十字路ではなく、一方の道路にもう一方の道路がクランク状に交わっているという変則的な交差点が多々見られます。そのまま直進すれば行き止まりになるため、S字カーブを描いて“直進”する交差点、なぜできたのでしょうか。

なぜ直進道路がズレている? 実は昔からだった!

一般的な十字路と思いきや、直進すると“行き止まり”――直進方向の道路が真っすぐではなく、ちょっとズレているという交差点が、東京の多摩地区では多々見られます。直進車もいったん左折ないし右折をし、さらにハンドルを反対に切って交差点を抜けていくという、変則的な動きを強いられる箇所です。

たとえば、武蔵野市役所に近い「武蔵野中央交差点」。幹線道路である五日市街道に対し、市役所方向の中央通りと、三鷹駅方向の三鷹通りが20mほどズレて交わっています。一般車もバスの通行も非常に多い交差点ですが、中央通り~三鷹通りの直進車はS字カーブを描いて次々と通過していきます。

この近くでは、青梅街道に府中道という古道が交わる西東京市「田無町五丁目」交差点、同じく青梅街道と府中街道の幹線道路どうしが交わる小平市小川町」「小川町西」交差点などが同じような構造で、いずれも府中道・府中街道が青梅街道に対しクランク状に交わっています。なぜこのような変則的な交差点ができたのでしょうか。

古い地図でこれら交差点の成り立ちを調べたところ、それぞれ100年以上前から同じ構造が見られたようです。

武蔵野中央交差点がある吉祥寺周辺は、江戸時代に移り住んできた農民に対し、幕府が五日市街道の両側の土地を細長い短冊状に切り分けて与えたことが知られています。その土地と土地の間の道が、武蔵野中央交差点の線形に一致しました。青梅街道へクランク状に交わる田無の府中道、小平の府中街道も、昔からあの線形のようです。

こうしたクランク状の道や交差点は「かぎの手」などと呼ばれ、城下町や宿場町でよく見られる線形なのだとか。道をわざとクランク状にすることで、敵の侵入の勢いを弱めたり、宿場の出入りを監視したりする目的があるといわれます。このように古くからの街道へ、別の街路がクランク状に交わっている交差点は、多摩地区では他にも見られます。

クルマにはクセが強すぎる!

道路の歴史も垣間見られるようなクランク状の変則交差点。しかし、現代の自動車交通にとってはやはり、クセのある場所と言わざるを得ないでしょう。

こうした交差点では、青信号を方向別に出すなどの工夫も見られますが、「武蔵野中央」ほどの交通量も多い交差点になるとそうもいかないのか、ここでは双方向の直進車がS字カーブを描いて通過していきます。

ここで怖いのが右折時です。対向の直進車もいったん左折の動きをするので、そのまま“左折”か“直進”なのか、判断がつきづらいところがあります。

この交差点東京都が拡幅を進められており、現状片側1レーンしかない三鷹通り側もレーンが増える見込み。そうなれば右折と直進の信号分離も可能になるかもしれません。

ちなみに、青梅街道に交わる「田無町五丁目」交差点の府中道は、右折待ちの余地もないため右折禁止になっています。小平の府中街道が交わる「小川町」「小川町西」は、クランクの“屈曲部”が長いため別々の交差点として扱われていますが、現在、「小川町西」交差点から真っすぐ南へ、バイパスである「新府中街道」が建設されています。これが開通すれば、わざわざクランク状に行き来する必要もなくなります。

武蔵野中央交差点。中央通りから三鷹方面へ直進する際にはいったん左折の動きを強いられる(乗りものニュース編集部撮影)。