PK戦の末、3年ぶり2度目の天皇杯制覇を成し遂げた川崎フロンターレ

試合後、歓喜の涙に包まれる選手の中に、脇坂泰斗がいた。

“川崎のバンディエラ”中村憲剛がつけていた背番号14を昨年受け継ぎ、迎えた2年目、苦しいシーズンの最後に手にした「14番での初タイトル」。

個人としても今季J1でチームが8位に終わりながら、3年連続のベストイレブンに選ばれている。

そんなJリーグを代表する選手となった28歳が天皇杯決勝後の囲みで語ったことを一問一答形式で紹介する。

「自分たちから崩れないよう意識していた」

天皇杯を制しての感想)

苦しんで獲ったタイトルなので、すごく嬉しいです。

(序盤から押される展開だった)

昇格プレーオフなどで国立のピッチを見ていて、結構使い込んでるピッチ状況だったのでより慎重に入りました。

相手は押し込むような感じで、耐える時間が長くあったんですけど、そこでもう少し意図的にボールを動かせればもっと良かったです。やっぱりワンチャンスをモノにしてくる力が向こうにはあるので。

そういったゲーム展開だったので、自分たちから崩れない声掛けはいつもより意識して試合していました。

(チーム全体として硬さや緊張感はあったか)

特別なゲームですし、慎重に入るのは当たり前だと思うんですが、硬さというより慎重になっているなというのはやっていても感じました。

ただ前半は特に耐える時間が長かったので、その中でも後ろを中心に声かけできてたことは良かったんじゃないかと思います。そこを耐える力が今シーズンの終盤にかけて出てきているのは、今日の試合も生きたんじゃないかと思います。

(監督は「選手同士の距離感が遠くなり少し押し込まれた」と。ピッチ内ではどうだったか)

やっぱり前は行きたいですし、後ろは逆に数回でも背後に落とされると下がってしまいます。そこのところでやはりやっていても『距離が遠いな』というのは感じていました。

それをどうするのか。前を止めるのか、後ろが上げるのかをもっともっと…ゲーム中でやるのはなかなか難しいですけどそこをもっとやれれば良かったのかなと思います。間延びしてしまうとセカンドボールの拾い合いでは少し相手に分が出てしまうので。

縦の間延びが多かったので、奪った後も間延びしていることによってつけるところが遠かったり、つけた後にハマってしまったりといったところに繋がっていました。そこをどうするかは課題でもあります。

「もっと苦しいゲームで自分が勝たせるくらいの選手に」

PK戦までもつれる苦しい展開の中で勝ち切ってタイトルを獲得した)

今日に関してはもう、勝ちさえすればいいゲームなので。そこはやっぱりチーム全員の力で勝ち取ったものだと思います。

PKも前日に少しやるだけではなく、すごく前から練習してる選手が多かったです。そういった意味で“積み重ね”がやっぱりこういうゲームに出るんだなと感じました。

これをクラブとして繋げていくことがより大事だと思います。まだ今シーズンは終わってないので、ACL(※12日のアウェイ蔚山現代戦)をしっかり勝って今シーズンを締めくくりたいなと思います。

(14番を背負ってのタイトル、特別な想いは)

14番を付けての初タイトルに至るまで、色々ありました。今シーズン、特にリーグ戦はタイトル奪還を目指して戦った中で8位。目指したものに届かなかったです。

そういった意味でも天皇杯にかける想いはすごく強かったので、とても嬉しいです。

(今シーズンなかなか勝てない状況のなか、ピッチ上ですごく悔しがる姿があった。「報われた」と感じる部分は)

間違いなく個人の成長、選手として成長しているなと感じています。でも、もっともっと自分はできると信じてますし、足りないところも伸ばしていかないといけないと感じています。

その両方というか、成長は感じていますけどまだまだ成長したいですし、もっともっと上に行きたいです。もっと苦しいゲームで自分が勝たせるくらいの選手にならないといけません。

PK戦10人ずつ蹴った。あんなに長いのは初めて?しかもジェットコースターみたいな展開)

そうですね。僕の記憶にあるなかで、自分たちが経験してあんなに長いのはおそらく初めてです。ずっと心臓張り裂けそうでしたけど、味方をずっと信じていました。

(PKをずっと前から練習していたというのは具体的にどのくらい)

練習終わりにキーパーを捕まえてやっている選手がすごく多かったです。それはここ1,2カ月の話じゃないです。

やったりやらなかったりはあるんですけど、継続的にPKの練習を積み重ねていた選手が多かったので、そういった意味でもやっぱり積み重ねが大事だなと感じました。

(準々決勝のアルビレックス新潟戦より前?後?)

