現在、Huluで独占配信中の韓国ドラマであるHuluオリジナル「プレイ・プリ」は、女子大生と超人気アイドルのヒミツの恋を軸に展開されるストーリーが視聴者の心を掴んで人気急上昇。“Huluアジア・韓国ジャンルの週間ランキング”で1位を獲得した。この作品の原作は、2F(イエフ)作の韓国発webtoon「プレイリスト」(日本では「LINEマンガ」で配信中)で、数多くの海外ドラマを配信してきたHuluが、初めて制作したオリジナル韓国ドラマとなる。

【写真】平凡な女子大生と超人気アイドルの秘密の恋を描く韓国ドラマ「プレイ・プリ」の一場面

■「プレイ・プリ」は、家族愛や夢も描く青春ラブストーリー

覆面シンガー“プリ”としてカバー楽曲を動画サイトにアップしている、表向きは平凡な女子大生・ハンジュ役を、6歳から子役として活躍し、「最年少千万女優(映画の観客動員数が1000万人を超えた俳優の事)」とも呼ばれるキム・ヒャンギが、超人気アイドル“レビ”ことドグク役を、新人俳優オーディションで5000倍の競争率の中から優勝してデビューしたライジングスター・シン・ヒョンスンが演じている。

プリの歌を気に入ったドグクが彼女のSNSをフォローした事をきっかけに、音楽を通じて2人が関係を深めていく青春ラブストーリーだが、家族愛や登場人物の成長も描かれ、深みのある作品となっている。

この作品のプロデューサーを務めるイ・ミナ氏は、日本でも大ヒットし、新たな韓国ドラマブームのきっかけとなった「梨泰院クラス」のチーフプロデューサー。大ヒットメーカーのイ・ミナ氏に、主演のキム・ヒャンギとシン・ヒョンスンの起用理由やウェブトゥーンの実写化について聞いてみた。

■「プレイ・プリ」は、音楽とストーリーのバランスに気を配った

――今回、日本との共同制作という事で日本の視聴者を意識した点はありますか?

イ・ミナ 日本における韓国ドラマが好きな層というのは、従来は40代以上の女性が多かったと思うのですが、最近はMZ世代や男性にも広がっていると聞きました。今回の「プレイ・プリ」は青春ロマンス物なので、新たに韓国ドラマを見始めた若い方々の期待に応えられる作品にしたい、という想いで制作しました。また、日本のドラマはストーリー性が重視されますが、「プレイ・プリ」は音楽ドラマでもあるので、ストーリーとのバランスにも気を配りました。

――日本のドラマや映画をご覧になったりもされたんですか?

イ・ミナ 今回の為にではなく、日本の作品は常に欠かさずチェックしています。最近、印象に残ったのは、「プレイ・プリ」と同じく音楽を扱った映画「キリエのうた」。岩井俊二監督は、「Love Letter」を韓国で公開された当時に観て大変感銘を受け、以来好きな監督なので、興味深く拝見しました。

―今回の「プレイ・プリ」もそうですが、最近、ウェブトゥーン原作の作品が非常に増えている印象です。“ウェブトゥーンの実写化”のメリットと難しさは、どんなところでしょうか。

イ・ミナ 最も大きなメリットは、結末が決まっているので、最後まで方向性がブレる事無く作れるというところです。そして、すでに多くの原作ファンがいるので、ある程度視聴者が確保されるという事も良い点です。難しいのは、実写化の際には構成やキャラクターを補う必要がありますが、そこで原作のファンを逃さないように、また、新たな視聴者を取り込む事が課題となります。その点に最も多くの時間を割きますね。

■予測可能な典型的なキャスティングは避けたかった

――「プレイ・プリ」の主演のキム・ヒャンギさんとシン・ヒョンスンさんの起用理由を教えてください。

イ・ミナ まず、誰もが予測可能な典型的なキャスティングは避けたかったんです。実は原作のキャラクターとシンクロ率100%の俳優が居たんですが、その方ではなく、キム・ヒャンギさんとシン・ヒョンスンさんにお願いしました。すごく悩んだんですが、手堅いキャスティングよりも、俳優の今まで見せた事の無い姿で新鮮さをアピールする方を選択しました。

