日弁連は12月8日、臨時総会を開き、国選弁護や刑事の再審弁護活動に対する援助など全5議案がすべて可決された。

可決された議題は以下の通り。

●1〜3号議案:刑事弁護活動への支援

国選弁護でまかなわれない費用について、弁護士会が援助する仕組み。謄写費用や当事者鑑定の費用などを一部援助する。

また、逮捕段階からの国選弁護制度の拡充を目指して、勾留阻止や取り調べの立会い、遠隔地への接見などについて援助する。このほか、少年保護事件についても援助の幅を広げた。

会場の弁護士からは「国選離れ」の解決に向けた有効な対応策といった意見があった。

また、全国に先駆けて2021年12月から取り調べの立会いへの費用援助を始めた札幌弁護士会の弁護士は「やっと日弁連が追いついた」と評価。「今後は(札幌弁護士会同様)一度も身体拘束を受けていない被疑者についても援助の対象にしてほしい」と要望を述べた。

●4号議案:刑事再審弁護活動への支援

冤罪被害者の救済に取り組む弁護活動を援助する仕組み。弁護人に対する直接的な費用援助のほか、通訳や専門家による意見書の作成費用についても上限の範囲内で援助する。

再審に取り組む弁護士からは、再審事件弁護は弁護人のボランティア活動によって支えられてきたとして、「長年待ちわびていた制度」と歓迎する声があがった。

一方で、予算等からやむを得ないものの、再審事件にかかる労力等からすると援助額自体はなお低いことなどには留意してほしいとの意見もあった。

●5号議案:処置請求に対する取扱規程の一部改正

2023年5月に可決・公布された改正刑事訴訟法で、犯罪被害者の情報保護についての規定が整備され、弁護人が違反等したときに、裁判所や検察官が所属先の弁護士会に適切な処置をとるよう請求できる規定が設けられた(処置請求)。これに伴う会規の改正。

最終的には可決されたが、会場からは刑訴法改正の際の執行部の対応について、情報共有不足を指摘したり、「刑事弁護活動の制約につながるのに無抵抗だった」などと強く批判したりする意見があった。

●小林会長、弁護士不祥事に言及

小林元治会長は、可決した国選弁護や刑事再審弁護活動への援助について、「本来は国費をもってまかなうべきもの」と指摘。一時的に弁護士会が費用を出すが、「次のステップ」に向かわなくてならないと話した。

また近時、弁護士不祥事が目立つとして、「弁護士自治の根幹を揺るがすことが足元で起きている。心してこの問題にあたっていきたい」と呼びかけた。

一方で、今回の臨時総会での議題にはならなかったが、弁護士に対する業務妨害的な懲戒請求も課題になっていると言及。不祥事への対策を万全にするとともに、弁護士を守る制度設計の必要性も語った。

小林会長の任期は2024年3月31日まで。会長として総会で話すのは最後として、「何を引き継がないといけないか検証をしている。任期の間でできることは道筋をつけたい」とあいさつした。

なお、今回の臨時総会で初めて、弁護士個人のパソコンなどでのオンライン傍聴が可能になった。

日弁連臨時総会、小林会長「不祥事は弁護士自治の根幹揺るがす」 国選弁護や再審弁護の費用援助など5議案可決