駒澤大が2年連続大学駅伝三冠の偉業を成し遂げるのか、後塵を拝してきたライバルが阻止するのか。12月11日、『第100回東京箱根間往復大学駅伝』記者発表会が行われた。100回目となる記念大会では出場枠を3つ拡大、23校の監督が集結し、意気込みを語った。上位争いが予想される指揮官たちは次のように今季のチームの強みとキーマンを明かした。

駒澤・藤田敦史監督「(今年のチームの強み)今年のチームは鈴木芽吹主将を中心に非常にまとまりがあり、絆の深いチームだと思っている。
キーマンはやはり鈴木、今季は非常にいい練習を継続して積めているので、彼に最後ぜひチームを引っ張ってもらいたいと考えている」

藤原正和監督(中央大学)

中央・藤原正和監督「(今年のチームの強み)今のチームはキャプテンの湯浅仁選手を中心に上半期5000mのスピードを中心に磨いてきた。その磨いてきたスピードをしっかり生かして『箱根駅伝』を走っていきたい。
(キーマン)やはり4年生。強い世代が揃っているので、4年生の活躍を期待している」

青山学院・原晋監督「いつの間にか、監督歴20年、3番目に長い監督歴になった。81回大会から予選会に参加し、当時は出場することを夢見てがんばってきた。今日では優勝しか求められないチームに成長したと考えている。
(今年のチームの強み)今年は各世代にエース級のランナーがいる。4年生の佐藤(一世)、3年生の太田(蒼生)、2年生の黒田(朝日)。キーマンはこの3人、プラス箱根は山上り、山下りだと思っている。恒例となった、作戦名はやっぱり負けると面白くありません。『負けてたまるか大作戦!』、がんばっていきたい」

國學院・前田康弘監督「今年のチームの特色は伊地知(賢造)、平林(清澄)、山本(歩夢)の3本柱がしっかりいる中、若い選手に非常に勢いがあるチーム構成になっている。多くの1・2年生を抜擢する形になると想像している。
(キーマン)やはり伊地知、平林、山本の3人の走りで先頭に立ちたいと思っている」

長門俊介監督(順天堂大学)

順天堂・長門俊介監督「(今年のチームの強み)今年はふたりキャプテンを立てた。トラックで活躍する三浦(龍司)とロードで鍛えてきた藤原(優希)のふたりでやってきた。『出雲』『全日本』はかみ合わず苦しい結果になったが、私自身まず初心に帰って、『箱根』に向けてどういう取り組みをするか。かつては“調整力の順天堂”と言われた。1万mの記録ではかなり順位は下になるが、それを覆す調整をしっかりして、トラックで活躍したものとロードで鍛えてきたものを融合させたメンバーで戦っていきたい。
(キーマン)やはり主将であり、エースであり、オリンピアである三浦がどうチームに勢いを付けるかだと思っている」

早稲田花田勝彦監督「(今年のチームの強み)スピード、スタミナも出てきて、可能性の出てきたチームになった。『全日本』は10位と未完成で危ないところもあるが、非常に魅力のある、本当に可能性のあるチームだと思う。
(キーマン)エースに育ちつつある山口(智規)、伊藤(大志)、石塚(陽士)の主力3人がしっかりした走りをして、今年は総合力で勝負したい」

創価・榎木和貴監督「チームの特徴と強みは昨年までいた強力な4年生が卒業し、新たなスタートとしてチーム作りをしてきた。次のエースは誰になるのか、競争力を高め、スピードを強化してきた。『出雲』準優勝、『全日本』6位とチームが求める三大駅伝3位以上の目標には『全日本』は届かなかったが、苦しい展開でもシード権を獲得するという部分で自信を得られた。
キーマンは編入学してきた吉田響。『出雲』『全日本』で区間賞を獲得し、チームに勢いを付ける走りとチームに勢いを取り戻す走りをした。『箱根駅伝』では山の神を超えるという彼の目標があるので、しっかりサポートしていきたい」

城西・櫛部静二監督「(今年のチームの強み)モットーはもっと楽しく。4年生中心に昨年の経験を経て、すごく乗っているチームだと思う。『出雲』『全日本』で過去にない成績を挙げ、この『箱根』に臨んでいる真っ最中。
(キーマン)去年は3年生以下で走り、今回エントリー段階で8名残っているので、それ以外の選手の台頭に期待している。そうなることでチームはレベルの高い順位でいけると思っている」

大東文化・真名子圭監督「(今年のチームの強み)今年のチームは4年生中心に絆が深く、バランスが取れたチームだと思っている。
4年生の久保田(徹)、菊地(駿介)、佐竹(勇樹)の3名がキーマン。3名を中心に学園創立100周年になるので、100周年に100回大会でいい成績を残して、いい形で101回大会を迎えたいと思う」

藤田敦史監督(駒澤大学)

記者会見後には、第99回大会トップ5の監督がトークバトルに登壇、往路・復路・総合の目標順位をフリップに書いた。
駒澤・藤田監督……往路・優勝、復路・優勝、総合・優勝
「2年連続三冠という目標が選手から自然と出てきたところがある。昨年の最強チームに対しての挑戦というテーマも掲げて今のチームは挑んでいるので、昨年と同じように優勝を目指して取り組んでいる。ただあまり意識させると変にプレッシャーにかかるので、選手には伸び伸びやらせたい。今年の『箱根』は往路は特に混戦になるのではと分析している。『出雲』『全日本』のように我々が圧倒的に逃げる形は難しいのでは思っている中で、10区間のマネジメントをやりたいと思っているので、その中で勝ち切りたい」

