現代アート最前線の地であるニューヨークを拠点に活動する現代美術家・松山智一さんの日本初となる大規模な個展「松山智一展:雪月花のとき」が2024年3⽉17⽇(⽇)まで、弘前れんが倉庫美術館で開催されている。

【写真】それぞれの絵画に合わせた壁が作られており、鮮やかな色使いと唯一無二の曲線が作品の魅力を引き立てる (C)「松山智一展:雪月花のとき」(弘前れんが倉庫美術館での会場風景) Photo:Osamu Sakamoto

総展示面積1200平方メートルを超える美術館個展は、松山さんにとって初の規模であり、現代アートに興味がある人はぜひ足を運んでほしい個展のひとつだ。

現代美術界の気鋭アーティスト・松山智一

松山智一さんは、ニューヨークを拠点に活動し、鮮やかな色彩と精緻な描線による絵画や、キース・ヘリングやバンクシーが作品を描いたことで有名なニューヨークのSOHOにあるバワリーミューラルでの壁画制作、新宿東口駅前広場に位置するパブリックアート「花尾」(2020年)、創建100年を迎える明治神宮の屋外彫刻展で展示された「Wheels of Fortune」(2020年)など、大規模なパブリックアートプロジェクトも手がけており、大胆さと繊細さを併せ持った作品が魅力の現代美術家。

PEANUTSの世界観を世に広めるためのアートプロジェクト「PEANUTS GLOBAL ARTIST COLLECTIVE」のひとりに選ばれ、スヌーピーとコラボしたり、人気アーティストゆずのデビュー25周年記念アリーナツアーのステージアートビジュアルを手掛けたりと活動の幅が広く、既存の価値観にとらわれない松山さんの作風は世界から注目を集めている。

■近年の代表作を一望の下に紹介

出品作品には、ニューヨークのスタジオで大人数のスタッフと共に制作を行ってきた松山さんが、コロナ禍でスタジオ制作ができなくなったとき、遠隔でスタッフたちとの制作を試みた「Cluster 2020」(2020年)や、たった一人で制作した「Broken Train Pick Me」(2020年)など、コロナ禍を通じて松山が創作活動の意味を問い続けた近年の作品群や、ミュージシャンのゆずからの呼びかけで実現したコラボレーションによる「People With People」(2021年)など、松山さんの活動を代表する作品が含まれており、代表作を一望できる貴重な機会だそう。

■初公開の新作、および日本未公開の作品を多数展示

本展では、新作9点を含む、日本初公開作品23点に加えて、近年の絵画や彫刻、計30件が紹介されている。洋の東西や時代を超える多種多様なイメージ群のコラージュから生まれた緻密な絵画、パブリック・アートとして屋外設置されることも多いステンレス・スチール製の立体作品といった松山さんの代表的な作品に加え、日本では初公開となる極彩色の立体作品2点「Mother Other」「This is What It Feels Like ED.2」(ともに2023年)が出品される。これらは、嵌玉眼(かんぎょくがん)や京都の截金(きりかね)職人による截金文様などの伝統技法と、FRPにポリウレタン塗装という、新旧の彫刻技法が融合された作品で、細部までこだわりを持つ作品から松山さんの熱い思いが感じられる。

■制作の背景を知ることのできる展示構成

松山さんの制作は、作家が日常的に行っている伝統的な美術に関するリサーチと、日常生活の中で収集した大量のイメージ群とが、自在に組み合わされることで生まれるそうだ。1枚の絵画作品、1体の彫刻が生まれるには、10から20にも及ぶようなイメージのレファレンスがあり、それらが松山さんの手によって組み合わされていく。本展では、普段目にすることのできない、こうした制作の過程で引用された資料やスケッチなどが紹介されており、さまざまな角度から松山さんの作品世界の一端を解き明かすことができる。

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ニューヨークを拠点に活動する現代美術家の松山智一さんの日本初となる大規模な個展「松山智一展:雪月花のとき」が開催