12月8日から12月10日までの全国映画動員ランキングが発表。「ハリー・ポッター」シリーズのプロデューサーと「パディントン」シリーズのポール・キング監督がタッグを組み、ティモシー・シャラメが主演を務めた『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』(公開中)が華々しいスタートダッシュを決めた。

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■“ウィリーウォンカ”の歴史をプレイバック!

ティム・バートン監督の『チャーリーとチョコレート工場』(05)でジョニー・デップが演じたことでも有名なウィリーウォン工場長の若き日が描かれる『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』。初日から3日間の観客動員は26万6773人、興行収入は4億1711万円で、動員、興収共にシャラメ出演作として最高のオープニング成績を記録している。

ロアルド・ダールが1964年に発表した児童文学「チョコレート工場の秘密」で生まれた“ウィリーウォンカ”というキャラクター。原作には「ガラスのエレベーター 宇宙にとびだす」という続編が存在するが(ダールらしい風刺と強引なハッピーエンドが冴え渡った快作だ)、今作ではウォンカというキャラクター設定を拝借した前日譚として、オリジナルストーリーが展開する。なので直接的に「チョコレート工場の秘密」を映画化しているのは、先述の『チャーリーとチョコレート工場』と、その30年以上前に制作されたメル・スチュアート監督の『夢のチョコレート工場』(71)の2作品だ。

『夢のチョコレート工場』では、『プロデューサーズ』(67)でアカデミー賞候補になったジーン・ワイルダーがウォンカ役を演じていた。日本では劇場未公開だったため当時の反響を拾うことはできないのだが、アメリカでの公開当時、出演作が立て続けに失敗していたワイルダーは、同作が批評家から高い評価を得たことがきっかけで人気を回復。後に『ヤングフランケンシュタイン』(74)で自ら脚本を執筆しアカデミー賞脚色賞候補になるなど、監督や脚本もできるコメディスターとして大活躍を見せた。

一方、北米で2億ドルを超える興収を記録し、日本でも年間洋画興収第4位の興収53億円の大ヒットとなった『チャーリーとチョコレート工場』は、デップにとって『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』(03)に続く大当たりとなり、1990年代に地道に積み上げてきた演技力も相まって一気にスターダムへと駆け上がるきっかけとなった。日本でもこの2作品によって、デップが映画ファン以外からの知名度を急激に高めたことはいうまでもないだろう。

このように、これまで演じてきた俳優が“ウォンカ役”を飛躍の足掛かりとしてきた例を踏まえれば、シャラメもそれに続くけるかどうかに注目が集まるところ。海外では20代を代表する実力派として確実にスター俳優の仲間入りを果たしているシャラメではあるが、日本では“レオナルド・ディカプリオの再来”とまで言わしめた『君の名前で僕を呼んで』(17)から5年以上が経っても、まだまだ映画ファン以外の一般層からそれほど認知されていないのが正直な印象だ。

それはやはり、シャラメがかなりコアな作品選びをしてきたからであろう。ルカ・グァダニーノを皮切りにフェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲン、ウディ・アレン、ウェス・アンダーソン、アダム・マッケイといった、映画ファンのツボを的確に押さえながらも、それこそティム・バートンのような大衆向けの大作や興行的に大ヒットを飛ばすタイプではない監督と仕事をしてきたことが一因になっているとも考えられる。

そのなかでドゥニ・ヴィルヌーブ監督のSF超大作『DUNE/デューン 砂の惑星(21)が日本でも興収7億強のまずまずのヒットとなり、今回の『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』が好発進となれば、一気に一般層にシャラメの存在が認知される可能性も高まる。なかなか“ハリウッドスター”が更新されない日本で、そろそろ20代の新しいスターが広まるチャンスとなるのではないだろうか。

■『映画あの花』『窓ぎわのトットちゃん』も初登場!

さて、再び今週の動員ランキングに話を戻そう。初登場で2位にランクインしたのは、TikTokを中心に話題を集め累計発行部数85万部を突破した汐見夏衛の同名小説を映画化した『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』(公開中)。連続テレビ小説舞いあがれ!」でヒロインを務めた福原遥と、現在放送中の連続テレビ小説ブギウギ」で相手役を務める水上恒司のダブル主演となれば話題性も充分。

現代の女子高生1945年にタイムスリップをし、そこで出会った特攻隊員に惹かれていくという純愛ストーリーが展開する本作は、初日から3日間で動員24万6500人、興収3億2200万円を記録。これは昨年3月に興収30億円を記録した『余命10年』(22)のオープニング成績を上回る好成績。コンスタントに作られている純愛小説の映画化作品からは定期的にヒット作が生まれており、本作もその仲間入りを果たすことになるだろう。

3位には前週に引き続き『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』(公開中)がランクイン。週末3日間の成績は動員16万6300人、興収2億4900万円で、動員は前週対比118%。公開初週から毎週右肩上がりの動員、興収を記録しており、公開4週目の週末にして初週末の150%近い成績をたたきだすのはかなり異例。すでに累計成績では動員81万人、興収11億5000万円を突破。この“現象”がどこまで持続するのか注目だ。

2週連続で首位を飾っていた『翔んで埼玉琵琶湖より愛をこめて〜』(公開中)は週末3日間で動員13万3100人、興収1億8900万円で4位となり、累計成績では動員107万人と大台を突破。興収も14億7700万円となっている。また、北米で見事なオープニング成績を打ち立てた『ゴジラ-1.0』(公開中)は、公開6週目で5位となり、累計成績は動員270万人、興収41億5400万円を突破している。

そして、黒柳徹子が自身の幼少期を描いた世界的ベストセラー小説を、「映画ドラえもん」シリーズを手掛けてきた八鍬新之介監督のメガホンでアニメーション映画化した『窓ぎわのトットちゃん』(公開中)は6位に初登場を果たした。

以下は、1~10位までのランキング(12月8日12月11日)

1位『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』

2位『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』

3位『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎

4位『翔んで埼玉 〜琵琶湖より愛をこめて〜

5位『ゴジラ-1.0』 

6位『窓ぎわのトットちゃん』

7位『首』

8位『青春ブタ野郎はランドセルガールの夢を見ない』

9位『ナポレオン

10位『怪物の木こり

今週末は、ウォルト・ディズニー・カンパニーの創立100周年を記念して製作された長編アニメーション『ウィッシュ』(12月15日公開)、スタジオジブリ作品で活躍したアニメーターの百瀬義行監督がメガホンをとったスタジオポノックの長編第2作『屋根裏のラジャー』(12月15日公開)などが公開を控えている。

文/久保田 和馬

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