新潟戦(8月30日)より前からやっている選手もいました。

自分なんかは今シーズン終盤、ACLのパトゥム戦で初めて公式戦で蹴りましたが、その後もゲームで決めた感覚を持ち帰って練習したりしていました。それは各々みんなやってたことだと思います。視来くん…山根選手なんかもやっていました。

(チョン・ソンリョン選手のキックどうだった)

あんな隅に蹴られるとは思わなかったんでびっくりしました(笑)。キーパーの選手…カミくん(上福元直人)もそうですけど、PK練習していてもすごく上手いので、安心して見ていられました。

(最後にソンリョン選手が止めた。その時はもう涙が出ていた?)

あまり記憶にありません。みんな走っていたんですけど、崩れ落ちたという感じですかね。何か…あまり記憶にないですね。

「タイトルには絶対に貪欲に」

(苦しさが先に立った?)

ホッとしたというかそういう感じです。

(14番として初タイトル)

色々あった今シーズンは特に自分の中で、このタイトルこそ獲りたいとずっと思っていたので、余計に嬉しかったです。

天皇杯を掲げた瞬間)

すごく嬉しかったです。

(たとえ2,3年であったとしてもクラブがタイトルから遠ざかると若い優勝経験者が少なくなり、負の連鎖に繋がる)

もちろん昨年獲れれば良かったですが、2年連続無冠となるとそのままズルズルいってしまいかねないというのは感じていました。

タイトルってやっぱり、自分たちから掴みにいかないと絶対取れないものなので。それは昨年を含め、獲ってきたタイトルを経験しているからこそ言えます。

そこの気持ちが薄れていってしまうのは絶対よくないことなので、タイトルには絶対に貪欲に、チームとしてやっていかなければいけない。

そういう意味では、こういった苦しいシーズンの中でもしっかり掴み取ることができたということは、クラブにとって大きなタイトルだと思います。

(若い選手たちがこの大会最初の頃は出ていた。引っ張る立場になった中で彼らをどう見るか)

トレーニングから自分の力をすごく出そうとしていますし、そのフレッシュさが『自分たちもやらないとな』という気持ちにさせてくれます。

ただ、もっともっと求めていかないと底上げにはなっていかないと思いますし、また若い選手が簡単に出られるようではチームとしても劣化していくだけだと思います。

若い選手が自分の力でゲームを掴み取れるように、自分たちは練習からしっかりやらないといけないです。選手に求めることによって自分たちにも責任感が出ますし、相乗効果があります。

練習から意識高く、お互いが求め合ってやれればさらに強くなっていくんじゃないかと思います。

(タイトルを獲って、今の気持ちはどこへ向かっている?喜びの方が大きいか)

まず次のACLに向かっていますけど…そこに向けようとしています。今はやっぱり試合直後なんでまだ(笑)。

(3年連続のベストイレブン。しかも今年は8位のチームから選ばれた)

昨年は2位で選んでいただいて、その前の年は優勝していました。上位陣から多く選ばれて…もちろん嬉しいんですけど、今年のベストイレブンは順位が8位。

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より個人として評価していただいたというか、上位チームの素晴らしい選手より投票してくれた方が多かったので、驚きはありつつ少なからず手応えがあります。

今シーズン成長したという思いがあったので、評価していただけて嬉しかったです。

14番で掴んだ“初タイトル”…川崎フロンターレMF脇坂泰斗、天皇杯優勝後の一問一答 「積み重ねが出たゲーム」