※本記事には『葬送のフリーレン』に関するネタバレを含みます

 葬送のフリーレンとは、山田鐘人氏による原作のもとアベツカサ氏が作画を務める漫画作品。2020年より『週刊少年サンデー』にて連載中の本作は、コミックス既刊11巻の時点で累計発行部数1100万部を突破するほど人気を博し、2023年秋からはテレビアニメが放送されている。

 そんな本作のテレビアニメ第8話から第10話までが放送されると、そのあいだに登場したアウラという魔族が発したセリフヒンメルはもういないじゃないに加えて、フリーレンというエルフ魔法使いが放ったアウラ、自害しろ」という言葉がSNSなどを中心に、通称「アウラ構文」として話題となった。

 なおニコニコでは、テレビアニメ『葬送のフリーレン』の公式生配信や動画配信は実施されていないが、ニコニコの各種サービスでは二次創作が多数投稿されているのに加えて、ニコニコ大百科では「アウラ構文」など関連ワードのアクセスが急上昇した。

ニコニコ大百科週間HOTワードランキングでは、「アウラ構文」「葬送のフリーレン」「自害しろ、ランサー」など、関連ワードがランクインしている

 そこで本記事では、大魔族にして断頭台のアウラ」という悪辣な異名を持つアウラの紹介を中心に、彼女にまつわるアウラ構文」と呼ばれるフレーズについて、その経緯から徹底的に解説していこう。

■『葬送のフリーレン』のあらすじ

 本作の物語は、剣と魔法による戦いや幾多の魔族が存在する幻想的な世界を舞台に展開。その世界の中で魔王から人類の平穏を守るべく、人間の勇者ヒンメル、人間の僧侶ハイターエルフ魔法使いフリーレンドワーフ族のアイゼンら4人の冒険者が立ち上がる。

 しかし物語の本筋が始まった時点で、魔王は4人の力によって討伐されており、勇者一行の旅路が直接描かれるシーンは少ない。読者や視聴者は基本的に、人間よりも遥かに長い寿命を持つフリーレンの回想の中で、魔王討伐の旅の道筋を知っていくことになる。

■ヒンメルの死を受け、「人」を知るための旅に出るフリーレン

 テレビアニメ第1話の時点で、直接的な死因は明かされていないものの、勇者ヒンメルは老化によって寿命を迎えたように描写されているハイターフリーレンアイゼンの3人に、穏やかに看取られたうえで、死後は彼の功績や人となりを称える人々が涙を流した。

 またハイターアイゼンも加齢の影響を見せる一方で、エルフフリーレンはまったく歳を重ねる様子がなく、そのせいかヒンメルを埋葬する式で、彼女は地面に雫が落ちるほど多くの涙を流す。

 そして彼女は、ハイターアイゼンの隣りで「だって私、この人のこと何も知らないし。たった10年いっしょに旅しただけだし……。人間の寿命は短いってわかっていたのに。なんでもっと知ろうと思わなかったんだろう」という言葉を、嗚咽とともに漏らすのだった。

 その後、フリーレンヒンメルたちと訪れた数多くの地へ再び向かい、ヒンメルのみならず「人」を知るための旅に出る。すると旅の道中、ハイターアイゼンの介添えを経て、天国のような場所「魂の眠る地(オレオール)」が大陸の最北端にあることを知り、死後のヒンメルと直接言葉を交わすことを決意する。

 ところが北方諸国は、魔王を討たれてもなお人類の脅威であり続ける魔族たちが跋扈する地であり、オレオールへ向かう道すがら、フリーレンは必然的に魔族たちと対峙していく。そして何体かの魔族と遭遇した後、テレビアニメ第8話の終盤から第10話にかけて、フリーレンアウラによる直接対決が描かれる。

 直接対決とはいっても、第8話から第9話までは他キャラクターが登場するシーンの合間に、フリーレンアウラの掛け合いや前哨戦が描かれるだけで、勝負そのものは第10話の終盤において、アウラの死亡という形で一瞬で決着してしまう。

■「断頭台のアウラ」の異名を持つアウラとは?

 アウラとは元魔王直下の大魔族にして、「七崩賢」と呼ばれる特殊な幹部のうち1体。『葬送のフリーレン』公式Xの紹介によれば、人気投票で第10位を獲得したキャラクターだという。

 彼女が持つ「断頭台のアウラ」という異名は、アウラが行使する「服従させる魔法(アゼリューゼ)」使用後の行動に由来している。

 アゼリューゼは「服従の天秤」と呼ばれる秤に、自らの魂と敵の魂を乗せて魔力を比較し、より魔力が大きかった側が小さい側の肉体を自由に操ることが出来る魔法で、死後の肉体まで操作することが可能

 一方、魔力量と関係なく意志の強い者は一時的に抵抗できたり、第三者の魔法で解除できたりと複数の弱点もある。そこでアウラは、服従させた相手の首をはねることによって物理的に相手の意志を失わせ、先に殺しておくことで服従状態を解除する根本的な意味(被服従者の命を助ける)を喪失させている。

 このことからアウラアゼリューゼで操る軍勢は、首をはねられた兵士によって構成されているので、彼女は「断頭台のアウラ」という異名を持つに至ったようだ。

■「アウラ、自害しろ」というセリフはどうやって生まれたのか?

