一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングのエグゼクティブディレクターの家村均氏が、フィリピンの現況を解説するフィリピンレポート。今週はコロナからの回復で活気づいている「フィリピンの不動産市場」、さらなる成長のカギを握るポイントをみていきましょう。

キーワード①「2つの成長セクター」のインフラ拡大

不動産リサーチ会社・Santos Knight Frankは、来年、再生可能エネルギーとデータセンターインフラの拡大がフィリピン国内の不動産セクターの成長を牽引すると予測しています。

同社は、世界的にデータセンターの需要が膨大でありうえ、フィリピンでもいくつかのデータセンターグループが存在し、いくつかの通信事業者もその分野で積極的な姿勢を見せていると説明しました。

フィリピンは、地理的に、東南アジアでの戦略的な位置づけから、ハイパースケーラーにとって魅力的な場所と見なされています。また、再生可能エネルギーにおいても大手企業が進出しており、これらが成長に寄与するとの見方です。

情報通信技術省によれば、2025年までにデータセンターのキャパシティーは、現状の5倍の300メガワットに増加する見通しです。政府は再生可能エネルギーの拡大を目指しており、2024年から2026年までに約50,000メガワット相当の再生可能エネルギープロジェクトが計画されています。

キーワード②「REIT市場」の多様化と拡大

不動産リサーチ会社・Colliersは、フィリピンの不動産投資信託(REIT)市場の多様化と拡大を期待しており、これが国の不動産市場をより活性化させると見ています。

Colliersのディレクター兼リサーチヘッドであるJoey Roi Bondoc氏は、「今後、フィリピンでのREITの積極的な拡大を予測しています。ディベロッパーは、ビジネスパークやデータセンター、コワーキングスペース、賃貸マンションなど、多様な資産クラスの売却の可能性を模索していると考えています。」と述べました。さらに、クライアント企業には、インフラ、再生可能エネルギー、小売・商業施設、ホテルなどのREIT化の可能性を検討することを推奨しています。

さらに同社は、REITとその関係者は規制環境に注意を払うべきだとし、議会に提出されているREIT法(共和国法第9856号)の修正案や新しい対策および規定がセクターに対してどのように阻止、または推進するかを把握する必要があると付け加えました。

3月までには、下院はREIT法を修正することを目的としたHouse Bill No. 7525を承認し、上院に提出される見込みです。提案された修正のなかには、REITに対してスポンサー企業によって実現された収益の受領から1年以内に再投資することを要求するものや、REITが再投資計画を証券取引委員会(SEC)およびフィリピン証券取引所に提出し、年次認証を取得して計画に準拠していることを証明する必要があるものなどが含まれています。

またColliersは、不動産ディベロッパーは、投資家にとって最高の配当を提供する資産クラスを売却することを検討すべきとしています。

コロナ禍からの回復が続く「オフィス市場」

Santos Knight Frankのデータによれば、マニラのオフィス占有率は現在80%で、2022年第4四半期の歴史的な低水準である75%から3四半期連続で改善。マニラの中心エリアであるボニファシオ・グローバル・シティ(BGC)とマカティは引き続き、それぞれ89%と80%の最高占有率を記録しています。また、ショッピングモールなどの商業施設と好調な住宅販売により、不動産セクターは今年を活況の中終えそうです。

オフィス市場はCOVID下での空室増からの回復の道を辿っています。従来型のオフィスナントとフレキシブルオフィスオペレーターからの需要が増加していて、2024年にもこの勢いが続くと予想されています。

また、オフィスのテナントは、引き続き高品質の物件を好む傾向があり、第3四半期のデータによれば、Prinme Buildingの空室率は17%で、市場の平均オフィスビルの空室率20%より低いことが示されています。またPrime Buildingの賃料は、1平方メートルあたり1,244ペソで、市場平均の980ペソを大きく上回っています。

エリアでは、マカティ市が最も高く、平米当たり平均賃料は1,143ペソ/月で、次にフォート・ボニファシオ/BGCが1,098ペソ/月、大型カジノなどが複数立地するエンターテーメントエリアのベイエリアが902ペソ/月で続きます。

写真:PIXTA