インターネットの掲示板に「殺処分でいいやん」と書きこまれ、精神的な苦痛を受けたとして、身体障害者の男性が投稿者に約195万円の損害賠償を求めた裁判で、前橋地裁(神野律子裁判長)は12月8日、約96万円の支払いを命じる判決を言い渡した。(ニュース編集部・塚田賢慎)
原告は群馬県前橋市に住む40代男性で、脊椎骨端異形成症という障害があり、1人で生活することは困難だという。
2022年4月、前橋市を相手取り、24時間体制の介護サービスを求める義務付け訴訟を起こしたところ、「こういうゴミクズはマジで死んで欲しい 一体何が目的で生きてるのか意味が不明」 「安楽死させよう 生産性のないやつは生きる価値無し」などと中傷が相次いだ。
男性が匿名の投稿者らを特定していく中で、何人かは謝罪し、示談に至ったという。今回の裁判の被告を含め、争う姿勢を示した2人に損害賠償をもとめて提訴していた。
判決文などによると、男性は「殺処分でいいやん」という投稿が、自らの生存意義や人格的価値を否定する差別的な言論「障害者ヘイト」であり、名誉を傷つけ、侮辱するものだと主張した。障害者が大量に殺された「相模原殺傷事件」を想い起こし、恐怖を感じたという。
これに対して被告側は、短文で一言であるため、社会的評価は下がらないなどと反論し、請求棄却をもとめていた。
前橋地裁は、投稿による男性の社会的評価の低下は認めがたいとの考えを示した。一方で、男性の生命を著しく軽視し、動物に使う言葉を用いるなど、「極めて不当な表現方法で男性の人格を否定した誹謗中傷」だとして、名誉感情の侵害を認めた。
また、慰謝料の算出にあたって、被告が「地球を隅々まで探してもこんな社会的処理困難物はない」といった侮辱表現を答弁書に書くなどした対応も踏まえ、投稿による男性の精神的苦痛は軽減していないとして、「短文で、1回であること等を考慮しても、慰謝料額は60万円と認めるのが相当」だとした。残りは、発信者情報の開示請求などにかかった費用。
原告側代理人の下山順弁護士は「障害者ヘイトは許さないということ、軽い気持ちでもこのような投稿をすると厳しい民事責任を問われるということをしっかりと示してもらった」と評価。「1回の短文の投稿で60万円というのも、他の案件と比べれば大きいと思う」と話した。
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