※本稿は、チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩氏(三井住友DSアセットマネジメント株式会社)による寄稿です。

●政策金利は据え置きへ、声明で追加の金融引き締めに言及する文言削除なら、ハト派の印象に。

●ドットチャートが示唆する来年の利下げ回数は引き続き2回で、経済予測も大きな修正なしとみる。

パウエル発言も中立、全体でサプライズなし、利下げ期待が適度に残り市場は落ち着いた反応か。

政策金利は据え置きへ、声明で追加の金融引き締めに言及する文言削除なら、ハト派の印象に

米連邦準備制度理事会(FRB)は、12月12日、13日に米連邦公開市場委員会(FOMC)を開催します。今回は、FOMC声明やパウエル議長の記者会見に加え、FOMCメンバーによる最新の経済見通し(SEP、Summary of Economic Projections)が公表され、そのなかでメンバーが適切と考える「政策金利水準の分布図(ドットチャート)」も更新されます。そこで、以下、それぞれについて主な注目点を整理していきます。

まず、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標について、弊社は大方の予想通り、5.25%~5.50%で据え置かれると予想します。FOMC声明では、「今後入ってくる情報と、金融政策への影響を注視し続ける」という文言は維持されると考えます。また、「インフレ率を長期的に2%に戻すため、適切となり得る追加的な金融引き締めの度合いを決める際」の文言も残るとみていますが、削除の場合はハト派的な印象を市場に与えると思われます。

ドットチャートが示唆する来年の利下げ回数は引き続き2回で、経済予測も大きな修正なしとみる

次に、ドットチャートについて、前回9月時点では、2024年は25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利下げ2回、2025年は5回、2026年は4回が、それぞれ適切との見方が示されました(図表1)。今回、市場の注目は、やはり2024年の利下げ回数に集まっていますが、弊社は引き続き2回を見込んでいます。仮に、回数が増えれば、市場は素直にハト派の受け止めになるとみられます。

最新のSEPにおける、実質GDP成長率、失業率、インフレ率の予想値も、ドットチャートで示される適切な政策金利の水準に大きな変化がなければ、こちらもさほど大きな修正はないと思われます。前述のように、ドットチャートで示唆される2024年の利下げ回数が増え、また、2025年以降も増えるようであれば、SEPの経済見通しも悪化が予想されますが、現時点でそのように判断するほどの悪材料はないように思われます。

パウエル発言も中立、全体でサプライズなし、利下げ期待が適度に残り市場は落ち着いた反応か

そして、パウエル議長の記者会見での発言も市場の注目材料です。前回、11月1日のFOMC後の記者会見における主な発言内容は図表2の通りですが、ここからどの程度、パウエル議長の認識が変わったかを市場は探るものと思われます。弊社は、パウエル議長の発言について、総じて慎重かつ中立的な内容になり、市場が期待するほどハト派的なトーンにはならないと考えます。

以上より、今回のFOMCは、大きなサプライズはないとみており、利下げ期待が適度に残り、金融市場は落ち着いた反応を示すと予想します。なお、最近の米国のインフレが弊社の想定を下回って鈍化していることを踏まえ、弊社は直近で2024年の米金融政策の見通しについて、従来の利下げ見送りから、7-9月期に25bp、10-12月期に25bpの利下げ実施に変更しています。

(2023年12月11日

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2024年の利下げ回数は「2回」を見込む 23年12月FOMCの「注目点」を整理【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』を参照)。

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

(※写真はイメージです/PIXTA)