毎年12月になると南太平洋の島々に対して援助物資の空中投下、通称「クリスマス・ドロップ」が行われます。現在、航空自衛隊も参加していますが、その起源は70年以上前に偶発的に始まったものだとか。いったいどんな作戦なのでしょうか。

夜ではなく真っ昼間に堂々とプレゼントをお届け!

もうすぐクリスマス。航空自衛隊の一部の隊員たちも、12月になるとサンタクロースと化して活動しています。しかも、12月24日よりもかなり早い時期にある「作戦」を始めます。それが、南太平洋を舞台に毎年行われている「オペレーション・クリスマス・ドロップ」です。

オペレーション・クリスマス・ドロップは、防衛省における正式名称は「ミクロネシア等における人道支援・災害救援共同訓練」といいます。これは、アメリカ空軍が主体となって行っている作戦で、グアム島のアンダーセン空軍基地を拠点に、航空自衛隊などの輸送機が人道支援を目的にミクロネシア諸島の住民に生活用品などを空中投下するというものです。

今年(2023年)は11月29日から12月12日にかけて実施されており、今まさに派遣された自衛隊員らはサンタクロースになりきっています。

この訓練、実は70年以上の歴史を持つ伝統的な「作戦」で、その起源は第2次世界大戦終結直後の1951年にまで遡ります。当時、前出のアンダーセン基地に配属されていたアメリカ空軍の気象偵察航空隊に所属するWB-29偵察機が、ミクロネシアのカピンガマランギ環礁上空を飛行していた時、そこの島民たちが彼らに向かって手を振ってくれました。

それを見た隊員は、機内にあった資材をコンテナに入れ、パラシュートを付けて投下。島民にプレゼントしたのです。当時、カピンガマランギ環礁は電気も水道もなく、度々台風の被害を受ける貧しい島でした。そのようななかで、アメリカ空軍機による思いがけないプレゼントは、島民たちを喜ばせます。

島民に危害加えないよう、回収しやすいような配慮も

このように、当初は偶発的に始まった物資投下でしたが、翌年からは正式なオペレーション(作戦)として、アメリカ国防総省による管轄のもと毎年行われるようになりました。

なお、クリスマス・ドロップ作戦は人道支援という面もあるものの、実施しているアメリカ空軍や航空自衛隊にとっては災害救助および物資投下の訓練として行っている部分も大きいといいます。投下される物資は、住民や住居を脅かさぬよう、細心の注意を払って、回収しやすい海岸に近い海面に投下されます。

防衛省航空自衛隊がこの作戦に初めて参加したのは2015年のこと。1年目はオーストラリア空軍とともに小牧基地の第1輸送航空隊のC-130Hと隊員約20名が参加、以後毎年、その名を連ねるようになりました。

2019年にはアメリカ空軍、航空自衛隊オーストラリア空軍だけでなく、ニュージーランド空軍、またオブザーバーとしてバングラデシュマレーシアモンゴルなどアジア6か国も参加。ミクロネシアだけでなく北マリアナ諸島やパラオなど57の島にプレゼントが投下されています。

2020年はCOVID-19パンデミックを受けて、規模こそ縮小したものの実施され、2021年と2022年も例年通り行われています。そして、前出したように今年も「オペレーション・クリスマス・ドロップ2023」という作戦名のもと、その規模を昨年よりも拡大し、より多くの支援物資ミクロネシアパラオ、北マリアナ諸島の人々にプレゼントして回っています。

投下されるプレゼントの中身は、粉ミルクや食料品、衣類、学用品、おもちゃ、医療品から、漁網や建材まで多岐にわたるそう。これらの物品はグアムの住民や企業による寄付で集められています。

ちなみに、この作戦の時ばかりは、投下物資の箱の表面にカラフルなイラストを描いたり、乗員らがコスプレしたりします。実は、「オペレーション・クリスマス・ドロップ」を最も楽しんでいるのは、参加した米軍人や航空自衛隊員たちなのかもしれません。

「オペレーション・クリスマス・ドロップ」でグアム島を飛びたつ航空自衛隊のC-130H輸送機を、敬礼で見送るサンタクロース(画像:航空自衛隊)。