ニュースを賑わす、政治家の裏金問題。「やっぱり政治家に期待しても無駄」とさらに政治への不信を募らせることになっています。「国会議員の給与が高過ぎる!」と不満に感じている人も少なくありませんが、「そもそも政治家ってどれだけお金もらっているの?」という疑問も。

そもそも「国会議員の年収」はいくらなのか?

自民党・安部派の政治資金パーティ問題をめぐり、派閥内からキックバック疑惑が次々と浮上。安部派に所属する閣僚等を全員交代させるかなど、注目が集まっています。専門家のなかには1988年に発覚した、日本最大の贈収賄事件であるリクルート事件に匹敵するようなスキャンダルになるのでは、という声も。次から次へと出てくる不正の事実に、失望を通りこしてただ唖然とするばかりです。

もともと国会議員に関しては「給与が高すぎる!」と度々批判の的になっていました。さらに先月には、特別職の国家公務員の給与を引き上げる改正給与法が可決。総理大臣は年46万円、閣僚は年32万円の給与を増額することが盛り込まれているもので、「民間の賃上げが物価高に追いつかないのに不適切だ」批判が相次ぎました。結局、総理や政務三役の増額分は返納することを表明していますが……。

国会議員の収入の内訳を、いまいちど確認してみると、まずは給与。国会議員の給与は「歳費」と呼ばれ、月129万4,000円。各議院の議長の217万円、副議長は158万4,000円と決められています。

さらにボーナスにあたる「期末手当」が年2回支払われ、2023年6月支給額は310万円。単純計算、給与+ボーナスで、国会議員の年収は2,000万円を超えます。

そしてたびたび問題となる「文書通信交通滞在費」が月100万円。これは公的文書の発送費や電話代、交通費にあたるもの。さらに「立法事務費」が月65万円。これは立法に関する調査研究活動にあてられるもの。これらを合わせると、年収は4,000万円程度になります。

またJR特殊乗車券、国内定期航空券などが交付され、交通費は基本的にかかりません。さらに国会議員は3人まで公設秘書を雇うことができますが、これは「税金で3人まで秘書を雇えますよ」ということ。3人雇うと、およそ2,500万円ほど支給されます。

歳費と期末手当以外は「非課税」…優遇される国会議員

厚生労働省令和4年 賃金構造基本統計調査』によると、日本人の平均給与(男女計、学歴計)は、月収で31.1万円、年収で496.5万円。これは交通費等の手当てを含むものなので、単純に考えて国会議員は平均的な日本人の8倍の給与を得ていることになります。

また国会議員が得る収入のうち、課税対象になるのは「歳費」と「期末手当」のみ。「文書通信交通滞在費」や「立法事務費」は非課税です。

今回、色々と騒がれているパーティーなどの寄付、さらには政党からの支給金も非課税。まるまる政治家の懐に入ってきます。また政治団体に寄付されるお金のうち、政治活動に使用する資金は法人税の対象外。メディアや講演会の出演費を、政治団体で受け取っていれば、こちらも政治活動の一環として手にしているので、法人税の対象外となります。

国会議員は高給で、色々と手当てがあるらしい……それくらいはなんとなく知っている人は多いものの、色々と優遇されていることまで細かく知ってしまうと、思わずふざけるな!」と言いたくなるもの。仕方がありません。

一方で、選挙に当選しなければ政治家は無職。何度も当選しているベテラン議員でも選挙のたびに落選するリスクは常にあり、不安定な職業という側面も。また政治家は選挙のたびに多額の資金がかかるうえ、普段から人件費も相当かかるといわれています。

――政治にはお金がかかるから

そんな言い訳を耳にすることもしばしば。しかし前述のとおり公設秘書の給与は公費。必要であれば私設秘書を雇う場合もありますが、何をしているかといえば、ほとんどが選挙対策といわれており、それで「政治にはお金がかかる」といわれても国民はピンときません。

たびたび問題となる政治家とお金の問題。高給取りのはずなのに、さらに不正をしてまでお金を得ようとする議員たちに、国民の怒りは高まるばかり。「あんなに頑張っているから、高給なのも仕方がない」と納得させてくれる政治家が登場することを、願わずにはいられません。

[参考資料]

国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律

国会議員の秘書の給与等に関する法律

厚生労働省『令和4年 賃金構造基本統計調査』

(※写真はイメージです/PIXTA)