1年の最後を締めくくる世界最大級のゲーム表彰式典『The Game Awards 2023』(以下、『TGA2023』)が、アメリカ・ロサンゼルスで開催された。同イベントでは、ベルギーのゲーム企業・Larian Studiosが開発・発売するRPG『バルダーズ・ゲート3』が「GAME OF THE YEAR」(以下、「GOTY」)を受賞。「2023年で最も優れた作品」という栄誉に輝いた。

参考:【画像】ゲーム・オブ・ザ・イヤーを獲得した『バルダーズ・ゲート3』リリースティザートレーラー

 一方、その裏では、2024年以降に発売される新作の情報解禁も行われた。本稿では、『TGA2023』で発表となった話題の作品を軸に、2024年のゲーム業界のトレンドを予測する。

GOTY選出の裏で相次いだ“期待の新作たち”の情報解禁

 「GOTY」の選出が注目を集めた『TGA2023』だが、その裏では来年以降に発売を予定する新作の情報解禁も界隈を賑わせた。なかでも反響の大きかった発表のひとつが、「モンスターハンター」シリーズから登場する最新作『モンスターハンターワイルズ』(以下、『MHWs』)についてだ。開発・発売を手掛けるカプコンによると、同タイトルは2025年に、PlayStation 5Xbox Series X|S、PC(Steam)で発売予定だという。壇上の大型モニターにアナウンストレーラーの映像が映し出されると、会場からは大きな歓声が上がった。

 映像には、新たなオトモと思しき生き物にまたがるハンターや、おなじみの飛竜種モンスター「リオレウス」の姿、さらには新モンスターらしき存在も確認できた。X(旧Twitter)上では、発表直後から関連ワードがトレンド入り。あらためてシリーズの注目度、人気の高さが浮き彫りとなった形だ。続報は、2024年夏に公開予定とのこと。1年以上先の発売日をいまから心待ちにしているファンも多くいるのではないだろうか。

 そのほかにも、数々の作品が新たな情報を解禁している。新映像を公開した『FINAL FANTASY VII REBIRTH』や『メタファー:リファンタジオ』、「メタルギア」シリーズなどで知られる小島秀夫氏が企画・脚本・ゲームデザインなどを手掛けた最新作『OD』、「聖剣伝説」16年ぶりのシリーズ最新作『聖剣伝説 VISIONS of MANA』などが話題を集めた。大半の新作が来年、もしくは再来年に発売を予定している。フリークにとっては、2024年もまた「時間が足りない」といううれしい悩みが尽きない年となりそうだ。

■2024年も既存IPの影響力が強い1年に。望むべくは「新作タイトルの躍進」か

 2024年のゲーム業界では、どのようなトレンドが生まれるだろうか。『TGA2023』で目白押しとなった新作に関連する発表から予測したい。

 まず感じたのは、リメイク/リマスターを含め、引き続き、既存のIPの影響力が強い1年になりそうだということ。紹介したなかでは、『MHWs』『FINAL FANTASY VII REBIRTH』『メタファー:リファンタジオ』『聖剣伝説 VISIONS of MANA』がこれに該当する。うち『MHWs』は2025年発売予定とされているため、厳密には2024年のトレンドではないが、関連するトピックが同年にも話題を集めるのは間違いないだろう。

 このほかにも『ペルソナ3 リロード』や『Grand Theft Auto 6』、『The Last of Us Part II Remastered』、『ルイージマンション2』リマスター、ピーチ姫を主人公に据えた「スーパーマリオ」シリーズの新作タイトル『プリンセスピーチ Showtime!』が2024年(もしくは2025年)の発売を予定している。既存IPからのシリーズ作品、特に往年の名作を懐古する流れは、2024年も続いていきそうだ。

 だからこそ、『OD』のような挑戦的なタイトルに期待したい面もある。コロナ禍以降、盛り上がりを見せるゲーム市場だけに、その先の10年でカルチャーの中心を担っていくような新規タイトル/シリーズが2024年に生まれることを、いちフリークとして強く望んでいる。

 カテゴリでは、アクションRPGやシミュレーションRPGローグライトのトレンドが続く一方で、シューターバトルロイヤルの流行は、ある程度落ち着くのではないかと見ている。一時は『Fortnite』や『Apex Legends』などが界隈の注目を集めてきた同ジャンルだが、近年になり、そうした動向も少しずつ落ち着きを見せてきた。2023年には『Call of Duty: Modern Warfare III』がリリースを迎えたものの、発売前の期待値を考えると、不発感が否めない現状の評判となっている。

 そうしたなかにあって躍進の気配を見せるのが、2023年10月実施のオープンβテストが好評だった『THE FINALS』だ。『TGA2023』では、12月8日に正式サービスを開始すると発表。既存のシューターバトルロイヤルに食傷するプレイヤーの受け皿になるのではないかと見る向きもある。ジャンル復権への急先鋒として、同タイトルには躍進を期待したい。

 私個人としては、ADV/ノベルジャンルの盛り上がりにも注目している。2023年には『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』や『ヒラヒラヒヒル』といった作品が同分野を好むファンの間で話題を呼んだ。前者に至っては、新規IP、かつ低予算で制作されたと考えられるタイトルでありながら、「日本ゲーム大賞 2023」優秀賞にも輝いている。

 ほかと比べると、小規模なチームでも一定のクオリティを担保しやすい点が特徴であるADV/ノベルジャンル。メインストリームでは、既存のIPから登場する話題作に注目が集まりそうな2024年だけに、2023年の『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』『ヒラヒラヒヒル』に匹敵、もしくはそれらを凌駕するようなタイトルの登場を切望している。

 読者のみなさんの予測はいかがだろうか。1年の締めくくりとして、このような話題で盛り上がってみるのも一興かもしれない。

(文=結木千尋)

『TGA2023』での発表からトレンドを予測する