キム・ヒャンギさんは、これまで多くの作品で少女のキャラクターを演じてきましたが、現在23歳で等身大の女性の役はまだほとんど無かったので、新たな姿を見せてくれる確信がありました。シン・ヒョンスンさんは、アイドルが持つ華やかなイメージと同時に、その裏にある平凡さや少年らしさがあって、この両面を自然に表現できる不思議な魅力がありました。それに加えて好感度も兼ね備えていて、役にぴったりだと感じたんです。

――シン・ヒョンスンさんに、RAIN(ピ)さんの若い頃の面影を感じました。

イ・ミナ そうですね。あと、チョン・ヘインさんに通じる部分もあると思いました。ヒョンスンさんは、男性美と少年美の間の魅力を持った俳優さんです。

――ギャップのあるキャスティング、という点では、ハンジュの父親役のヤン・ドングンさん。ヒップホップアーティストとしても有名な彼が“音楽に理解が無く、娘の活動に反対している父親”という設定なのが、面白かったです。

イ・ミナ ハンジュの父親は、娘が音楽をする事に対して表向きは反対しているけど、最終的には力になろうとする人物です。他の俳優には無い独特の演技の魅力があり、ミュージシャンの顔も持つヤン・ドングンさんが演じる事で、父がハンジュを応援する側に回ったとき、より深い感動を与えられるのではと確信して、キャスティングしました。意外性を感じていただけたなら嬉しいです。

リラックスした空気作りを重視する監督のおかげで、雰囲気の良い現場に

――先日、キム・ヒャンギさんとシン・ヒョンスンさんにインタビューした際、キム・ジョンチャン監督がとてもエネルギッシュにリードしてくださって、とても楽しい撮影現場だった、と話してくれました。

イ・ミナ キム監督は、俳優とスタッフのコミュニケーションをとても重視されている方なんです。例えば、俳優が役に合わせて準備をしてきても、現場の雰囲気によっては力を出し切れない事があるんですが、監督は俳優がリラックスして力を発揮できるような空気を作る事を一番に心がけていました。リハーサルの時に自ら演じてみせたり、実はエキストラとしてこのドラマに出演もしているんですよ。

――独特のワードセンスで「監督語」とも言える新しい言葉を次々に発しておられたとか…(笑)。

イ・ミナ そうなんです(笑)。気分が良い時や悪い時に「ヤルー!」って掛け声のように言ってたりとか(笑)。日本語の「やる」とは関係なくて、監督オリジナルの言葉で特に意味は無いようです。他にも、カメラとモニターの接続不良が起きた時に画面にノイズが入っていろんな色が混ざって見える様子を「ポックンパ(韓国語で「チャーハン」の事)」と言ってました。これも業界用語ではなく「監督語」です(笑)。監督が「ポックンパ!」と言うと、スタッフが飛んできて、コードを繋ぎ直して解決してました。そんな感じで、監督のおかげでスタッフもキャストもみんな笑ったリラックスして、雰囲気の良い現場でした。

現場の雰囲気やチームワークの良し悪しは不思議な事に作品に表れる。ヒット作や良作と呼ばれる作品は、ほとんどが俳優やスタッフから「楽しい現場だった」「チームワークが良かった」という声が聞かれている。「プレイ・プリ」でも、キム・ヒャンギは「現場で楽しんで演じたいと思うようになった」と言い、シン・ヒョンスンも「明るいエネルギーをたくさん貰えて、前向きな気持ちで撮影に臨む事ができた」と語っており、良い現場の中で持てる力を充分発揮でき、視聴者は彼らの演技や作品の世界観に魅きつけられたのだ。

「プレイ・プリ」は全8話構成だが、「もっと長く観たい」と惜しむ声も聞かれる。作品中に流れる数々の名曲を楽しみながら、ハンジュとドグクの恋と彼らが夢を追う姿を応援したい。

◆取材・文/鳥居美保

音楽を通じて繋がった女子大生と超人気アイドル。誰にもヒミツの恋の行方は…?/(C)HJ Holdings, Inc