大人の社交場・銀座のクラブにホステスとして勤めているみずえちゃんと申します。師走ですね。初詣に行ったのがつい最近のことのように感じますが、あっと言う間に年末です。銀座はこれからが稼ぎ時ですからね。気合入れてせっせと働きます。

 その傍ら、ライターとしても活動しており、これまでに私がお酌をさせていただいたおじさま方との実体験をもとに、恋愛やモテに関する発信をしています。

◆1セット4000円のキャバクラで鏡月を空けまくったあの頃

 緊急事態宣言が発令されたり解除されたり、緊急事態宣言が解除されたと思ったら、今度はまん坊(まん延防止等重点措置)をやるとかやらないとか言い出したりで、なかなか銀座に出勤できなかった頃、ほぼ埼玉にある(とはいえギリギリ都内)某キャバクラに出稼ぎに行っていました。採用していただいたその日から一生懸命働きました。

 セット料金が確か、1セット4000円とかで、そこにサービス料とタックスが入ったとしても、かなり安く飲めるお店でした。すごく繁盛していて、銀座ではなかなかお目にかかれない鏡月がバンバン売れていました(笑)。

 お客様はというと、銀座で飲み歩いているような粋でいなせな遊び人、というよりはもう少し親しみやすいお父さん、という感じ。孫や娘のように可愛がってくださる方ばかりで、とても働きやすかったです。

 素敵な男性が大半だったおかげか、ごく稀にいらっしゃるちょっと変わったお客様のことを強烈に覚えていて、今でもたまーに思い出して「クスッ」となっています。ちょっと変わったお客様、今風に言えば「痛客」なんでしょうね。

 そこで今回は、「安キャバで出会った痛客の珍言動5選」を紹介したいと思います。痛いおじさんのフリ見て、我がフリ直せ。そんな機会になれば良いな、と思います。
 
◆①キャバ嬢の写真を保存し待ち受けにしちゃう

 某キャバクラで出会ったケイジ君(仮)は、少し若い方で恐らく40代。ひと昔前のアメカジ風なファッションで、いつもキャップを被っていたのを覚えています。アメカジというか、ひと昔前のサーファーみたいなロン毛のお兄さんでした。

 ケイジ君には指名しているお姉さんがいて、彼女を仮にケイコさんとしますが、私は彼女の支度が整うまでの埋め合わせ役、いわゆる「ヘルプ」として席に呼ばれました。「はじめまして」と挨拶をすると、ケイジ君は携帯電話の待ち受け画面を差し出して「見てこれ」と、おっしゃいました。

 待ち受け画面に設定されていたのはケイコさんでした。「仲良しなんですね」と私が言うと、彼は鼻を鳴らして、

「悔しかったらお前も頑張ればいいじゃん」

 と、おっしゃいました。自分の顔写真がお客様の携帯電話の待ち受け画面にノミネートされるのは、どちらかというと迷惑なことなのですが、どうでもいいし、そもそもすでに指名嬢のいるお客様への営業行為は原則禁止です。ひとまず「頑張ります」と答えました。

◆②コロコロ指名嬢を変え、「お前ら俺のために喧嘩をするのはよせ」とキャバ嬢を諭す

 それから約1週間後のこと。待機席でスマホをいじっていると「いらっしゃいませ」とスタッフの声がします。声の方をチラッと見るとケイジ君でした。でも、最初に会った日とはまた別のお姉さんを連れて同伴出勤しています。

 はにゃあ?と思って見ていたら、ケイコさんと私が席に呼ばれました。

「お前らもういいわ……俺、レナにするわ」

 ケイジ君はそう言って鼻を鳴らすと、携帯電話の待ち受け画面を私たちの方に差し出しました。待ち受け画面には、レナ嬢(仮)の写真が設定されていました。あーはん、そういうことね。いるんです。本命嬢(この場合はケイコさん)の気を引きたくてあえて別の女の子を指名するおじさん。ちなみに逆効果です。

 とはいえ仕事中なので、「えー、悔しい!」「いいなー」と、調子をあわせました。すると彼はまた鼻を鳴らして「お前ら俺のために喧嘩をするのはよせ」と私たちを諭しました。

