小説家になろう」などのWEB小説投稿サイトから生まれた異世界転生作品が、日本中でブームを巻き起こしている、と言って過言ではない近年。12月8日に公開されたばかりの劇場版『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』(略称「はめふら」)もその一つであり、注目の的だ。実はいま、異世界転生系(=なろう系)というジャンルが確立されているなかで、あるキーワードがその人気をさらに押し上げている。それが“悪役令嬢”ものだ。悪役令嬢ものとはどんな作品のことなのか。解説と共に、ヒット作を連発しているその魅力に迫る。

【写真を見る】テレビアニメ第1期で破滅フラグを回避し、第2期で無事に魔法学園を卒業した悪役令嬢、カタリナが超特大の破滅フラグに見舞われる!?

■新たな異世界転生系として人気を博す“悪役令嬢”もの

悪役令嬢ものをざっくり説明すると、その名の通り、主人公が悪役の令嬢である作品のこと。主人公とは別にヒロインキャラが存在し、主人公は悪役として婚約者のヒーロー(攻略対象)とヒロインの当て馬になる哀しき運命にある。婚約破棄、国外追放、暗殺や死刑などなど…。そんな破滅の未来を覆すため、主人公が奮闘し、運命が変わっていくという物語が展開される。もちろんこれは一例であってすべてがこの内容に当てはまるわけではないが、代表的、あるいは典型的な例だ。その性質から物語の舞台が乙女ゲームの世界であることが多く、女性向けに思えるが、男性人気も高いのが悪役令嬢ものの特徴だろう。

■いろいろなタイプの“悪役令嬢”もの作品たち

では、多種多様な悪役令嬢ものの作品にはどのようなタイトルがあるのか。2023年も作品が豊富で、1月には「ツンデレ悪役令嬢リーゼロッテと実況の遠藤くんと解説の小林さん」がアニメ化。悪役令嬢リーゼロッテと婚約者ジークの恋路を、遠藤くんの解説と小林さんの実況が盛り上げ、よい方向に導いたりする、異色作だ。

現在も10月から「私の推しは悪役令嬢。」が放送中。本作は主人公が乙女ゲームのヒロインで、悪役令嬢が本作のヒロインという“異世界転生×悪役令嬢×百合”な変化球作品として人気を集めている。

2024年1月からは「悪役令嬢レベル99~私は裏ボスですが魔王ではありません~」が放送スタート。こちらは、主人公が悪役令嬢かつ魔王より強い裏ボスという、最強キャラな設定な点でも注目したい作品だ。

このように、アニメ化作品だけでも悪役令嬢ものは多岐にわたる。そして、このジャンルの人気を押し上げたのが、冒頭でも触れた「乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…」シリーズだ。

悪役令嬢に転生した日本の女子高生が“破滅フラグ”を回避するため奮闘!

本作は「小説家になろう」発の小説で、2020年4月にアニメ化。その圧倒的な人気を受け、2021年7月に第2期も制作されている。舞台は乙女ゲーム「FORTUNE LOVER」の世界。クラエス公爵家のわがままで傲慢な悪役令嬢カタリナに転生してしまった女子高生(声:内田真礼)が主人公。彼女を待ち受けるのは、よくて国外追放、最悪は死亡という、どちらにせよ“破滅フラグ”満載の運命のみ。

そんな破滅を回避するため行動するカタリナが、持ち前の能天気な明るさと現代日本の庶民的な感覚で異世界の常識をぶち壊したり、本来のヒロイン(ゲームの主人公)と仲良くなったりしていく。カタリナが攻略対象をトラウマや危機から救って破滅フラグを回避し、魔法学園を無事に卒業できるのか?というのが物語の大筋だ。

周囲の人物が超天然&人たらしなカタリナにどんどんほだされていく様子は見ていて気持ちがいい。それによって破滅フラグはどんどん消え、代わりに恋愛フラグが乱立。だというのに、カタリナ本人は色恋に疎く無自覚モテモテな鈍感系主人公、というところも本作のラブコメらしいおもしろさにつながっている。

カタリナが新たな破滅フラグに立ち向かう劇場版

テレビアニメ第1期、第2期でカタリナの魔法学園卒業までを描いた本シリーズだが、劇場版ではその先に待っていたさらなる特大の破滅フラグが到来!カタリナが魔法学園を卒業したあとのある日、異国から商人の一行がやって来る。そのなかにはどこか見覚えのある、謎めいた少年の姿が。この出会いがカタリナの身にかつてない事件を巻き起こしていく…。

なんと本作のストーリーは原作者、山口悟による完全オリジナルストーリーとなっており、まだ誰も見たことのない物語が紡がれる。カタリナは再び、破滅フラグを乗り越えられるのか。それはそれとして、今度はどのようにして人をたらしこんでしまうのか。ぜひスクリーンで“悪役令嬢カタリナの新たな奮闘を見届けてほしい。

文/リワークス(加藤雄斗)

“悪役令嬢”もののヒットのきっかけとなった「乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…」/[c]山口悟・一迅社/劇場版はめふら製作委員会