中央・藤原監督……往路・1~2位、復路・1~2位、総合・優勝
「復路はおそらく+1分か-1分で終わると思うので、往路は1~2位とした。復路でも勝っていきたい気持ちはあるし、逆に復路は2位でも総合で勝ちたいという気持ちもある。今年は絶対もつれると思うので、総合優勝を成し遂げるために残り3週間でしっかりマネジメントしていきたい。
我々としてもいろんなパターンを想定している。吉居大和という大砲がいるので、1区から使うことも考えているし、往路の5区間をどうマネジメントするか。駒澤は分厚い選手層があるので、そこに対抗するたるために残していかないと思うが、どの大学もそうだが、1~3区は最重要区間ではないかと思っている」

原晋監督(青山学院大学)

青山学院・原監督……往路・優勝、復路・優勝、総合・優勝
「駒澤が昨年の『箱根』4区から、今年の『出雲』『全日本』と先頭を走っているので、挽回するのは難しいことは現状わかっている。往路優勝ということで、とにかく先頭を走りたいという思いで書いた。駒澤は27分台が3名、我々は佐藤、太田、黒田を並べるとロード的には対抗できるのでは。山登りも山川(拓馬)君、伊藤(蒼唯)君がいるが、ここにも照らし合わせば、データ的にも何とか対抗できるのではという思いはある」

國學院・前田監督……往路・3位以内、復路・3位以内、総合・3位以内
「なんか盛り下がっちゃったかもしれないが、謙虚にいきたい。以内がポイント。過去最高が國學院は総合3位なのでそれを超えたい思いはあるし、今大会を足掛かりに来季、再来季、もっと上へという思いもある。上位3校をかき乱して、我々がトップに立つという思いはある。かき乱さないと上にいけないと思う。往路は混戦になると思うので、往路が終わった地点でどこにいるのか、タイム差はどれぐらいなのかが、総合の順位を決める決め手になると思う」

順天堂・長門監督……往路・7~8位、復路・-、総合・5位
「すみません、盛り下げます。まず往路は混戦になると思うので、そこに出遅れない布陣は組めると思うが、そこに勝ち切るというより、総合5位を目標にしているので、5位に届くところで収まりたい。復路はじっくり、何位というより、5位に届く形で走りたいと思い、空欄にした。『出雲』『全日本』を見ていると、先行した方がそのままいってしまう。かつては“復路の順大”と言われたが、往路から戦っていかないといけない。往路で終わった順位よりも復路で上げていきたいと思う」

ストップ・ザ・駒澤”を狙う4校の監督には駒澤の強さと対策、さらにどう勝つかというストレートな質問が飛んだ。
中央・藤原監督……要因・佐藤選手、対策・箱根の距離
「『出雲』『全日本』と彼に2区がいることでチームに安定していたという印象がある。2区に佐藤(圭汰)君がいるのが、一番強さを発揮できた要因だと思っている。
対策の箱根の距離は佐藤君が走る20km以外のほかの180km、山を含めて対策していくしかないんじゃないかなと思い書いた」

青山学院・原監督……要因・速さと強さと山、対策・30秒以内でレースを運ぶ
「今の駒澤は100回の歴史を誇る『箱根駅伝』史上で最強軍団だと思う。速さは27分台のランナーが3人いる。強さは昨年からの区間上位ですべての選手が走れている。さらに山は昨年上りも下りも1年を起用してバッチリ。隙はない。そうは言っても同じ学生が戦うスポーツ。30秒以内にレースを進めていく。ポジティブには1分前でレースを進めるのが優勝するために必要ではないかと。青山学院だけではなく、中央、國學院、順天堂、それこそ早稲田、創価、城西、色んなチームが束になって駒澤にかかっていきたい」

前田康弘監督(國學院大學)

國學院・前田監督……要因・エース力、対策・追う心理
「エース力と書いたが、佐藤君しかり、篠原(倖太朗)君、昨年まで田澤(廉)君というエースを育成している。学生トップではなく日本トップのランナーを育成しているのが、駒澤の強さのど真ん中にあるのかなと思う。駒澤には非常にレベルの高いランナーがいっぱいいるので、追う展開にして心理から崩壊させていかないなかなか糸口はないのかなと思う」

順天堂・長門監督……要因・核となる選手の男さ、対策・混戦
「エース・核となる選手の駅伝に対する男さと言うか、男っぷりが根付いているのが、強さの要因ではと思っている」

駒澤包囲網を受けた藤田監督だが、「『出雲』『全日本』とずっと先頭で戦ってきて、『箱根』の往路は混戦になると言われているが、自分たちでそう仕向けている部分はある。『駒澤を逃がしたら、もう追い付けない』というのもあると思うので、そう見ていただけるのはありがたいし、そういうプレッシャーを跳ね除けた上で勝っていきたい。これだけ強いチームを作ってこれたのは私ひとりの力ではなく、前監督の大八木(弘明)の力でもあるので、今 (大八木総監督と)ふたり体制でやっているので、負けるつもりはない」とキッパリ。

『第100回東京箱根間往復大学駅伝』は12月29日(金)に区間エントリー提出、2024年1月2日(火)に大手町読売新聞社前より往路、3日(水)に箱根町芦ノ湖駐車場入口より復路がスタート。往路107.5km・復路109.6km・総距離217.1kmで襷をつなぐ。レースの模様は日本テレビ系にて生中継。

取材・文:碧山緒里摩(ぴあ)

鈴木芽吹(駒澤大学)