11月15日「いい遺言の日」に、Authense法律事務所は遺言書の現状を把握することを目的とした調査結果を「遺言書年報2023」として発表しました。調査では、「遺言書の意識調査」や「親の相続経験」、「生命保険と遺言書」などについて、Webアンケートを実施しています。本記事では、その結果の一部について同所の三津谷周平弁護士が解説します。

50代以上は遺言書に前向きな印象も、作成予定がある人は…

50代以上のシニア層は、遺言書に対してどのような印象を持っているのでしょうか?

今回のアンケート結果(全国の50~70代以上の男女721人に対して実施)によると、65%のシニア世代は「前向きな印象」と回答しました。しかし、遺言書を作成する予定があると答えた方はわずか「8.5%」という結果になりました。

遺言書を作成する予定がないと回答した人に理由を聞いたところ、「自分の遺産が少ない」「まだ元気だから」「まだ自分事ではないから」という回答が上位を占めました。

遺言書に対する若い世代の考え方は?

20~40代の若い世代にも同じアンケートを実施しました。今回のアンケート結果(全国の20~40代の男女727人に対して実施)によると、20代も大多数が遺言書の作成予定はない、と回答していますが、26.7%は「作成予定あり」と回答しました。

これは、遺言書を作成する予定が「ある」と回答した50代の割合よりも20代が0.1ポイント高い結果となりました。

遺言書を作成する予定のある人に理由を聞いたところ「自分の考えるとおりに財産を分配したいから」「相続させたくない人や財産があるから」「子供の認知のため」が上位を占めました。

家族と「遺言」についての会話意向について調査

全国の50代以上の男女721人に、子どもと遺言について会話をしたかアンケート調査を行いました。子どもに遺言について「すでに話している」割合は年齢とともに増加し、70代では18.3%、「話したい」「話すつもり」も含めると62.5%となりました。

しかし、遺言について「すでに話している」人の約半数は、遺言の作成意向が「ない」とも回答しています。ここに矛盾が生じており、日本人の遺言書作成意向の低さが見て取れます。

50代以上のシニア層に、これまで親の相続を経験したかどうかについて聞きました。親の相続時に遺言書があった割合も9.9%と低率ですが、あってよかったと思う人は80%と高い結果となりました。

遺言書は、相続を経験した際に遺言書があったことで初めてそのメリットを感じられるものなのかもしれません。

生命保険には加入するが「遺言」には無頓着

全国の20~50代男女1,085人に、生命保険と遺言書に関するアンケートも実施しました。

死亡保険に加入している方は11.5%が遺言書を作成する予定が「ある」と回答していますが、がん保険や医療保険のみに加入している方はそれぞれ7.9%、6.6%と減少しています。

死亡保険に加入している人でも10人に1人しか遺言書の作成を考えていないという結果になりました。

遺言書は若いうちから作成し、変化に合わせて書き換える

遺言は自分が亡くなったあとに、生前持っていた自分名義の財産を、誰にどのように遺すのかについての意思表示をするもので、それを書面に残したものが遺言書です。

遺言は15歳から残すことができますが、実際に遺言の相談が多い年齢層は、「死」への具体的なイメージが出てくる70歳以降の方といわれております。

もし若いうちに万一のことが起こった場合、生命保険に加入していれば、いくらかのお金は遺された家族の手に渡るかもしれません。

しかし、将来のためにと自分で築き上げてきた財産は、残された相続人がきちんと話し合いをしない限り、きちんと相続人の手には渡りません。これまで大切に積み上げてきた財産が、自分の思ったとおりに相続人に渡らなかったり、相続人同士で争いが起こることもあり得ます。

いつなにが起こるか分からない人生だからこそ、当事務所は、万一に備えて、遺言書を若いうちから作成し、ライフステージに合わせて書き換えていくことが大切だと考えています。

三津谷 周平

Authense法律事務所

(※写真はイメージです/PIXTA)