 本作の世界において、魔族やエルフのほか、特殊な人間などは相手がどれくらい魔力を持っているかを確認できる。もちろんアウラフリーレンとの対決で、相手の魔力量を確認し、絶対に勝てるという確信を持って、アゼリューゼを行使した

 しかし、いざアゼリューゼが実行されると、フリーレンの魂が乗ったほうに天秤の皿が傾き、アウラフリーレンの言うことをなんでも聞く状態となってしまう。そんな彼女に対して、フリーレンが放った一言が「アウラ、自害しろ」という端的なセリフだ。

 フリーレンは彼女自身の強さが周囲に露見しないよう、気が遠くなるほど長いあいだ、絶え間なく感知される魔力を制限する訓練を重ねていた。そのせいでアウラは魔力量を誤認してしまい、勝利を確信しながらも、最終的には自らの首をはねる結果となってしまったのだ。

 二つ名や階級を持つ敵の大幹部が、自害という方法で一瞬にして死んでしまう展開だけでなく、アウラが自らの首を落とす瞬間に発した凄惨な声や絶望の表情に、多くの視聴者から悲喜こもごもの反響が寄せられた。

 そして第10話の放送後、自らの命を断つこと、つまり究極の理不尽を強いるアウラ、自害しろ」というセリフは、短くもインパクトがあることから、SNSなどで各人が思う理不尽なことに言葉を置き換えた「アウラ構文として発信されていくこととなった。

 たとえば、理不尽な命令の置き換えとして「アウラ1日18時間労働しろ」としたり、アウラ、◯◯しろ」の命令部分にさまざまな言葉を入れたりと、様々な置き換え文が発信されているようだ。

■アウラ構文は「アウラ、◯◯しろ」だけじゃない

 しかしこの「アウラ構文」は、あくまでもフリーレンが発したセリフ。つまり「アウラ(にまつわる)構文」であり、「アウラ(による)構文」ではない。
 そこで次は、アウラ自身の言葉が発端となったヒンメルはもういないじゃないという一文についても紹介していこう。

 アウラヒンメルはもういないじゃないというセリフを口にしたのは、テレビアニメ第9話でのこと。アウラアゼリューゼによって形成した軍勢をフリーレンへとけしかける一方、フリーレンは死体を魔法で吹き飛ばして倒さず、手間がかかる服従解除の魔法で丁寧に無力化させていく。

 このときアウラは「魔力の消費も相当なものになるはず。どうしてこんな回りくどいことをするの? 前に戦ったときは派手に吹き飛ばしていたじゃない」と疑問を発する。対するフリーレン「後でヒンメルに怒られたんだよ」と短い言葉で、行動の意図を示していた。

 どうやらヒンメルが生きていた時代、勇者一行の旅路でアゼリューゼの軍勢と交戦した当時のフリーレンは、魔法で容赦なく死体を吹き飛ばして対抗していたようだ。

 ところがアウラは、死者を悼む行動や言葉の意味を解さずヒンメルはもういないじゃないというセリフを語る。その問答を最後に、フリーレンは「やっぱりお前たち魔族は化け物だ。容赦なく殺せる」と言葉を返すのだった。

 人間が持つ倫理観から著しく乖離したアウラもとい魔族の性質を表す「ヒンメルはもういないじゃない」という一文そのものが持つインパクトはもちろん、アウラ自身がやや多めに「◯◯じゃない」と話していたことも相まって、どんな文章にも「◯◯じゃない」を付ければ、アウラの言葉のように聞こえる視聴者が増加してしまったのかもしれない。

 このことからSNSなどにおいて、アウラへの感想や葬送のフリーレン』について話すとき、語尾に「◯◯じゃない」と付けて語り合う人々が原作読者を含めて増加し、「アウラ、◯◯しろ」よりも会話内での汎用性が高い「アウラ構文」として定着していったようだ。

 ちなみにアウラは「ヒンメルはもういないじゃない」と言う直前に「なら益々こんなことをする必要ないでしょ?」と話していたので、アウラの語尾が「◯◯じゃない」ということはまったくない。もちろん他のシーンでも、アウラによる普通の話し言葉を聞くことが可能だ。


 今回の「アウラ構文」に関する紹介は以上。しかしアウラはすでに物語から退場してしまったので、この構文に新しいセリフが追加されることはなく、よほどの展開がなければ今回どころか最後の紹介だと言える。

 アウラは死者を悼むことを理解しなかったが、それゆえに彼女に魅力を感じ、その死を悼む方は、SNSでの投稿やファン同士での語り合いに際して、ぜひ「アウラ構文」を使ってみてはいかがだろうか。

■関連リンク

ニコニコ静画で『葬送のフリーレン』のファンアートを見る
https://seiga.nicovideo.jp/tag/葬送のフリーレン

ニコニコ大百科で「アウラ構文」の単語解説を見る
https://dic.nicovideo.jp/a/アウラ構文

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