全仏オープンの女子ダブルスで世界を騒然とさせる騒動に遭った加藤。(C)Getty Images

 各国で小さくない波紋を呼んだ“アクシデント”がふたたびクローズアップされている。

 北米スポーツを中心に取り扱うインド・メディア『Sportskeeda』は、「2023年のテニス界で最も感動的だった瞬間5選」と銘打った年末特集企画を実施。様々なドラマが描かれた今年のテニス界を彩った名シーンを振り返った。

【動画】波紋を広げた加藤の失格騒動。 物議を醸したボール直撃の瞬間をチェック

 ノバク・ジョコビッチの全米オープン制覇や、中国の張帥が、涙の棄権をしたハンガリー・ブタペストグランプリでの騒動など、ありとあらゆる出来事がピックアップされた。そのなかで同メディアが「これ以上の物語の締めくくりはない」と紹介したのは、今年6月の四大大会「全仏オープン」での加藤未唯の混合ダブルス制覇だ。

 前代未聞の騒動を乗り越えての世界制覇であった。

 決戦の4日前に加藤は、女子ダブルスの3回戦にアルディラ・スーチャディ(インドネシア)と参戦。サラ・ソリベストルモ(スペイン)/マリー・ブズコワ(チェコ)と対戦するも、試合中に行った相手コートへの返球がボールガールを直撃。大会のスーパーバイザーが介入した審議の結果、「危険行為」と見なされて失格となったのだ。

 判定直後に「わざとやったんじゃない」と涙ながらに訴えるも、加藤へのジャッジは覆らず。最終的に28歳の日本人は女子ダブルスで得た賞金とポイントを剥奪され、罰金まで科された。

 あまりの出来事に伝統ある全仏の組織も「非常に間違った決定だ」(西岡良仁コーチを務めるクリスチャン・ザハルカ氏談)と批判されたショッキングな決定だった。ゆえに当時の加藤がメンタル的に相当な負担を受けていたのは、想像に難くない。しかし、彼女は中4日で迎えた混合ダブルスにティム・プッツ(ドイツ)とのペアで出場。4-6、6-4、10-6のマッチタイブレークにもつれる激闘を制し、グランドスラムでの戴冠を果たした。

 このとき、加藤は試合後の優勝インタビューで「ここまではチャレンジングな日々でした。精神的にも大変でした。ここ数日特に大変でした。女子のダブルスからいろんなことがありました」と振り返りながら、「女子ダブルスで対戦したペア、サラとマリエにも、また良い試合をしたいと私は願っています」と語っている。

 そんな彼女のドラマチックな戴冠劇に、『Sportskeeda』は「ミユ・カトウは、ファンやテニス関係者から失格を言い渡された行為が『故意ではない』と圧倒的な支持を得ていたが、失格となった」と騒動を振り返ったうえで、こう記している。

「世界を巻き込んだ騒動から4日後、加藤は全仏オープン混合ダブルスで見事に栄冠を掴んだ。会場がスタンディング・オベーションで彼女に敬意を表し、グランドスラムを締めくくる。これ以上に素晴らしい物語のエンディングがあるだろうか?」

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

海外メディアが「23年の最も感動だった瞬間」に加藤未唯の“前代未聞な全仏戴冠”を選出「素晴らしい物語のエンディング」