 こんなにキャバクラを楽しむ才能のある人っていないと思います。

 ちなみに時給数千円の安キャバなので、ロッカールームはいたって平和です。誰もそこまで血眼になって指名本数にこだわっていません。どちらかというとケイジ君を譲り合い、押し付け合うムードがありました。

◆③口パクでGACKTの「ラブレター」を歌いきる

 後日、また待機席でスマホをいじっていると「いらっしゃいませ」と威勢のいい声がして、ケイジ君が現れました。その日、席に呼ばれたのは私オンリーでした。恐る恐る隣に座ると、

「いじけんなって……仲直りしようぜ」

 と、彼はおっしゃいました。喧嘩した記憶がないし、そもそも1度も仲が良かった覚えがないのでポカーンとしていると、「とりあえずカラオケでもすっか」ということになりました。

 郊外にある某キャバクラでは、10枚組になったカラオケチケットが1000円とかで売っていて、お客様はそちらを購入し、好きな女の子に歌わせたり、歌ったりして楽しむのですが、彼の遊び方はかなり独特でした。

 デンモクにGACKTの「ラブレター」を入れて、とおっしゃるのでその通りにすると、イントロが流れ始めます。やがて歌い出しの部分になるのですが、なぜか彼は歌いません。歌詞に合わせて口を動かし、私の目をじっと見て座ったままです。時々マイクにかかる吐息と鼻息しか聞こえません。これを毎回やられて、恐怖とストレスでめちゃくちゃ肌荒れしました。

◆④鳴りやまない電話

 ある日の帰り際に、「番号交換しよう」と彼がおっしゃいました。スタッフさんに相談した上で電話番号を交換し、その日はお別れしました。それから、「写真が欲しい」と連日ショートメールが送られてきます。待ち受け画面にして本命嬢の気を引きたい、という魂胆は見え見えでした。「恥ずかしいからできない」と、なだめて誤魔化すこと数日。

 今度は電話を掛けてくるようになりました。昼間は普通にOLをしていたので、めちゃくちゃ迷惑です。挙句、早朝の池袋駅のホームで「“ケイジ君大好き”って言って」とおねだりされ、スマホをぶん投げたくなりました。
 
◆⑤とうとうスタッフに叱られる

 その日は、終電に乗り遅れたのでタクシー乗り場でタクシーを待っていました。前方に並んでいた女の人がタクシーに乗り込もうとするのが見えて、そこへ横から男性が続きます。

 その後、「え、待って!なんで!?」と女性の声がして、車内から男性が押し出されました。見慣れたキャップとダウンコート。よく見なくてもケイジ君でした。恐らく、帰宅するキャバ嬢を待ち構えてコトに及んだのだと思います。怖すぎておちおちタクシーにも乗れません。

 もちろんスタッフにめちゃくちゃ怒られていました。

◆たぶん今日も元気に飲み歩いている君へ

 今回は、「安キャバで出会った痛客の珍言動5選」を紹介しました。キャバクラにおいては、おじさんの言うことは、「さすがです」「知らなかった!」「センスいいですね」と、全肯定するのが基本的にはよしとされていますから、まれに大暴走するお客様が現れてしまうのも仕方がないのかもしれません。

 キャバ嬢の社交辞令を鵜呑みにしすぎると危険です。あと、指名をコロコロ変えられても「いやん……悔しい」とはならないです。大好きな女の子がいるならまっすぐに愛しましょう。彼女がして欲しくないことを徹底的に行わないことだって立派な愛情表現です。

 今晩も節度を持って、楽しい夜遊びを。

<文/みずえちゃん>

【みずえちゃん】
1989年生まれ。新潟県長岡市出身。関西外国語大学卒業後、大阪市内の広告代理店に勤務する傍ら、キャバ嬢デビュー。結婚、離婚、地方の激安キャバクラを経て、現在は銀座ホステスとライターを兼業。X(旧Twitter):@mizuechan1989

現在は銀座ホステス兼ライターとして活動中のみずえちゃん