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via iNaturalist, CC BY-NC 4.0

 海を探索すると「船乗りの目玉」が見つかることがある。ぎょっとしたかもしれないが心配ご無用。これはえぐられた誰かの目玉ではなく、「バロニア・ヴェントリコーサ(Valonia ventricosa)」という藻類の仲間で、地球上で最大の単細胞生物のひとつだ。

 この「船乗りの目玉」の大きさは、針の頭ほどのものから、まさに眼球サイズのものまで様々だ。このぶよぶよした塊がどれくらいまで大きくなるかは、すべてその液胞の内容、つまり細胞壁の内側の空間によって決まるそうだ。

【画像】 つぶそうとするとたくさんの新しい目玉ができてしまう

「船乗りの目玉」という愛称で親しまれているバロニア・ヴェントリコーサ(Valonia ventricosa)は緑藻門に分類される藻類の一種で、世界中の熱帯および亜熱帯地域の海洋で見ることができる。

 単細胞生物なのに多くの細胞核を含むことができる。つまり、細胞壁で隔てられていない、多数の細胞核を含む細胞質の塊でできている。

 このユニークなお膳立てには、ちょっとしたおもしろい仕掛けがある。藻類である「船乗りの目玉」をつぶそうとしても、逆にさらにたくさんの新しい"目玉"ができてしまう可能性がある。

 これは、完全に新しい目玉に成長するのに必要な細胞核は、ひとつだけでいいためだ。

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見事ないぶし銀の船乗りの目玉 / image credit:Alexander Vasenin/Wikimedia/CC BY-3.0

神秘の藻類に遭遇するとダイバーたちもびっくり

 大きな個体の細胞質液胞内には、その中心から放射状に広がる葉状に組織された核が含まれていて、それがテスラプラズマボール(透明なガラス球の中心に高圧の電極を設置し、数種類の希ガスの混合気体を封入した器具)のようなものと言われる内部構造を作り出して構成している。

 約90%が水で構成されている「船乗りの目玉」は、世界の熱帯、亜熱帯の海のサンゴ礁でダイバーによってよく発見される。

 色は、明るいグリーンから黒までさまざまあり、細胞壁のセルロース結晶の独特な構造によって見事な銀色になることもある。

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手のひらに乗せた船乗りの目玉 / image credit:d99/iNaturalist/CC BY-NC

 NOAA海洋大気局がアラスカの海底で、エイリアンのような輝く球体を発見したとき、「金の卵」の謎と騒がれたことがあり、このきらめく色合いはそれを思い起こさせる。

 このきらきらした物体は、水深3.1kmの岩の表面に張り付いているのが発見された。なにより興味深かったのは、この謎の物体に穴があいていて、ある研究者が思わず"なにかが中に出入りしようとしている"と実況中継したという。

初めて目にした人にとってはびっくりな生き物だが、「船乗りの目玉」は、ただその日を平穏に生きているだけなので、見つけてもこの奇妙なぶよぶよをつぶしたりしないようにしよう。

[もっと知りたい!→]ただ反応しているだけではない。単細胞生物は自ら意思決定している可能性(米研究)

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船乗りの目玉こと世界最大の単細胞生物 / image credit:d99/iNaturalist/CC BY-NC

References:This “Sailor’s Eyeball” Blob Is One Of The Largest Single-Celled Organisms On Earth | IFLScience / This Eyeball-Looking Thing Is One of The Biggest Single-Celled Organisms : ScienceAlert / written by konohazuku / edited by / parumo

 
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「船乗りの目玉」と呼ばれる世界最大の単細胞生物