朝日新聞は7日、神奈川県警が同日朝、トヨタ自動車の高級車レクサス南アジア経由で北朝鮮に不正に輸出しようとしたとして、千葉市稲毛区の自動車・自動車部品の輸出入会社を関税法違反容疑で家宅捜索したと報じた。

北朝鮮は、金正恩総書記がレクサス「LX570」と見られる黒のSUVの運転席に座っている写真を公開したこともあり、日本車の輸入を隠そうとはしていない。

シンクタンクのC4ADSが2019年7月16日に発表した、国連安全保障理事会の制裁決議で禁止されている北朝鮮によるぜいたく品調達についての報告書によれば、北朝鮮は2015年から2017年にかけて、日本車256台を含む外国製自動車803台を輸入していたという。

調達はロシアの会社を通じて行われたとされ、日本車の内訳はレクサスを含むトヨタ車が211台、日産が43台、三菱自動車が2台となっている。

ちなみに、韓国の文在寅大統領が平壌を訪問した2018年9月には、レクサスLX570が複数台使われたとされる。

また、韓国の情報機関・国家情報院は2017年6月、金正恩氏が米韓による襲撃を恐れて自身の専用車であるベンツを使わず、部下に贈ったレクサスに乗って移動していると国会情報委員会の委員らに報告している。

こうした北朝鮮のぜいたく品調達の実態は、時折メディアの注目を集める。しかし筆者は個人的に、これがそれほど重大な問題だとは思わない。

なぜなら、北朝鮮の限りある外貨は、なるべくなら軍事目的から距離の遠いものに使われた方がマシだと考えるからだ。仮に北朝鮮が数千台のレクサスを揃えても、朝鮮人民軍の戦力が強化されるわけではない。そして、そこに使われた分の外貨は、核・ミサイル開発に回らないことになる。

もちろん、同じ密輸経路で先端半導体などが北朝鮮に持ち込まれたら問題なので、監視は必要だろう。

2018年9月18日、北朝鮮を訪問した文在寅氏と金正恩氏(平壌写真共同取材団)