1999年のソロ活動から25年目の活動となるGACKTさん(以下、敬称略)。アーティストとしての活動のほか、俳優としての存在感も知られている。2019年に公開された映画『翔んで埼玉』は大ヒットを記録し、第43回日本アカデミー賞では優秀賞を最多の12部門で受賞。自身は埼玉解放戦線のリーダー・麻実麗を演じ、優秀主演男優賞を受賞した。

 そして現在、舞台を埼玉から関西にまで拡大させ、これまたヒットを飛ばしている続編『翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~』が公開中。今回、彼らの前に立ちはだかる大阪府知事の嘉祥寺晃を演じる片岡愛之助さんとの貴重なBLシーンの裏側や、衝撃の“乳首ドリル”についても話を聞いた。

◆喉の調子が100%ではなかった

――まずは大ヒット作続編の、クランクインの瞬間の気持ちをお聞かせください。

GACKT喉の調子がまだ100%戻っているわけではなかったので(2021年から翌年まで、体調不良と発声障害による活動休止をしていた)、どれくらい持つのかなという不安がありました。

 ただ、とにかくやれるだけやろうという気持ちでした。前作と同様に、また過酷な撮影が数か月始まるのかという思いがありつつも、「みんなを待たせてしまった」という気持ちもありましたから。だけど面白いものができるかどうかなんて、正直わからないじゃないですか。だからやれるだけのことはやろう、という気持ちでした。

――手ごたえを感じ始めたのは。

GACKTそんなのないですよ。全くない。正直、面白いものになるのかどうかというのは、武内(英樹)監督の腕にかかっているので。だって、ボクらとしては、現場で実感なんてないんですから。やっているときはひたすら真剣に演技しているだけです。逆に現場で面白いと感じてしまうものって、結局身内ウケになってしまってダメになることが多い。スクリーンの外まで届ける面白さに、武内さんはこだわって作っていたので、それには客観性が必要なんですよ。

◆撮影終了まで「これ、本当に大丈夫かな」

――では大丈夫かなというのは。

GACKT「これ、本当に大丈夫かな」「どうやって面白くするのかな」といった気持ちは撮影が終わるまでありましたよ。でもとにかく武内さんが求めていることに100%応えていこうと。現場では「うわあ、面白いな」とは、ボクだけじゃなくて、ほかの役者の方たちもおそらく思っていないというか、わかってないと思いますよ。というか、面白くやろうとやっている役者は怒られますから。「そういうの、いらないから。もっと真剣にやってください」って。

――なんとなく分かります

GACKTお笑いの人たちとか、役者の中にも、面白くしたくてアドリブをやったりする人もいると思うんですけど、武内さんはそういうのはバッサリ切るので。だからボクらはただひたすら真剣に演技をしていました。

◆愛之助に顔を舐められる場面を提案

――口元のたこ焼きソースを、愛之助さんが舐めとるシーンが衝撃でした。あのときの心境を教えてください。

GACKTこの映画ってBLが主体になってるんです。漫画家の魔夜峰央先生の作品が基ですからね。でも実際に演技をしている主体は(二階堂)ふみちゃんだったり、杏ちゃんだったりと、女性なんです。だからBLにならない可能性のほうが高い。

――言われてみるとそうですね。

GACKT唯一、ボクの絡む男性が愛(愛之助)さんだった。撮影の前に愛さんにそれを説明して「ここは唯一BLが実現できるシーンなので、それが垣間見える感じでやりませんか」と。監督も任せますと言ってくれたので、最初は単純にたこ焼きを食べさせる感じだったんですけど、それだとただの洗脳に見える。若干でもBL感が出せる不思議な絵になるようにと顔にたこ焼きソースをつけて、それを愛さんが舐めるという感じになったんです。

――ご自身の発信だったんですね。

GACKT「こういう感じでやりましょう」となって。愛さんが「舐めていいんですか?」と言うので、ボクが「どうぞ、どうぞ。ご自由にお舐めください」、愛さんが「では失礼します」と。そんなことをリハーサルも含め、ふたりで真面目にやっていました。

乳首ドリルシーンに「できないはない」

――あの、乳首ドリル吉本新喜劇のギャグ)のシーンも、個人的には新喜劇も大好きなので、すごく楽しませてもらったのですが、「これはさすがにNG」とはならなかったのでしょうか。

GACKT基本的にそういうことはないですね。ただ関西だと乳首ドリルをやって普通に関西弁で突っ込むじゃないですか。でも麻実麗は関西弁では突っ込まない。だから、「それって、新喜劇のギャグだってわかるんですかね」「関西弁じゃなくていいんですよね?」「観てる人はわかりますよね?」とか、そういう確認作業はありました。でも監督がそれでいいといえば、もうOKですから。ボクとしては、そのシーンで監督が望むこと、やってほしいことを、「それはできない」ということはないです。

――関西ネタとして、面白いなと思ったものを教えてください。

GACKT関西ネタというか、加藤諒くんが、白い粉に毒されて身体を張った新喜劇のギャグをやるんです。それを、本番が始まるまでの間、横でひとりで黙々と練習しているのを見たときに、「何やってるんだろう」と思いました。けど、とにかく一生懸命やってましたからね。役者魂を見ました。

◆ここ数年の年イチ、ラーメンはつけ麺

――ご自身についても、いくつか教えてください。関西と言えば、学生時代の思い出の地、京都に帰って博多長浜ラーメンを年に1度食べるのが楽しみだそうですが、その習慣は今も変わらず続けていますか?

GACKT最近は行ってないですね。このところは、東京にあるつけ麺「いし井」という店で、毎年一回、貸切にして仲間たちと集まって、新年会をやるようになっています。

――本作では嘉祥寺(片岡愛之助)たちの総攻撃を受けて、麻実麗たちがピンチに陥りました。最近、GACKTさんがピンチ、絶体絶命になった体験を教えてください。

GACKT少し前に、福島の檜原湖っていう湖に釣りに行ったんです。そこで、人生で一番の極寒を体験しました。あまりの寒さに、全ての感覚がなくなるほどの状況でしたが、人生初の五枚重ね着でなんとかクリアーしました。もう、冬には二度と行かないと固く誓いました。

◆仕事とプライベートの比率を変えている

――日刊SPA!のキーワードは“ホンネ”です。普段、社会やご自身とホンネで向き合い、感じていることは何かありますか?

GACKTこの現代社会は、ホンネと建前で構築された世界です。だからホンネだけで政治が行われると、国は崩壊するんじゃないですか? ボクは政治の世界も茶番劇に感じることが多いです。これはこれで、真意を汲み取っていくと非常に面白いものだと思っていますよ。

――最後に『翔んで埼玉』シリーズでは、埼玉解放戦線のリーダーを演じていますが、人生100年時代と言われる今、これからのご自身の人生で、新たに解放していきたいと思うこと、分野を挙げるならどんなことでしょう。

GACKT残された自分の時間を、もっと大切に生きていくことが何よりも大事だと思っています。なので仕事とプライベートの比率を、かなり変えていくようにしています。

<取材・文/望月ふみ ヘアメイク/タナベコウタ スタイリスト/Rockey>

【公開情報】

翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~』は全国公開中

(C) 2023 映画「翔んで埼玉」製作委員会


【望月ふみ】
ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画周辺のインタビュー取材を軸に、テレビドラマや芝居など、エンタメ系の記事を雑誌やWEBに執筆している。親類縁者で唯一の映画好きとして育った突然変異 Twitter:@mochi_fumi

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