは決してありません。勤務先以外からの収入のあるすべての人が申告漏れと追徴課税を自分ごととして捉える必要がありそうです。

(※写真はイメージです/PIXTA)