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窒化鉄で永久磁石 レアアース使用量削減へ

テクノロジーの面白い点は、その進化の度合いが想像を絶するものであることだ。例えば、iPhoneは1980年代のスーパーコンピューターの何千倍もの性能を持っている。

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米新興企業ナイロン・マグネティクス(Niron Magnetics)が開発中の「クリーンアースマグネット」もその一例だ。強力な磁石は人間生活のあらゆる場面で必要とされており、電気モーターを使用するあらゆるデバイスでゲームチェンジャーになる可能性がある。

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電気モーターの仕組み。ローター(左)をステーター(右)で回転させる。

自動車だけでなく、ドリルから潜水艦まで、幅広く使われる電気モーター。さまざまなタイプがあるが、その1つが永久磁石モーターだ。ローターには磁石が埋め込まれており、ステーター(ローターを取り囲む電磁コイル)が作る回転磁界によって回転する。

永久磁石のパワーはモーターの性能と効率に影響する。また、強力であればあるほど小型化することができるため、モーターのサイズや重量にも大きな影響を与える。

強力な永久磁石は、プラセオジム、テルビウム、ネオジム、ジスプロシウムなどのレアアース希土類)を使用している。実際には「レア」というほど希少ではないが、その抽出と加工は労働集約的で、大規模な採掘作業を伴い、有毒廃棄物が発生する。

EVメーカーには永久磁石を一切使用しないという選択肢もあるが、環境に配慮した代替品があれば非常に望ましいと言える。特に、レアアース磁石の需要はかなりの比率で伸びている。

ナイロンは、ゼネラルモーターズのベンチャーキャピタル子会社であるGMベンチャーズのほか、ステランティスやボルボカーズ・テック・ファンドからも投資を受けている。同社のクリーンアースマグネットは鉄と窒素(窒化鉄)を使っているが、どちらも一般的に入手可能で、持続可能であり、世界中から調達できる。

レアアースはそうではないため、供給安定性に懸念が生じる。2022年の世界最大の供給国は中国で70%、米国は第2位だが14%に過ぎない。

ナイロンによれば、クリーンアースマグネット持続可能なだけでなく、人気のネオジム磁石よりも優れ、全体的な性能が50%向上しているという。また、温度安定性に優れ、コストが安く、値上げの可能性も低く、環境負荷が75%少ない。電気モーターの設計においては、使用する材料を15~30%削減できるため、全体の小型化と軽量化につながる。

このテクノロジーは試験段階にあり、現時点では具体的なスケジュールを示すことはできないとナイロンは言う。そのため、レアアースを含まない磁石を使用したEVがショールームに並ぶのは数年先になりそうだ。


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